事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

不動産の価値が違う。借入もあり。娘三人に公平に渡すにはどうする?

■親から相続した財産+自分で得た財産がある

Оさんご夫婦はともに公務員として定年まで仕事をしてこられましたので、定年後は退職金と年金で生活費には困らない収入があります。
それだけでなく、長男のОさんは両親と同居してきましたので、自宅と隣接するアパートを相続しました。

Оさんの父親は自宅の敷地に工場を建てて金型の製作をしてきましたが、大学に進学して公務員の道を選択したОさんは製作所の後を継ぐことはできませんでした。よって父親が廃業したあとは工場を解体し、父親の相続対策として建築費の借入をしてアパートを建てました。その借入が会ったお陰で父親が亡くなった時には相続税はかかりませんでした。Оさんが自宅とアパートの敷地を相続し、母親と嫁いだ姉たちには現金を分ける分割協議をして円満にまとまったといいます。

 

■妻にも財産がある

Оさんの妻も定年まで勤め上げた公務員でしたので、退職金が入り、年金もでますので、生活には困らないといいます。さらに妻にも、自分の親から相続した預金と株があり、金融資産はОさん以上もあるというのです。

Оさん夫婦の子どもは娘2人と息子が1人います。長女は独身でОさん夫婦と同居しています。次女は結婚して実家を離れていましたが、離婚して、子どもを連れて実家に戻り、Оさん夫婦と同居しています。長男が一番末っ子で、仕事の関係か家を離れ、そのまま結婚して、配偶者の義両親と同居する形で生活をしています。

 

■70代になって財産の渡し方を考えないといけない

Оさん夫婦は70代半ばとなり、元気だとはいうものの自分たちの相続のことを考えないといけない年代になったため、どうすればいいのかアドバイスしてもらいたいと夫婦で相談にこられました。

財産はそれぞれのものとはいえ、互いが相続人でもあり、一緒に対策をしておくことが望ましいので、一緒に来て頂き、情報共有しながら対策を進めてもらう必要があります。

そこで夢相続で、ご夫婦から「相続プラン」の委託を頂き、財産を見直し、子どもたちにどのように渡していくのかをプランニングさせて頂くことになりました。

 

■課題と提案

「相続プラン」の進め方は、次のとおりです。

・現状分析と課題整理
◇評価の基礎資料 
◇相続人・不動産・動産の確認と評価・現状分析

・意見交換のお願い
◇ご資産の状況と分割イメージ? 
◇ご参考 取得割合の検証(1次・2次相続)

・相続ヒアリングシート
1.財産に関すること
2.申告・納税に関すること
3.生前対策に関すること
4.相続人等に関すること
5.遺産分割に関すること
6.事業承継に関すること

・経済面の対策
◇不動産・現金を活用した生前対策と効果
◇特定の人に財産を渡せる方法

・感情面の対策
◇遺言書
◇民事信託   

 

■財産の確認と整理事

Оさんの財産は不動産6割と金融資産4割という内容で、バランスは悪くないのですが、一番の課題は購入した不動産にあります。

父親から相続した自宅は借り入れがなく、隣地のアパートは建築費の借入が残っていますが、10年以内に返済できます。ところが相続対策という名目で土地を購入してアパートを建てている3つ目の不動産があり、その不動産の土地は大きく、借入も2億円近く残っています。そのために財産から負債を差し引くことができる相続対策の目的は果たしていて相続税は半分に減らせています。

Оさんは自宅よりも評価が高い住宅地に夫婦の共有名義でセカンドハウスも保有していますので、不動産は3か所になります。

3人の子どもがいるので、3つの不動産があると、ひとりに1か所ずつと割り当てしやすいのですが、そう簡単にいかない理由があります。

また、Оさんの妻は購入したアパートの建物とセカンドハウスの共有している以外は金融資産で、Оさん以上もあることがわかりました。借入があるのはОさんだけですので、妻の相続税はОさんの10倍近くとなるのです。

 

■財産はあるが、公平にならない課題がある

Оさん夫婦は親からの相続や自分たちの収入により、困らないほどの財産を持っておられますが、それでもこれから3人の子どもへ渡すことを考えるとつぎのような課題があります。



1.不動産は3か所あるが、公平にならない
・借り入れのあるものと借り入れのないものとの違いがある
・収入があるアパートと収入りないセカンドハウスがある


2.借り入れが1億7000円残っている
・自宅隣地のアパートはあと10年で返済できるが借入4000万円残っている
・土地から購入したアパートは借入が1億3000万円残っている


3.不動産の収入が物件により違う
・自宅隣地は6世帯、購入したアパートは15世帯で、家賃収入の額が違う
・セカンドハウスは賃貸していないため、収入がない。

 

■これからできる対策はなにか?

