事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
あっという間に要介護5。遺言書は早めに書かないと後悔する!
◆92歳の母親は、要介護4
Mさんの母親は92歳。
10年前に父親が亡くなってからは自宅でひとり暮らしをされています。
子供はMさんと弟のふたりで、Mさんは他県に嫁いでいます。
弟は亡くなった父親がはじめた電器店を継いでおり、毎日、実家にある店舗に来て仕事をしています。
弟は同居しておらず、すぐ近くで自分の家を持ち、妻子と暮らしています。
母親は週に2回デイサービスに出かけて、自宅にいるときはヘルパーさんにきてもらっています。
父親が亡くなってからしばらくは元気で、ひとり暮らしにも全く不自由はありませんでした。
けれども、ほどなく要支援となり、骨折して入院したころから要介護4と進んでしまいました。
退院して自宅での生活にもどったものの、夜間にひとりでは不安が出てきました。
◆近くの息子よりも遠くの娘
弟は長男ですので、本来、お店もある実家に同居するのが地域の風習です。
結婚当初は当然として同居でスタートしましたが、弟の妻が両親と折り合いが悪く、家を出たのでした。
そうしたいきさつがあり、現在も弟の妻はほとんど実家に顔を見せません。
母親もそれでよしと思っているようです。
そうしたいきさつがあってからは、母親は何事も離れた土地に住むMさんを頼りにしてきました。
おかげでMさんは弟家族に気兼ねなく、母親の介護として実家に帰って来ることができるのですが、
母親のためには地元にいる弟夫婦がもう少し母親の面倒を見てもらえたらという気持ちになることもあると言います。
◆遺言書を残しておきたい
母親はつねづね、自分の財産はMさんに渡すと言ってくれています。
母親の財産は自宅と預金です。自宅は地方にあるため、150坪あっても2000万円ほどのようです。
預金は父親が残したものと母親の年金で、やはり2000万円ほどあります。
弟の感覚では、Mさんは生活に困る要素がないので、母親の財産はいらないだろうと思っている伏しがあります。
けれども、Mさんは母親の意思を残してあげて、弟夫婦に見てもらいたいという気持ちがあります。
そこで、遺言書を作るにはどうすればいいか、相談にこられました。
公正証書がお勧めですが、母親の年代では馴染みがないため、Mさんが母親の意向を聞いて、
見本の下書きをし、 母親に自筆で書いてもらおうと思うということでした。
◆もめない内容が無難
母親は「Mさんに全財産を相続させたい」という気持ちのようですが、
それでは弟から不満がでることは間違いないでしょう。
また、自宅と店舗はMさんは住んだり使ったりすることはないため、
やはり、地元にいる弟に相続させるのが妥当だとアドバイスしましたところ、
Mさんもそう思うということで、母親に話をすると言われました。
よって、不動産は弟に、預金はMさんなとする分け方が現実的だろうということになり、
Mさんもすっきりした、母親に早めに遺言書を書いてもらうとお帰りになりました。
◆あっという間に名前も書けなくなった
その後、母親は肺炎になって入院してしまい、退院後は、ひとり暮らしができなくなって、
介護施設に入所するなど、あわただしく日にちがすぎてしまいました。
遺言書の書き方がまとまり、いざ、母親に書いてもらおうという矢先の入院となり、落ち着く暇がなかったようです。
しばらくしてMさんから連絡がきたのですが、母親の介護度が5になり、いっぺんに認知が進み、
字がうまく書けないようになってしまったというのです。
少し前まではふつうに話もでき、手紙や日記も書いていたのに、驚いたと言われます。
◆元気なうちに書いてもらえばよかった
遺言書のサンプルを見せて、そのとおりに書いてもらおうとしたのですが、
字が思うように書けなくなっていて、本人は書いているつもりでもまともなものでなく、
さすがに無理だとあきらめたということです。
こんなこともあるから早めに遺言書を作っておいてもらわないといけなかったと後悔したとMさんからの連絡でした。
弟との遺産分割協議が必要にはなりますが、姉の立場でMさんの考えを通してまとめたいと言っておられました。
相続実務士からのアドバイス
遺言書をつくるタイミングは、気になったらすぐに、ということをお勧めしています。
元気なうちに意思を残しておけば後悔しなくてすみますし、安心して長生きできるとお勧めしています。
コラム執筆