事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
【農家】<ケース2>土地25筆。借入残1億8000万円。まだ相続税がかかる!
◆財産はほとんどが土地。土地4億円台 相続税の予想額6300万円
兼業農家のSさん(50代女性)が相談に来られました。
80代の父親は自宅をはじめてとして14か所の土地を所有しておられます。いちばんの悩み事は、自宅の敷地が300坪あり、敷地半分に二世帯住宅を建て直して同居しているが、もとの自宅が隣接する土地にあり、敷地は150坪。建物が空き家のままなので、活用を検討しているが、どのようにすればいいかということです。
Sさんは固定資産税の納付書を持参されましたので、土地評価をしてみると土地だけで4億円を超えることがわかり、相続税の予想額は6300万円となりました。
◆土地活用は妥当か?まだ借り入れが1億8000万円残っている
Sさんの父親はJAの組合員なので、勧められて、4か所の土地に賃貸アパートを建てています。すべて自宅の土地の近隣で、市街化の畑ですので、相続税の節税対策になると勧められました。
築年数は20年過ぎたものが2棟で借入は終わっています。あとの2棟は10年ほどでまだ建築費の借入が残っており、合わせると1億8000万円あります。
いずれも所有のアパートは、最寄り駅から徒歩20分程度かかりる立地です。駐車場をつけているので、いまはなんとか入居はされていますが、20年、30年後に家賃が下落するのではないかと心配もしているということです。
◆二世帯住宅の建物は長女名義。小規模宅地等特例は使えるか?
Sさんは独身で、両親とずっと同居をしてきましたが、自宅の建物が古くなり、10年前に建て直すことになりました。
父親はそのときには仕事もリタイアして家賃で生活をしていましたが、まだ返済もあり、建築費を出す余裕がないとなり、働いているSさんがローンを借りて二世帯を建てたのです。よって建物名義はSさんです。
父親が亡くなった時、小規模宅地等の特例が使えるか?も確認しておきたいということです。
この質問については、すぐ回答ができました。同居している子どもであれば、建物が子ども名義であっても、父親の土地の330㎡までは80%減の評価ができます。そうした説明により、Sさんは一安心されました。小規模宅地等の特例の減額は大きいため、使えないと相続税が減らせないと不安に思ったということです。
◆これからの対策のため、相続プランのお勧めをして委託
相続になってからでも土地の評価や特例で節税できる方法は残されていますが、それは対策の一部でしかありません。やはり、相続税の節税対策の大部分は生前にしておくべきことで、取り組んだだけの効果は確実にありますので、節税対策は必須と言えます。
また、特例が使えるから対策しなくてもなんとかなる、という場合でも安心はできません。なぜなら、特例を使うには、相続税の申告期限までに遺産分割が完了していないといけないのです。そのため、少なくとも、もめない対策は必須だと言えるのです。
Sさんは妹、弟とはもめたくないとも言っておられます。そうした感情面のことも配慮して用意しておくことが大切です。
相続になっても残された人が円満に、不安なく、争わずに乗り切れるよう、感情面と経済面の両方に配慮しながら、対策をしておくことで、相続の価値が高まります。さらに、そうした意思を残し、対策をしてこられたご本人への感謝や評価が高まり、家族の絆が再確認できる機会となります。
相続では、配慮のある生前対策をしておくことが大切です。そうした用意がないと、残された家族は迷い、主張し、争うことになります。相続は「何とかなるだろう」ではうまくいきません。生きているうちに「相続プラン」を作り、節税対策しながら、家族で準備をしていただくためには、相続後よりも、生前のほうがよいとSさんに説明し、相続プランの委託を頂き、提案しました。
【相続プランの項目】
●現状分析と課題整理
●対策の提案と成果の検証
◆ 【経済面の対策詳細】不動産・現金を活用した生前対策と効果
◆ 【経済面の対策詳細】その他の生前対策と効果
◇評価の基礎資料1 相続人・不動産・動産の確認と評価
◇評価の基礎資料2 適用可能な制度の検証
●対策後の評価と成果の検証
●【感情面の対策詳細】分割案と争い防止の対策
【課題チェック】
■【不動産が多い】自宅の他にも不動産がある
■【広い土地】 広い土地がある
■【生産緑地】 生産緑地に指定された市街化の農地がある
□【特殊事情】 無道路、不整形など事情がある
■【不動産の活用】未利用の土地や更地がある
■【賃貸事業】 賃貸事業の見直しや検討が必要
□【底地の所有】 借地人が居住している土地がある
■【相続税】 現状で相続税がかかることは間違いない
■【相続税納税】 相続税の納税資金がない
□【土地の売却】 土地を売却しないと納税できない
□【納税猶予】 以前に納税猶予を受けた農地がある
□【不動産の物納】物納したい土地がある
【家族構成】※母は亡くなっている
父(85歳)・・・長女(相談者)名義の建物に長女と同居
長女(50代)・・父名義の土地に自分名義の建物を建てて父と同居
次女(50代)・・夫と2人暮らし
長男(50代)・・妻と子3人暮らし 父親の土地に自宅を建てている
【財産構成】
(土地)自宅、畑、田 など14か所 4億744万円
(建物) 自宅、賃貸住宅4棟、他 7620万円
(金融資産) 預 金・有価証券 3,000万円
生命保険 200万円
(借入金) 1億8,000万円
合計 3億3374万円
相続税 6580万円
【現状分析と課題】
■金融資産よりも相続税の予想額のほうが高い
金融資産では相続税が払えないことが想定される
■土地が最寄駅から離れている
徒歩20~30分の立地で賃貸事業の敵地とは言えない
■土地が同じエリアにまとまっている
賃貸の空室リスクなどが一度に来る
■賃貸事業の収支バランスがよくない
家賃収入が2750万円あるが、固定資産税300万円と借入返済700万円を支払う必要があり、今後、家賃の下落や空室があると厳しくなる
【対策の提案①】
■土地活用・・・検証はしたが、お勧めできない
メリット 土地が残せる
デメリット 建築資金の借入が必要で次世代まで継承される
空室がでると収支バランスが崩れる
■資産組替・・・妥当な選択肢だとお勧めできる
メリット 売却代金で借入のない不動産を購入できる
立地を選ぶことができ、賃貸事業の空室リスクを減らせる
評価が安くなり、相続税や固定資産税が減らせる
デメリット 土地を売却するので残せない
【対策のポイントと効果】
●相続税が減らせる
6580万円→3165万円52%減
●収入が増やせる
年間0万円(旧自宅の空家)→年間300万円に 2倍
●固定資産税が減らせる
年300万円 →100万円程度
◆【相続実務士より】
同じエリアに多くの土地を所有されていることが多いのが現状でしょう。管理しやすいというメリットがあるでしょうが、賃貸事業では競合するため、得策とは言えないことがあります。
また土地を残すには土地活用が定番のため、借入してアパートを建てるとなると建築資金の借入が必要となり、返済の負担や不安が付きまといます。
そこで多く持つという考えから、借入のない不動産を持つ、賃貸事情のよい立地を選ぶという視点に切り替えて頂き、土地を売却して区分マンションのような賃貸不動産に買い替えて頂くことをお勧めします。
借入のない不動産となれば返済の不安もなく、空室期間のリスクも減らせます。状況に合わせていつでも売却できる安心感もあります。
土地を同じところにずっと持ち続けるのが農家の跡取りの務めだと言われる方が多いのですが、現実的な考え方に切り替えていくと不安解消することができます。
最初のご相談は無料です。
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