Оさんご夫婦の財産を合わせて、子どもたちに渡すことを考え、夢相続では、これからできる対策を提案しました。

 

1.借入の多いアパートは売却、妻は現金で不動産を購入、3人に相続させやすい不動産を購入する・・・借入の負担を減らしながらバランスを取って不公平感を減らす

 

2.現状維持する場合は、3か所の不動産とこれから妻が購入する不動産の家賃収入を3人で分けながら不公平感を減らすようにする。相続する段階ではバランスはとりにくいが、借入返済後を想定して3人に相続させる

 

3.借入のある不動産は親族の法人に売却し、個人の借入を減らす。
賃貸事業は法人が運営するようにし、収入を3人で分けることで不公平感を減らす。但し、法人の運営者を決める必要はある。

 

主にこの3つの案から選択していくことになりますので、Оさん夫婦に提案しました。
Оさんご夫婦は、子どもたちの意見も聞いて慎重に選択していくということを話されています。

 

■親族の法人が賃貸事業を運営するメリット

親族で法人を設立し、賃貸事業を行う場合のメリットを上げてみましょう。ただし、具体的な状況や地域によって異なるため、以下は一般的なメリットの一例です。

1.資金調達の柔軟性: 複数の親族が資金を出資することで、資金調達の柔軟性が向上します。法人組織を通じて融資を受けたり、親族同士で出資比率を調整することができます。

2.税務優遇措置: 法人は所得税の計算方法が異なり、特定の経費や償却などが認められることがあります。また、親族である場合には贈与税の対象となりにくいケースもあります。税務の専門家と相談しながら、最適な税務戦略を検討できます。

3.事業の継続性: 親族で法人を設立することで、事業の継続性が高まります。家族同士で協力し、事業を長期的に展開する計画を立てることができます。

4.管理効率の向上: 複数の親族が参加することで、事業の管理や運営において異なるスキルや経験を持つ人材が組織内に存在し、効率的に業務を進めることができます。

5.家族関係の強化: 共同で事業を行うことで、親族同士の連携や協力が強化され、家族結びつきが深まることが期待されます。しかし、事業においては専門的な問題や意見の相違が生じる可能性もあるため、事前にコミュニケーションを大切にする必要があります。

以上のメリットを考慮しつつ、法的な手続きや契約書の作成、税務などについて専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。

 

■賃貸事業を法人で運営する場合のデメリットも想定する

親族で法人を設立し、賃貸事業を行う際にはいくつかのデメリットや課題が存在します。以下はその一例です。注意深く対処する必要があります。

1.家族内の関係の複雑化
ビジネスと家族の両面での関係が絡むことで、感情的な問題が生じやすくなります。経営上の決定が家族関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

2.経営意思統一の難しさ
複数の家族が関与する場合、経営方針や意思統一が難しくなることがあります。異なる意見や価値観が生じ、決定の遅れや軋轢が発生する可能性があります。

3.相続の問題
資産や株式などの相続が複雑に絡むことがあります。適切な相続プランを検討しておかないと、後のトラブルの原因となります。

4.責任の共有とリスク
ビジネスには成功と失敗があり、失敗時の責任の取り方やリスクの分担が問題となることがあります。これについての合意が事前に必要です。

5.専門知識の不足
全ての親族が賃貸事業の専門知識を持っているわけではない可能性があります。これが事業の適切な運営や問題解決を難しくすることがあります。

6.事業のスケール拡大の制約
親族経営の企業は、事業のスケール拡大が難しいことがあります。外部への出資や経営幹部の採用が制約される可能性があります。

 

Оさんご夫婦には法人のメリットとデメリットも合わせて伝えて、検討してもらうように説明しました。親族間の賃貸事業は成功するケースも多いですが、リスクを最小限に抑えるためには慎重な計画と実行が必要です。

 

 

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