事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
不動産には管理責任。相続放棄して国に返したいと思っても無理?
◆兄の相続も息子も姉も相続放棄
Oさん(70代・男性)から相談がありました。
兄が亡くなり、相続人の息子が相続放棄したので、相続権が姉と自分のところに回ってきたといいます。
兄の財産は地方の実家の土地、建物で売れても500万円程度。建物を解体したりするとたいして残らないよう。預金は150万円残っていますが、兄の息子が相続放棄したのには理由がありました。
兄は20年程難病で入院しており、生活費に困ってクレジット会社に借金したことがあると聞いており、返済は済んでいるというものの、亡くなったきっかけで請求されるのでは?という不安があるからだといいます。
現在、土地に抵当権はついていないと確認できましたが、限定承認で土地と預金のみ希望したとしても、相続後、借用書など出て来て請求されたら困る、どうすればいいかというご相談でした。
◆限定承認?やはり、相続放棄?
相続人の子が相続放棄し、次の順位の姉も相続放棄したあと、相続人がOさん一人になったときはOさんが限定承認の手続きをすることは可能です。
限定承認する際、財産の概要を確認した上で借入金があるか否かも調べることが望ましいところです。
抵当がなく、身辺に借用書などが見当たらない場合は隠れた負債はないのではと想定されます。回収する気がある債権者であればとっくに動いているはずです。
万一、想定外の借入金の返済を求められたとしても相続した範囲までということで持ち出しにはなりません。
しかし、不安をかかえたくないとすれば、やはり相続放棄してしまいたいとOさんの本音が見えました。
◆不動産は放棄できない
民法940条により、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」となっており、相続放棄は受理されるが、財産管理人などを建てない限り管理責任が残るとされています。
借金だけであれば相続放棄は簡単ですが、不動産がある場合、相続放棄の申請が受付されたとしても相続人に管理責任があります。地方の不動産は国が引き取らないため、相続して売却しておかれる方が負担は少なくなります。
◆土地の放棄ができるようになる
国は、土地所有権の国庫帰属制度を新設し、3年後あたりを目処に実施するように準備を進めています。この制度が始まると、保有したくない土地を相続して、ずっと所有し固定資産税を払い続けなければならないということは避けられます。
土地については10年分の管理費と審査手数料を収め、以下の条件を満たしていると国に引き取ってもらうことが出来ます。
建物もトラブルもない土地にしないと国は引き取ってくれないということです。
◆相続して売却
このように現在では、相続放棄しても管理責任が残り、土地所有権の国庫帰属制度はまだ先のこととなると、Oさんが代表で相続し、建物を解体して売却してしまうことが一番だとアドバイスしました。
今ならまだ手元にお金が残せる売り方ができると想定されます。
借金は時効もあり、今判っていない借金が出てくることもないのではと思われます。相続人の責任として相続手続きをしていきましょうとお話しています。
相続実務士のアドバイス
●できる対策⇒相続して、不動産を売却する。
●注意ポイント⇒相続放棄しても不動産の管理責任は免れないため、相続放棄して終わりとは言えない。
最初のご相談は無料です。
TEL:0120-333-834
お気軽にお問い合わせください
コラム執筆