事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

土地を残すのは何のため?空き地、空家、駐車場、持ち続けていいのか?

■15年前に父親が亡くなって相続

Тさんの父親は兼業農家の長男で、代々の土地を相続してきました。自宅の他に貸家や駐車場、畑、山林など、多くの土地を所有しており、家賃収入で生活して来られました。15年前に父親が亡くなった時、夢相続でコーディネートをさせて頂きました。

相続人は姉二人とТさんの3人。姉二人は嫁いで家を離れていますので、当然のごとく、長男でずっと実家住まいのТさんが不動産を相続して守っていくとなりました。父親の遺言書はありませんでしたが、姉二人はТさんが、家を継いで不動産を相続するのは当然として、遺産分割協議も協力的でした。

財産は大部分が不動産で、納税資金がないため、駐車場を売却して納税資金を年収、姉二人の代償金は別の山林を売却して充当しました。

 

■15年経ち、80代、70代になった

当時、60代後半、50代後半だったТさんきょうだいは、すでに長女、次女が80代、下のТさんも70代になりました。姉二人の心配はТさんが“独身”だということです。父親が亡くなってからの15年、Тさんは実家でひとり暮らしをしてきましたが、姉から見るとお金の使い方で、不安なことが多いといいます。

Тさんは父親からの賃貸業を継続していますが、課題ばかりだといいます。たとえば、貸駐車場は整備をしていないため、滞納や放置車を見過ごしてきています。隣地からの越境もあり、それも解決できていません。

貸家も築年数が経ち、空家もあります。また、畑は15年間、ずっと空き地のままで活用もされていません。

これからさらに高齢になると不動産の管理もできなくなり、問題も解決されずに、相続になっても困ると姉ふたりとТさんの3人で相談に来られたのです。

 

■父親の相続は土地の評価を下げて乗り切れた

当時の相続内容をまとめたものは下記のとおりです。

 

[ご家族の状況]※15年前                                                               

依頼人 Тさん(男性50代)・職業 会社員                                                     

被相続人 父        家系図 別途      

相続人  長女60代、次女60代、長男(本人)50代   

財産の構成 自宅、貸家、駐車場、貸宅地、空き地、生産緑地、農地、現預金、保険

 

[相続ストーリー]

Тさんの父親は、兼業農家で貸家や駐車場経営をしていました。母親が先に亡くなってしまいましたが、父親は何ら節税対策をしないまま、亡くなってしまいました。

負債もなく、気持ちは楽ですが、納税できる現金もないため、土地を売却する覚悟をしていました。それでも相続税が1億円以上と言われて税理士さんに節税してもらいたいと言ったところ、「農家の相続は経験がない」という回答で節税までしてくれそうにもありません。不安を感じたТさんは、姉の薦めもあり、紹介者を通じて、相談に来られました。

当社で土地の調査をしてみると、いくつも減額の要素が見つかりました。駐車場は広大地評価ができ(現在、広大地評価は撤廃されています)、半分以下の評価に下がりました。貸家の建つ土地と調整区域の山林は路線価、倍率では評価が高いため、鑑定評価を採用することにしました。

申告期限までに半年を切っていましたが、ぎりぎりながら、申告、納税をすませることができました。1億円以上は納税と言われていたところが大きく節税でき、安堵して頂きました。納税は駐車場を1か所売却して済ませることもできました。

 

[相続税の節税額]

 相続財産       5億1000万円

【広大地の減額】    △ 9700万円・・・駐車場

【鑑定評価減額】    △ 5000万円・・・貸家、山林の2カ所     

【小規模宅地減額】   △ 1000万円(自宅240㎡80%適用※現在は330㎡まで適用)

 債務等        △  390万円

 課税価格       3億5300万円

 基礎控除       △ 8000万円(相続人3人)

 相続税総額        6500万円 ・・・最終の相続税額

 納付した相続税総額    5780万円②

【農地納税猶予額】      720万円

 当初の相続税総額   1億2900万円①・・・節税考慮なしの場合

◇節税額          6400万円①-②      

<評価減1> ◇広大地の減額  △  9700万円

(※駐車場 通常1億9400万円→広大地9700万円)→売却1億3000万円

<評価減2> ◇鑑定評価の減額 △  5000万円

(※調整山林と駐車場  通常 6500万円→鑑定評価2300万円)

