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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

公正証書遺言があっても、銀行には遺言執行を任せたくない!

 

■事例1 自宅が共有、分筆もなく、納税できない

・銀行で公正証書遺言を作成していた

Kさん(50代男性)の父親は取引先の都市銀行で公正証書遺言を作成されていました。都市銀行が遺言執行者になっていますが、作成当時の証人は作成するだけの支店の担当者だったようで、遺言執行は都市銀行の専門部署が担当するということです。父親が亡くなって取引先の銀行に連絡をしたところ、遺言執行に関する契約をするようにと言われて依頼したものの、夜も眠れないくらいに困ったことになっていると言って夢相続に相談に来られたのでした。

 

・父親の財産の大部分は土地。それが売れない‥

父親の財産は800坪の広い自宅と貸宅地8か所で財産の8割。7億3500万円の評価になり、相続税は2億3000万円と試算されました。預金は8000万円しかないので、とても足りません。

足りない分は不動産を売却しての現金を捻出する必要があります。今後の生活を考えると、相続した預金は残して納税資金は不動産から捻出することが妥当かと言えます。しかし、貸宅地の評価は高く、売却は評価の半分以下でないと売れないと銀行の担当者からは不安なことばかり聞かされているといいます。

貸宅地は3人に適度に割り振っての相続ですので、個々に売却をして、納税資金に充てたいと思うのですが、具体的にどのようにしていくのか、詳しい説明がなく、不安に思っているということです。

 

 

・銀行は相続、遺言書、不動産の専門家ではない

Kさんの父親は土地持ちの資産家ですので、銀行にとっては優良顧客だと言えます。それだけに公正証書遺言の遺言執行が主業務だと言えますが、財産の分け方や納税についてはほとんどノープランで、むしろ、相続人である子どもたちが困る内容でしかありません。最大の問題は800坪の自宅がきょうだい3人の共有になっています。分筆もせずに単なる3等分。これでは対策になりません。

けれども、自分のところの報酬に関する記載は明確で、財産の1%を遺言執行料とすると明記されています。700万円以上の報酬になりますが、Kさんは、「遺言書の作成には100万円以上も払っていて、今回は何もしてもらっていないのに700万円以上も払わなければならないのでしょうか?」と困って嘆いておられました。

 

 

〇父親の生前対策は、どうしておくべきだったか?

もう父親が亡くなってしまったので、間に合わないことではありますが、相続対策の専門会社である夢相続がサポートできたとすると次のような対策をご提案します。

 

・節税対策

自宅の土地が広すぎ、ほとんど空き地。よって、自宅は3分の1程度とし、残る3分の2は土地活用して賃貸マンションを建てる。あるいは売却して資産組替し、別の立地に賃貸不動産を購入する。これだけで相続税は半分以下に減らせます。

 

 

・納税対策

納税は貸宅地を予定するなら、生前に売却をして資産組替をする。貸宅地の多くが評価以下にしか売れないため、生前の売却が望ましい。相続になった場合でも、申告期限までに売却し、時価申告をすることで相続税はうんと減らせます。

 

 

・分割対策

自宅を売却して分ける場合は共有でもいいが、残して維持したい場合は、共有にするのは避けたいところ。生前に残すところ、売却するところを決めて、分筆して単独で保有、処分できる形にしておくことが望ましいと言えます。

 

 

◇亡くなってしまってからでもできること

 

・節税対策

貸宅地の多くが評価以下にしか売れない見込み。その場合は、申告期限までに売却し、時価申告をすることができ、現実的な評価となり、相続税が減額できます。

 

・納税対策

貸宅地の売却だけでなく、自宅の一部も売却しないと納税できません。自宅の残し方、売却の仕方を効率よく、納付期限までにして売却代金で納税できるようにします。

 

