事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
二人暮らしには広すぎる!自宅の建て替えは二世帯?賃貸併用?
■70代、自宅をどうする?
Hさん(70代男性)が妻と一緒に相談に来られました。Hさん夫婦は最寄駅から徒歩5分の立地に自宅があり、便利な暮らしをされています。Hさんの親が購入された家で、父親が建て直して、その後、Hさんが父親から相続されました。
建物は築30年を過ぎ、老朽化が目立つ部分も出てきました。なにより、一番の課題は夫婦二人暮らしには広すぎるということです。自宅を建て替えるにしても、自宅のみにするのか、子どもと二世帯にするのか。賃貸併用にするのか、などいくつかの選択肢があり、迷っているので、提案してもらいたいと、委託を頂きました。
■家の半分は使っていない
土地は75坪、建物は2階建て50坪、5LDKあります。かつて建てた頃はまだ両親が健在で、両親の部屋と、夫婦の部屋、3人の子ども部屋、客間があり、その他にリビング、ダイニングがあります。当時は必要な間取りでしたが、両親が亡くなり、3人の子どもたちが独立してからすでに20年ほどは夫婦二人暮らしをしています。
子どもは3人とも近くに住んでいるので、泊まることなく自宅へ帰ることができるので、なおさら、家の半分以上は使わない部屋になっているといいます。
■70歳になって発病、入院
Hさんは夫婦で創業した会社があり、70歳までは先頭に立って働いてきました。お陰で会社は安定企業となり、従業員50名、FC店舗50か所となるまで成長してきました。
ところが、70歳になってほどなく、心筋梗塞で倒れて入院、手術を余儀なくされたのです。半年間入院し、リハビリに励んだお陰で、1年程度でほぼ日常の生活に戻ることができました。けれども、激務の会社運営は負担が大きいということで、長男に社長を譲り、会長職として社会復帰ができたのです。
こうした経験から、いよいよ相続のことを考えなくてはと思い始めたと言います。
夢相続では「相続プラン」をおススメして、選択肢を作るようにしました。
■財産は約2億円 相続税もかかる
Hさんは財産は自宅と会社に貸しているビルと金融資産で約2億円です。借入はありません。相続人は4人ですので、相続税は2435万円と試算されました。配偶者には税額軽減の特例がありますが、妻にも不動産と金融資産があり、すでに基礎控除を超えていますので、特例を使うメリットはありません。二次相続での相続税が増えてしまうからです。
居住用の小規模宅地等の特例が適用できるのも妻だけですので、小規模宅地等の特例は賃貸しているビルを選択することが得策となります。
■駅から徒歩5分の立地を生かす
Hさん夫婦がいちばん気にしていることは、自宅の建物が古くなり、また、広すぎて掃除も大変になっていることです。幸い、Hさんの体調も回復してきましたので、これからの老後を快適に過ごしたいと思うようになりました。
自宅を売却して有料老人ホームに入る方法もありますが、最寄駅から徒歩5分の立地は便利で捨てがたく、Hさんご夫婦は売りたくないとなりました。
そうなると、次の選択肢は自宅をリフォームするか、建て替えるかのいずれかになります。リフォームすると費用は少なくて済みますが、1階で生活することになり、2階は使うことがなくなるかもしれません。それでは建物を活かしきれないことになります。また、空調は各部屋ごとに使うため、特に冬場は部屋の温度がそれぞれ違うため、暖かい部屋から寒い廊下や寒い部屋に行ったときにはヒートショックを起こしがち。それも不安があるので、建て直そうということで夫婦の意見はまとまりまっています。
■住むなら階段のない1階にしたい
自宅を建て替えようとなってから、いくつかのモデルハウスを見学して間取りのプランや見積もりを出してもらったということですが、最終的に1社が候補となりました。そのハウスメーカーはHさんの希望ではある全館空調の設備が組み込めるという条件がクリアできることで一番手になったといいます。
敷地の200%の面積が建てられるエリアですので、4階や5階建てが建てられます。4階以上にするとエレベータも設置することになるため、3階建てが無難なところとなったようです。
Hさん夫婦は両親の介護も経験してきましたので、介護が必要になると階段が大変になるため、自分たちは1階に住むようにしたいとなりました。
■二世帯か?賃貸併用か?
容積的には150坪ほど建てられますので、1階50坪となり1フロアで現在の2階建ての建物の広さを確保することができますので、圧迫感はありません。
自宅を建て直すにあたり、相続税的にはどういう建て方をすれば節税になるのかを検証しました。
1.自宅だけの場合、配偶者であれば、小規模宅地等の特例を使えますが、同居をしていない子どもたちはすでに自宅を購入していますが、次世代は使えません。二次相続を考えると配偶者に自宅の全部を相続させると次の相続税が増えてしまうため、得策ではありません。また容積率200%のエリアですので、上層階を利用したほうがよいため、自宅だけで建て直す選択肢の優先順位は最後となりました。
2.子どもと二世帯住宅を建てる案もありますが、子どもの家は小規模宅地等の特例から除外されますので、特例の効果が半減するため、得策ではありません。
3.賃貸併用の自宅を建てる場合は、1階が自宅、2,3階を賃貸とすることができます。仮に自宅の特例が使えない場合でも、2.3階の貸付用の小規模宅地等の特例が使えるようになります。賃料も2フロア分が入りますので、建築費の借入返済のめどがつきますので、大きな不安はないと言えます。仮に子どもが1フロアに使用貸借として住むような場合は、1フロア分の自宅の特例と貸付用の特例が使えることになります。ただし、受け取る家賃が1フロア分になる場合は、返済原資が少なくなるため、子どもからも家賃を受け取るなどの補填が必要でしょう。
このように比較してみると、1階を自宅とし、2,3階を賃貸するのが賃貸事業としては安定すると判断できました。建築費の借入を差し引くと相続税は現在の半分程度に減額できます。
■ハウスメーカーの建築費は2億円!?
検証の結果、賃貸併用の住宅を建てて、1階が自宅、2,3階を賃貸するのが節税になり、安定するという結論になりました。Hさんご夫婦もそうした方向性で考えたいということですが、次の課題は事業収支です。
Hさんご夫婦は、自宅を建て替えようとなってから、いくつかのモデルハウスを見学して間取りのプランや見積もりを出してもらったということで、最終的に1社が候補となりました。そのハウスメーカーはHさんの希望である全館空調の設備が組み込めるという条件にかなっているのですが、約2億円の事業費になるという見積もりです。
年間の借入返済は700万円。2,3階の賃料は坪単価12000円で100坪賃貸しますので、年間1200万円の賃料が入ります。管理費や固定資産税の負担などを考慮すると手取りは1000万円程度ありますので、700万円の借入返済をしてもまだ300万円以上は手許に残るという計算にはなりますが、賃料の減額や維持のための出費を考えるともう少し収支バランスを検討したいとなり、これから検証することになりました。
賃貸事業は30年以上の長期になるため、スタートの事業費の検証は大事になります。
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