(※貸家7軒の土地 通常 5000万円→鑑定評価4200万円)

 

 

■現在の相続税予想額

Тさんが所有するのは自宅、貸家、空き地(市街化の畑)、駐車場(調整区域)、山林(調整区域)、畑(調整区域)の不動産が大部分で、預金は自宅の改築などで使っていて、ほとんど残っていません。不動産のみで相続税を試算すると下記のとおりとなり、相続になった時には、どこかを売らないと払えません。

 

相続財産       1億8000万円

基礎控除       △ 4200万円(相続人2人)

課税価格       1億3800万円

相続税総額        2740万円

 

1人の相続額 1億3800万円÷2=6900万円

相続税の計算 6900万円×30%-700万円=1370万円

2人分 1370万円×2人=2740万円

   

 

■固定資産税は年間120万円、空き地は70万円

固定資産税の納税通知書を持参してもらい、確認したところ、年間の固定資産税額は120万円。そのうち収入があるのは貸家6軒で月額30万円、駐車場が月額3万円で年額396万円。家賃収入の30%が固定資産税の支払いでなくなります。貸家の修繕費、空き地の草刈り代なども必要で、家賃収入はあまり残らない現状だとわかりました。

特に空き地の固定資産税は年間70万円。この空き地は他の土地の代替え地として所有することになり、父親が取得しましたが、その当時から一度も活用したことがなく、ずっと空き地のままだと言います。Тさんが相続してからの15年だけ計算しても、固定資産税や草刈り代などの維持費はすでに1000万円以上もかかっているのですが、収入はないため、持ち出しの“負動産”だと言わざるを得ません。

 

■相続した不動産を維持するのが役割だというが、、

Тさんは父親から相続した不動産をそのまま維持する役割で、そのまま次世代に渡したいという考えで維持してきたと言われます。しかし、一緒に来られた2人のお姉さんたちはそうは思っていないといいます。

お2人にはそれぞれ子どもがいますので、自分たちが亡くなったあとは子どもが代襲相続人になりますが、2人とも他市に住んでいて、当然、子どもたちも同様。

Тさんが所有する不動産を相続しても住むことは想定しにくく、農地の維持もできないといいます。結果、課題のある不動産をそのまま残されるほうが困るというのです。

 

■そのままではなく立地や形を変えて維持しやすく

Тさんきょうだいの依頼を頂き、現在の課題を整理し、解決し、これからどうすればいいか、夢相続で「相続プラン」を作成しました。

現状のままでは、維持しにくいため、空き地や駐車場、山林を売却して、立地を変えて、維持する手間がかからない区分マンションなどに変えて、適切な収入が入る賃貸不動産に持ち変えることを提案しました。

これから認知症になるリスクも考えると70代のいま、すぐにでも取り組まないといけない状況です。

この内容を提案書にして、評価と相続税を説明し、課題を整理すると3人ともあらためて事の重大さを感じられたようです。さらに、解決策の提案をすると、早めに取り組みたいということになり、まずは売却の価格査定をして、前向きに取り組もうということになりました。

課題解決しながら、資産を持ち変えることで、相続税を減らし、収入を増やすことができます。ずっと同じ形で持ち続けるのではなく、立地が変わっても財産として次世代へ継承できる相続にしていく時代となります。

 

 

最初のご相談は無料です。
TEL:0120-333-834
お気軽にお問い合わせください

 

 

コラム執筆

 

メールマガジン【相続実務士・実例Report Mail】登録はこちらから
(相続相談事例・セミナー開催・メディア出演情報などをお届け致します) 

まずはお気軽にご相談ください

相続は100人いれば100通り。お客様にとって最も好ましいオーダーメード相続。

代表・曽根恵子とスタッフが、相続に関するご相談を約1時間の面談でしっかりお伺いします

noimage

受付時間:月〜金(祝日のぞく)10:00〜17:00