事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
おひとり様で財産を宗教法人に寄付?共有名義にしておくべきだった!
■父親の相続で財産を取得
Мさん(70代・女性)は2人姉妹の長女。独身で50代半ばまで会社勤めをしてきましたが、1人暮らしの父親の介護のため、仕事を辞めざるを得ない状況になりました。毎日、実家に通っての介護が必要でしたので、仕事ができない状況にありました。
妹は結婚して専業主婦でしたが、まだこどもがふたりとも小学生で、父親の介護などできる状況にはありませんでした。さらに不幸なことに妹は40代で体調を崩して他界してしまい、ふたりの子どもが父親の代襲相続人となりました。
■父親の財産と遺言書
妹が亡くなってしまい、残された子どもたちは妹の夫が父子家庭で育てていますので、とても父親の介護までは頼めません。Мさんは長女で、独身ですので、自ずと父親の面倒を看る役割だとなります。
父親が80代後半になると日常的なことができなくなりましたのでМさんは致し方なく仕事を辞めて、父親の介護のために実家に通うようになりました。そのころから、Мさんは相続のことが気になり、仕事も辞めて父親の介護を担当するからには、父親の財産は自分が引き受けると言い、父親に遺言書を作成してもらうようにしました。父親がまだ健在の頃、Мさんは夢相続に相談に来られましたので、夢相続で父親の公正証書遺言の作成をサポートしました。
そのころも父親は自宅で生活をしておられて、公証役場に出かけるのは大変ということで、公証人と夢相続が担当した証人2人が父親の家に出向いて、公正証書遺言は出来上がりました。
父親の自宅不動産はМさんが相続、金融資産をМさんと妹の子、2人が法定割合で相続するという内容です。
■父親の相続では公正証書遺言で手続きをした
公正証書遺言を作成した5年後に父親が亡くなりました。相続手続きは、遺言執行者で長女のМさんが行いました。亡妹の子が代襲相続人ですが、ふたりともまだ20代前半で、相続の経験もありません。
父親の財産は自宅が180坪と広く、評価は6000万円、預金と株で3000万円ありました。遺言書はМさんが8000万円相続し、代襲相続人は1人1000万円の現金を相続するという内容でしたが、独身のМさんには配偶者、子どもがいないため、残る財産はふたりの姪に渡すと言っていましたので、本人たちにもそのように伝えて、相続手続きは終わりました。
■家賃収入で生活できるように提案、サポートした
父親が亡くなって実家が空家になりましたが、Мさんは父親の家に住むつもりはないということ。それでは財産の価値がないため、夢相続で売却して、自分の住む家を持つとか、家賃が入る賃貸物件を持つ方がよいと提案しました。
評価が6000万円の家でしたが、最寄駅から徒歩5分程度で近く、東と西に道路がある二方道路に面した区角割しやすい土地でしたので、建売住宅用地として8000万円で不動産会社が購入してくれて、売却が完了しました。
その後、賃貸物件となる区分マンション2000万円と4000万円を2室購入し、毎月の家賃は2部屋で25万円入るように資産に変わりました。
相続税は基礎控除がまだ多い時で200万円程度、売却のときの譲渡税が1000万円ほどかかりましたが、まだ金融資産は2000万円ほどありました。家賃が入るうえに、仕事にも復帰していましたので、困ることはなく、マンションを残して二人の姪に渡すということで合意ができていました。
■その後の10年で状況が激変。マンションは売ってしまっていた
最近になり、代襲相続人の姪よりメールが来て、Мさんが借りているマンションのオーナーの代理人となる弁護士より、Мさんが家賃を滞納しているので連帯保証人である姪の父親に請求が来たが何か事情を知っていますか?という問い合わせでした。
夢相続では区分マンション購入の仲介はしたものの、その後の管理は別会社が担当しているため、確認してみると2室とも、すでに売却をしてしまっているといいます。
さらに事情を確認すると、Мさんは以前よりある宗教の熱心な信者であることは夢相続でもご本人から聞いてはいましたが、自分の財産ができてからは頻繁に寄付をしたようで、手元のお金が無くなった時点で購入した区分マンションを売却していたようです。当然、管理会社は考え直した方がいいとアドバイスをしたといいますが、本人の意思が固く、止められなかったようです。
■残すと言った財産を勝手に売ってしまった
父親の相続後、10年以上が経ち、2人の姪は自分たちの生活や子育てで手いっぱいの時期ですから、叔母との交流を持てずにいて、Мさんからも二人にはとくに連絡などもなかったといいます。父親がМさんの賃貸の連帯保証人になっていることも聞いていなかったため、9か月も家賃を滞納しているということで父親に家賃を支払うようにという請求書が届いてたため、驚いて問い合わせをしてこられたという事情でした。
姪にすれば、祖父の相続時にはМさんの介護の貢献度を評価して、また、Мさんが財産は二人に遺すからという話もしていたことから、遺留分請求もせずにМさんに譲ったのでした。
けれども残るはずの不動産がなくなり、それどころか家賃滞納の借金まで請求されるという現実には愕然とするばかり。
感覚的には、「不動産は共有となっていてМさん1人が自由にできないはず」と思っていたといい、「なぜ、勝手に売却できたのだろうか?」と思ったといいます。
■遺言書では不動産は単独に指定されていた
遺言書では亡くなった父親の不動産は、Мさんが単独で相続するという内容になっていました。よって、遺言書によって、父親からМさんの名義に相続登記することができたのです。
その後、Мさん名義の不動産は、Мさんが単独で売却し、売れたお金で次の区分マンションを購入したときもМさんの単独名義ですから、その売却もМさん単独で決断、手続きができるということになります。
■不動産が共有であれば全員の合意がないと売れない
不動産を勝手に売却できないようにするという目的で、共有名義にしているご家族はあります。不動産を売却する時には共有者全員の合意、印鑑証明書、実印の協力、意思確認ができないと売れないため、共有者のうちの1人が単独で売ってしまうという事態にはならないのです。
不動産の共有名義は、合意を得ることが難しくなるため、お勧めできないことはありますが、こうしたМさんのご家族のように相続人間で、事情や温度差などがある場合は、敢えて、不動産を共有して、財産を保全する必要があったと言えます。
けれどもその判断は難しく、父親の遺言書がもとになっているため、このような結果になったのかもしれません。
■おひとりさまは狙われやすい?
Мさんのように、配偶者、子どもがいないおひとりさまの場合、姪に頼る前の60代、70代は当然、Мさん自身の決断や判断で物事が進んでいきます。けれども今回のМさんのように、もうマンションも売り払い、お金も使い果たして、家賃も払えないという状況になってからでは取り返しがつかないと言えるでしょう。
父親の相続の段階で、おひとりさまのМさんの将来についてや財産について、姪を含めて方向性や将来像をすり合わせておく必要があったと言えます。
また、身近に身内が関わっていないと宗教などの他人が入り込み、過度な寄付などをさせて本人の生活も破綻させ、姪に残るはずの財産も残らなくなるという結末でも、
平気な人たちがいるということなのでしょう。このМさんや姪御さんが経験した残念に結果は、これからのおひとりさまにとっても教訓にしなければいけないと痛感した次第です。
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