事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
二世帯住宅、相続、実家の共有には、解消するゴールを!
事例1 二世帯住宅は美談でもあり、修羅場にもなる!?
◆二世帯住宅で姉妹が同居してきた
佐藤さん(50代女性)が、80代の父親が亡くなったと妹とふたりで相談に来られました。
母親はすでに亡くなっていて佐藤さん家族と妹家族が二世帯住宅の実家で同居をしながら、父親の面倒を看てきました。もともとは両親が1階に住み、2階が佐藤さん夫婦と子供ふたりの6人でスタートした二世帯住宅でした。
ところが母親が先に亡くなって、1階は父親のひとり暮らしに。子どもたちも仕事の関係で独立してしまい、仕事をしている佐藤さん夫婦では父親の面倒を看ることは簡単ではありません。
そこで専業主婦の妹に父親の世話ができるとなり、妹の家は子供夫婦に住まわせて、妹夫婦は佐藤さんの実家に引っ越して父親の面倒を看るという生活に切り替えたのです。
◆家か?現金か?バランスがとれず
妹夫婦のお陰で、父親は不安なく老後の生活ができ、佐藤さん夫婦もいままでのペースで生活ができ、うまくバランスが取れていると思っていました。父親は遺言書を残さずに亡くなりましたので、姉妹で遺産分割協議が必要です。
佐藤さんの考えは姉妹で等分にということです。妹もそれについては異論がなく、3000万円ほどの預金は解約して半分にすることはすんなりと合意が得られました。
家は築30年ほどながらまだしばらく住めるといいます。土地は50坪で、ふたつに分けると細長くなり、いまの大きさの家は建ちません。
評価は6000万円ほどあり、現金の約2倍になります。どちらかが不動産、どちらかが現金という分け方ではアンバランスになります。
◆意見が合わない!
結果、残る選択肢は、現金を等分にしたように、実家を売って二等分することが現実的な選択肢だとなりました。
ところが、ここから足並みが揃いません。夫が定年になり、庭の手入れがいらないマンションに住替えたいCさんと、まだ実家に住んでいたい妹の意見が違うのです。
Cさんはすぐに売って住替えたいのに、妹は1年とか3年では売却は考えられない、5年でも短いという意見なのです。
しかし、売却するには2人の合意がないと進みませんし、住んでいる妹家族が引っ越ししないと売れません。いずれにしても合意が必要で、どちらか一方で進めることはできません。
◆スケジュールを決めて合意書に
そこで提案したのは、遺産分割協議書を作成するときに、合意書も作成して、売却して財産を分ける期限を決めておくということです。
本来は相続税の申告が終われば財産を分けるのが一般的なスケジュールですが、すぐに分けられない状況であれば約束事を書類にして、それを目安に進めていくという方法です。
仲良く二世帯で住み続けると問題がないかというとそうはいきません。建物は老朽化してきますので、いずれかの時期に同じ問題が生じます。
姉妹でルール作りをして分けていくことが必要でしょう。
佐藤さん姉妹は二人の意見の間を取り、税金の特例が生かせる相続してから3年を目安に売却されることをおススメし、検討中です。
事例2 空家の実家を兄妹で共有したことが不幸の始まり ストレスしかない。
◆夫の実家を相続
田中さん(50代・女性)は、5年前に急死した夫から、夫の実家の土地、建物を相続しました。
夫は3人きょうだいの長男で、弟と妹がいます。義父は20年前に他界しており、その後、義母は一人暮しをしてきました。
長男である夫も義弟、義妹も、両親と同居はしてきませんでしたので、義母が亡くなったとき、空家になった実家は3人で3分の1ずつ相続しました。その後、夫の実家は義母が亡くなった13年前から空き家になっているといいます。
◆夫と義妹が共有
いちばん近くに住むのは次男です。次男は「実家は自分が買い取る」といい、田中さんの夫も義妹も同意して、準備をしていたのですが、そんな次男が急逝。代わりに夫と義妹が次男分を買い取るようにしたことから、結果的に夫の実家は、夫と義妹が2分の1ずつ所有する形となりました。
田中さんが来られたのは、この共有に関することです。夫が亡くなった5年前より、義妹と共有しているが、何事も義妹のペースで進められて自由度がない上に、空き家の維持にかなりの費用がかかり、負担が大きいため、どうしたらいいかというご相談でした。
◆共有を解消するには
共有解消の方法は、(1)一緒に売却してお金を等分にする、(2)どちらかが一方の権利を買い取り単独にする、(3)土地を2つに分筆して単独にするという方法が想定され、このうちのいずれかが選択肢となります。
いままでは、夫のきょうだい3人とも誰かが所有して残してくれたらという気持ちで合意をしたために3人の共有がスタートしたのですが、いまや長男、次男が亡くなり、義妹だけになっています。共有者の田中さんは長男の嫁の立場で、実家に生まれ育った義妹とは明らかに気持ちの温度差があります。
しかも、離れた立地で行くにも時間がかかり、そして固定資産税、光熱費、庭の手入れ代などの維持費を負担する必要があり、負担になっています。
◆義妹は売りたくない
一緒に売却することがいちばんすっきりする方法ですが、義妹は自分の実家は売りたくないので、買い取るにしても、時価ではなく、路線価以下でないと了解しないと言っているようで、それでは田中さんも不本意なところです。
確認すると、夫の実家の土地は150坪で、十分な広さがあり、角地ですので、半分に分筆できる地形です。
実家の建物は築50年と老朽化しているため、この際に解体し、土地を二つにわけて義妹と田中さんの単独名義にし、田中さんは売却するという方法もあります。
方法論はいずれでもいいので、共有解消する必要がありますが、何事も義妹と共有名義というところで、田中さんの一存ではなにも進みません。
◆第三者に交渉依頼を
円満な合意を導き出すことが理想ではありますが、状況によっては第三者に交渉を依頼することも致し方ないかもしれません。
まずは、田中さん自身が決断して義妹に共有解消を申し入れることをお勧めしましたが、義妹の反応次第で、当社や弁護士がサポートする方法が必要だと言えます。
いずれにしても「空き家」の持ち出し状態で13年。収入面ではマイナスで負担しかないというところ。根本的な解決が急務です。
◆相続実務士のアドバイス
実家を残してもらいたいという親の気持ちがあり、生まれ育った子どもたちも、実家を残したいと思うご家庭が非常に多いといえます。美談ではありますが、それに伴うストレスやトラブルが多いことも現実です。
不動産をきょうだいで共有することは、きょうだいでも意見が合わず、まして次の相続が発生してきょうだいの配偶者が共有者になるとなおさら問題は深刻化します。
それなのに空き家でも実家を維持したいという方もあるとなかなか問題が解決しにくくなります。
住まない実家は役割を終えたと考えて、使ってくれる人に譲渡していくよう、発想を切り替え、財産は共有しないで分けていくことが大事になります。
共有するときは解消するゴールを決めてからとして、ストレスをかかえることのないよう、決断されることをお勧めします。
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