・分割対策

遺言書では自宅はただ子どもたちが3分の1ずつ相続するとしか記載がなく、それでは土地のすべてが共有になります。共有にしたままだと、意見の相違などが生じると対立したままとなりかねません。残すところ、売却するところを決めて、分筆します。残すところは単独名義とし、売却するところは3分の1のままで売却します。

 

◇遺言執行者を依頼しないこともできる

公正証書遺言があり、遺言執行者が指定されているとしても、合意により、遺言執行を依頼しないこともできます。それには相続人全員の総意であることが必要で、遺言執行者の理解も必要です。

遺言執行者の合意が得られない場合、適任ではないとする理由があれば、家庭裁判所にて遺言執行者の解任手続きを申し立てして審判を下ろしてもらうようにします。


■事例2  遺言執行を任せられない理由がある

・母親は公正証書遺言を残していた

Fさん(60代男性)の母親は90代で亡くなりましたが、10年前に取引銀行で、公正証書遺言を作成していたことを姉から聞かされました。姉から渡された公正証書遺言は、祖母の預金口座があるМ銀行が遺言執行者として作成されていました。

生前には聞いていなかったのでFさんは複雑な気持ちでしたが、さらにその内容には愕然としたといいます。「財産の配分は姉が4分の3、Fさんと弟はそれぞれ8分の1」とされていたのです。

 

・預金の引き出しや特別受益も見受けられる

母親と同居してきた姉には感謝しているものの、このような差があるとは釈然としません。また、通帳の管理も姉がしてきましたが、亡くなる数年前からかなりの額が引き出されていることも判明。とても見過ごせない額だといいます。

そこで、Fさんと弟は、姉と話をして、法定割合で分割してもらいたいと話をしたといいます。姉も理解を示してくれたということで、Fさんが当社に相談に来られました。姉と弟の合意も得られて、夢相続で、相続税の申告のコーディネートと遺産分割協議を引き受けることになりました。相続に強い税理士を選定し、情報共有しながら分割や申告など進めていくことになりました。

 

・遺言を執行しない場合はこれから遺産分割協議

公正証書遺言は優先されるものの、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議をして遺言書とは違う分け方を決めることができます。

Fさんがなぜ当社に依頼されたかというと、銀行は遺産分割協議の提案をしてくれないこと、母親の預金から引き出された現金の特別受益の調査、確認などもしてくれないということだからです。

これから預金口座の通帳や明細を用意してもらい、確認するようにします。相続税の申告を控えている場合は、主に税理士がその確認作業をしますが、夢相続では財産の分割案をご提案する役割ですので、税理士と情報共有しながら進めていくようにします。財産の持ち戻しがあれば、相続税も増えますが、疑心暗鬼の要素を残さないためにも確認しておく必要があります。

 

・銀行に遺言執行を依頼できない理由

Fさんが銀行に遺言執行を任せたくない理由は次のとおりです。

  • 生前に相続人全員への通知がなく、偏りのある分割内容に対して疑義が生じたため、別途分割協議を行う旨の合意書を交わすに至ること。
  • 遺言執行者就職に関する説明にあたり、解任となる場合の説明が一切無かったうえ、相続人の一部がその場で署名を渋った際には、「相続を放棄しないのであれば署名を」と促されました。また、この遺言書通りに実行されることが当然の如く話をされた対応で、一任するにあたり信頼を損なうものであること。
  • 相続財産に関して係争が生じているばかりでなく、特別受益が見受けられたことから、相続財産における大幅な変動がある可能性が高いことも申し伝え、既に遺言書の内容が実現し得ない状況下にあること。
  • 連絡に際して、執行者としての責務があると言いながらも当方の意向を汲み取るどころか一方的な説明に終始され、具体的な提案を頂くこともなく、さらに信頼関係を損なう結果となっていること。

◇相続後に確認すること

夢相続では亡くなった時の相続コーディネートを担当して、不満や争いにならないような相続手続きをサポートしています。主な項目は下記となります。

 

