事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
<生前>遺言書【塚本勇さん80代からのご相談】
【事例】③財産の内容【不動産】【会社・家業】家業の継承と不動産を明確にしておきたい塚本さん
家族と相続の状況〈夫婦で酒屋を切り盛り、三男が跡を継いでくれた〉
塚本さんは酒屋の2代目です。父親から引き継ぎ、夫婦で切り盛りしてきました。お店は、商店街の一角にあり、コンビニやスーパーの進出で厳しくなったとは言え、長年の得意先もあって継続できています。
個人経営の商店ですので、表がお店、裏に倉庫や自宅がある環境だからこそ、家族で続けてこられたのです。夫婦で長生きできたのも家業のお陰だと夫婦で言い合っていますが、跡継ぎがいてくれるからということも楽しみだったと言えます。
大変ながらも長男、二男を大学に行かせることができたので、二人とも大会社に就職するという誤算もありましたが、三男が家業を継承してくれたことは幸いでした。
日々忙しくしているうちに夫婦とも80代後半となり、子供たちから、いよいよきちんとしておかないと大変だと言われています。
- [遺言作成者]:夫 塚本勇さん80代 自営業
- [推定相続人] :妻 美代子さん80代、長男60代会社員、二男60代会社員、
三男50代自営業・同居
遺言を作る理由〈三男に家業に必要な土地建物を相続させたい〉
酒屋を継続するには、店舗や自宅の土地、建物を三男が相続することが必要です。そのためには遺言で指定しておくことにしました。長男も次男もそれには異論はないことで了解は取り付けていますし、子供がいない長男には現金を残し、他県に住む次男には、駐車場にしている土地を相続させることでバランスをとるようにしました。
遺言がないと困ること
・酒屋の土地、建物を三男に相続させないと家業を継承することが困難になる。
・長男には子供がないため、親より先に亡くなるとその妻に相続権はない
・妻や子供も財産を所有しているため、孫に先送りしたい
相続コーディネーターからワンポイントアドバイス
・孫に相続させるには遺言を作成させるのが必須。
・争わないために家族会議を開いて相続人の希望を汲み取った内容にする。
遺言の内容〈遺言者 塚本勇さん〉
遺言公正証書
遺言者塚本勇は、次のとおりに遺言する。
第1条
遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の三男○○○○に相続させる。
【土地】 所在 | ○○○○区○○○○丁目 | |
---|---|---|
地番 | ○○○○番 | |
地目 | 宅地 | |
地積 | ○○○○㎡ | |
【建物】 所在 | ○○○○区○○○○丁目 | |
家屋番号 | ○○○○ | |
種類 | ○○○○ | |
構造 | ○○○○ | |
床面積 | 1階 ○○○○㎡ 2階 ○○○○㎡ |
第2条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の二男○○○○に相続させる。
【土地】 所在 | ○○○○市○○○○丁目 | |
---|---|---|
地番 | ○○○○番 | |
地目 | 宅地 | |
地積 | ○○○○㎡ |
第3条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の孫○○○○に遺贈する。
【土地】 所在 | ○○○○市○○○○ | |
---|---|---|
地番 | ○○○○番 | |
地目 | 宅地 | |
地積 | ○○○○㎡ |
遺言者は、遺言者の有する預貯金・有価証券から遺言者の葬儀費用、残存債務及び相続税等を支払い、その残余の預貯金・有価証券を遺言者の長男○○○○に相続させる。
1 長男○○○○が遺言者より先に死亡(同時死亡)した場合には、遺言者は前項により長男○○○○が取得することになっていた財産を長男○○○○の妻○○○○に遺贈する。
第5条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、遺言者の二男○○○○を指定する。但し、墓地、仏具の管理維持は、遺言者の三男○○○○が行うものとする。
第6条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、二男○○○○を指定する。
第7条 遺言者は遺言執行者に対し、他の相続人の同意を要しないで、不動産の登記手続き、預貯金の名義変更、売却、貸金庫の開扉、解約、払戻金及び換価金による遺言者の債務及び諸費用等の支払いその他遺言執行に必要な一切の行為をする権限を与える。
付言事項
私は、戦後まもなく、父○○を亡くし、これまで○○家の兄弟、家族を護るために、昼夜分たず、仕事に全力を尽くしてきました。
どんなことからも貪欲に学んで、誠意を持って臨んで、今日まで事業を発展させ、店を続けて来ることができました。思えば、戦後の物資も乏しい、苦しい生活を乗り越えて、昨年は米寿を迎え、妻の○○にも本当に感謝しています。
兄弟姉妹も子供達も皆、仲良くやってくれており、子供達3人も所帯を構え、孫6人、ひ孫も2人と増え、みな健康で社会での信頼も得て、ほんとうにうれしく思っています。
これからの個人経営での商売は難しい時代になるが、自宅と家業については、三男○○がしっかりこれを継承してもらいたい。
長男○○には、子供がいないので、預貯金を大事に使って余生を送って欲しいと思います。二男○○は4人の子供と2人の孫がいますので、この土地を任せて、これらを大事に発展させてほしい。
今日までやってこられたのは、妻のお陰。妻○○に心から感謝の意を表したい。
今までほんとうにありがとう。
○○市○○町○○ 遺言者 塚本勇