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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

事実婚で未入籍だと相続できない。マンションの権利はパートナーの父親に

◆同居するパートナーが亡くなっても自分の名義にできない!

藤井さん(40代女性)はパートナーとマンションを購入して同居を始めてから既に10年になります。バブルがはじけてピーク時よりは手頃感が出てきたことや、家賃の負担よりも買ってしまったほうがいいという雰囲気があったので、それぞれの貯金を出し、2分の1ずつの割合で買うことにしたのです。ローンもそれぞれ別々に借りています。

 

互いに離婚歴があるわけでもなく、入籍できない事情はないのですが、子供に恵まれなかったこともあり、仕事を優先したため、入籍して苗字が変わることのほうが煩わしく思い、そのまま過ごしてきたということです。仕事や生活をしていくなかでは入籍しないことは大きな問題も煩わしさもなかったことから、何ら不自由はありませんでした。

 

 

◆パートナーが急死。遺言書

ところが、未入籍の事実婚が問題になったのは、パートナーの病気が発覚して急死したときでした。パートナーは建設関係の営業マンで42歳になったばかり。これからまだまだ働き盛りというときに、会社の検診でガンが見つかり、再検査をしたときには余命数ヶ月と告知されたのです。そして告知されたとおりの入院期間で亡くなってしまいました。

 

葬儀は、父親が取り仕切り、身内だけで簡単に済ませましたが、そのあとの手続きが大変でした。

形は同居する夫婦でも、籍が入っていないのは、配偶者でも妻でもなく、「他人」だということに今更ながら気づかされたと言います。入院、手術など病院の手続きは同居するパートナーということで保証人として藤井さんができましたが、いざ、亡くなってしまうとパートナーではできないことばかり。預金の引き出しすらできないと知ったのでした。

 

 

◆遺言書が必要だと知らなかった

さらに困ったのは、住んでいるマンションのこと。お金を出し合って半分ずつの権利があるのですが、パートナーの権利は藤井さんにはもらえないとわかって困ってしまったのです。

 

自分が住んでいるのに、半分はパートナーの父親名義になるとはおもっても見ない事態でした。

 

病気が発覚して、数か月で亡くなったので、入院、検査、手術と落ち着かず、いまさら病室で入籍の話もできず、自分のためにしてもらわないといけないことは言いだせなかったのですが、こんなに大変だという発想もありませんでした。

 

パートナーの父親は、2人で購入したことは承知のことなので、幸い、手続きには協力すると言ってくれています。それでも、どういう手続きをすればいいのか、コラムから相談できることを知り、教えてもらいたいと来られたのでした。

 

◆贈与? 遺贈? 売買?

パートナーの父親が協力してくれると言っても、いきなりは相続人でない藤井さんの名義にすることができないのです。パートナーから相続人ではない藤井さん名義にするには、遺言書で、「遺贈する」として書いておいてもらうことが必要でした。

 

いまからできることは、まず父親が相続して名義変更をし、それから藤井さんに遺贈、贈与、売買のいずれかの方法で権利を譲るとなります。

 

たとえば、2分の1は父親名義のまま住み続け、ご主人の父親に公正証書遺言を作成してもらって遺贈を受けることも方法の一つで負担も少ないことです。

 

◆結局は買い取った

ところが、亡くなったパートナーには妹さんがいるということで、遺贈を受ける場合に、将来、父親の相続で妹さんとトラブルにならないとも限らないため、不安は残したくないとのこと。また、贈与や遺贈など無償でもらうことには抵抗があったようで、結局は父親の権利を藤井さんが買い取ることになりました。

 

幸い、購入価格より値下がりしている時期でしたが、財産評価からすると2分の1は1000万円以上になりましたが、これで遠慮なく自分のものだと言えるのですっきりするということでした。

 

当社で売買契約書を作成して、相続登記と売買の所有権移転登記を一度にすることで全部を藤井さんの名義にすることができました。

 

 

◆子供がいないと配偶者でも大変

仮に、入籍した配偶者であっても子どもがいない場合は、夫の父親の権利が3分の1あります。マンションは住んでいる配偶者が相続していいと譲歩して頂けることが多いとは思いますが、それでも遺産分割協議書に実印押印と印鑑証明書、戸籍謄本の協力が必要になります。

 

理解が得られないと法定割合の財産を相続すると主張される場合も無きにしもあらずですから、最悪はマンションを売却して分け合わなければいけないことになります。

 

仮に配偶者の立場でも、遺言書を作成しておかなければ簡単にはいかないこともあるのです。

 

◆若くてもお互いの遺言書は必要だった

夫婦別姓が注目されて久しくなりますが、こうした現実の問題があることは、直面しないと気がつかないことかもしれません。幸い、藤井さんの場合は、パートナーの父親に理解があり、協力を得られたことは幸いでしたが、そうだとしても、藤井さんの立場では複雑な思いがあり、自分のお金を出してパートナーの権利を買い取ることで自分のプライドを守ることにこだわったのだと感じました。これからの長い人生ですから、藤井さんにとって、自分の住むところが確保できた安心感は大きいと思いました。

 

まだ40代ということもあり、自分が亡くなったあとのことをイメージできなかったことは致し方ないところで、自分の病気で藤井さんに配慮する余裕もなくなってしまったのかと思いますが、それでも、「遺言書」を作成することを誰かが勧めてくれていればと思うところです。

 

 

◆病室でも遺言書は作れる

仮に亡くなる前に相談があれば、夢相続では「公正証書遺言」の証人としてサポートをしていますので、すぐに手配をして、作ることはできたと思います。

 

公正証書遺言は公証人や証人が出張して病室で作れるのです。藤井さんがパートナーに意思確認をして内容も確認し、本人の代わりに戸籍謄本や印鑑証明書を取得することができれば、夢相続で公証役場と打ち合わせをして段取りします。事前に公正証書遺言の原稿を作成して本人に確認しておいてもらえますので、当日は30分程度でできあがります。

 

作成日当日は、公証人と証人2名がパートナーの病室に出向いて、立会い、内容を確認の上、本人が署名すれば公正証書遺言が完成します。

 

印鑑証明書や戸籍謄本、マンションの登記簿、固定資産税納付書など必要書類がそろい、内容が決まれば翌日でも作成は可能です。公証役場の原稿ができ次第ということになります。
このようにして遺言書が作れていれば、パートナー本人が安心できたのではないかとも思えて、残念に感じます。

 

 

◆相続実務士のアドバイス

●できる対策 

公正証書遺言を作成してマンションを遺贈すると記載

金融資産なども分け方を記載しておく

 

●注意ポイント

不動産は生前贈与を受けることもできるが贈与税がかかります。

入籍すれば配偶者の立場となり、相続人ですが、

子どもがいない場合は親が相続人となるため、やはり遺言書は必要と言えます。

 

 

 

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