事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
住まない実家は相続放棄して妻子に迷惑かけたくない!それでいいのか?
◆相続はしたが実家の不動産はいらない!妻子に迷惑かけたくない!
40代のKさん(男性)から相談がありました。
実父が2年前に亡くなり、九州にある実家の不動産を自分が相続することになりました。他の相続人は姉で、母親は健在ですが、父親とは離婚していて相続人ではありません。実家の不動産は姉も住まないため、長男であるKさんが相続するという流れになったようです。
父親の財産は不動産が15筆ほど。自宅の土地建物は調整区域にありますが、460万円。他は田畑、雑種地など500万円ほどで、合わせて1000万円ほどとなります。預金は500万円あり、姉と二人で等分にしました。相続税の申告は不要です。
◆実家の不動産には住まない、いらない
Kさんは学生時代から関東に来て、そのまま、就職して結婚しました。2人の子供にも恵まれ、家族4人の生活で、上の子が小学校に上がるときに戸建て住宅を購入しているため、今後、実家に戻って暮らすこともありません。
そろそろ売却等も含めて処分したいのですが、売却等は難しそうだといいます。けれどもこのままにしておくと、自分の妻や子供達に相続させることになり、負担でしかありません。迷惑をかけたくないと思ってなんとかしたいということです。
◆母親に贈与して、相続放棄をしたい
そこで考えたのが、Kさんが相続した実家の不動産を実母に贈与して、将来の相続の時に相続放棄すれば妻子に迷惑かけずに、棄てられるのでは。という内容でした。
母親はKさんの家とは比較的近いところに住んでいて、実父と離婚したとはいうものの行き来をしており、事情を話して費用を負担すれば理解、協力してくれるといいます。しかし、実務的にそうしたことができるか?というのが、相談の内容でした。
また、費用(贈与税、手数料等)はどのくらいになるのか?固定資産税は自分の方で払い続けることは、出来るか?母親が亡くなった場合、相続放棄をすれば、実家の不動産は固定資産税等を含めて、全く関わらなくなるのか?についても知っておきたいということでした。
◆贈与にも税金と費用がかかる
Kさんの実家の土地、建物の評価は460万円ですので、贈与税の基礎控除110万円を超えた分に贈与税が課税されます。税率は20%で贈与税は45万円。
(計算式 460万円-110万円×0.2-25万円=45万円)
さらに名義変更の費用と不動産取得税がかかります。母親の名義になると固定資産税の請求は母親に行きますが、母親の代わりに払うことは問題ありません。
よって贈与はできるが、贈与税と名義替えの費用や不動産取得税、などで数十万円の出費が必要になると言えます。
◆相続放棄の手続きができても管理責任は残る
Kさんのストーリーどおりに母親の相続時に相続放棄はできますが、子供が放棄すると母親のきょうだいまで放棄の手続きをしないといけないため、親族の方を巻き込むことになります。また、母親の金融資産があったとしても相続することができないため、想定どおりに放棄できるかは、不安が残りますし、費用と手間もかかります。
しかし、一番の問題は、相続人全員が相続放棄の手続きをしたあと、不動産が国に帰属するまでは管理責任が生じることです。放棄すれば自動的に国のものなるのではなく、相続人代表が家庭裁判所に「財産管理人」の選任申し立てをして、弁護士などに費用を払い、財産管理をしてもらいながら国に帰属する手続きをしますが、地方の不動産は受け取らないため(換金できるところでないと)、ずっと弁護士に管理費用を払うことになりかねません。申し立て費用は100万円以上かかります。
よって負債だけ残った場合の放棄は比較的簡単ですが、不動産がある方が放棄するのは現実的ではないと言えるのです。
◆使わない不動産は処分しておく
家庭裁判所で相続放棄の手続きができたとしても、国が引き取ってくれるまでは管理責任が残るため、関係ないと言えません。よって、今のうちに処分したほうがいいというのがアドバイスです。
売れるならばできるだけ早く売ってしまうことがおススメですので、不動産会社に依頼するなどアクションを起こすこともおススメしました。地元の親族や近隣の方に売却する、贈与するなどの方法も合わせて検討して、早めに処分していくことが所有者の役割になります。
コラム執筆