・相続座財産の確認

・金融資産の流れの確認と整理

・遺産分割案の作成と提案

・遺産分割協議の合意を得て、作成、調印

・相続税申告の内容の確認

・不動産の相続の仕方や活用の提案 

 

税理士、司法書士などの紹介と連携 など相続に関わる全般

内容はオーダーメードで対応する必要があり、今回のIさんの場合は、財産の確認をしながら、相続人それぞれの意向を汲み取って分割に反映していくようにします。

 

■銀行が公正証書遺言の証人および遺言執行者になったケースで、発生したトラブルの事例をいくつか挙げてみましょう。

  1. 遺産分割の遅延と相続人とのトラブル

事例:
ある銀行が遺言執行者となり、相続手続きを進めていたが、銀行側の対応が遅く、相続人が長期間にわたって遺産を受け取れなかった。特に、不動産の名義変更や金融資産の解約手続きに時間がかかり、相続人から「対応が遅すぎる」とクレームが相次いだ。

ポイント:

  • 銀行はコンプライアンスを厳守するため、慎重な手続きを取るが、それが結果的に遅延を招くことがある。
  • 遺言執行報酬が高額にもかかわらず、迅速な対応が期待できないことが不満につながる。


  1. 遺言内容の解釈をめぐる争い

 

事例:
公正証書遺言の内容について、相続人間で解釈の違いが生じたが、遺言執行者である銀行が一方的な判断を下したことで、一部の相続人が納得せず訴訟に発展した。銀行側は「遺言の内容に従って執行しただけ」と主張したが、相続人は「公平な調整がなされていない」と反発した。

ポイント:

  • 銀行は遺言内容の解釈において中立性を求められるが、相続人の期待とズレが生じやすい。
  • 特に遺言が曖昧な場合、銀行の判断に対して不満が出やすい。


  1. 手数料が高額で相続人が不満を抱く


事例:

銀行が遺言執行者となったが、遺産の額に応じた手数料が高額になり、相続人から「銀行に遺産を吸い取られた」との批判が出た。特に、相続財産に不動産が含まれていた場合、換価処分や管理手数料などが加算され、想定以上のコストが発生した。


ポイント:

  • 銀行の遺言執行手数料は一般的に「遺産総額の〇%」と設定されており、高額になりがち。
  • 一般の弁護士や司法書士と比較すると割高になるケースもある。


  1. 銀行が特定の相続人に有利な対応をしたと疑われる

 

事例:
遺言で「特定の相続人に多くの財産を渡す」と書かれていたが、他の相続人は「銀行が遺言者とグルになって不公平な遺言を作成したのではないか」と疑い、裁判を起こした。公正証書遺言であったため形式上の問題はなかったが、証人である銀行の中立性が疑問視された。


ポイント:

  • 銀行が証人であることで、「銀行が遺言者に影響を与えたのではないか」という疑念が生じることがある。
  • 遺言内容によっては、相続人間の対立が激化し、銀行が訴訟に巻き込まれることもある。

  1. 遺言執行の範囲を超えた対応をした

 

事例:
銀行が遺言執行者として相続財産の管理を行う際、相続人に事前相談せずに不動産を売却したり、特定の金融商品を解約したりしたことで、相続人が「勝手に財産を処分された」と激怒し、損害賠償を請求した。

ポイント:

  • 銀行は遺言執行者としての権限を持つが、相続人との十分な合意形成がないまま対応するとトラブルにつながる。
  • 特に、不動産の売却や貸金庫の開封など、重要な決定には慎重な対応が必要。


■まとめ

都市銀行が公正証書遺言の証人や遺言執行者となることは珍しくないが、

 

  1. 手続きの遅延
  2. 遺言解釈をめぐる争い
  3. 高額な手数料
  4. 中立性への疑念
  5. 相続人との意思疎通不足
    といった点でトラブルが発生しやすい。


銀行に遺言執行を依頼する場合は、これらのリスクを理解し、事前に手数料や対応方針を確認しておくことが重要です。

 

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