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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

外国籍の居住者が亡くなった。日本の不動産はどのように登記する?

 

◆自宅の名義が変えられていない 

実家の不動産の名義が変えられていないので相談したいとRさん(40代女性)が相談に来られました。

Rさんの実家は東京郊外の1戸建て住宅で、祖父が50年前に祖父が購入したものです。長男である父親がそのまま同居して引き継ぎ、いまに至ります。Rさんもその祖父の家で生まれ育ったのですが、現在は結婚して離れています。

名義人の祖父は30年前に亡くなっていて、同居する父親がもう70代になっています。

相談に来られた理由は、実家が父親の名義になっておらず、購入した祖父名義のままだということです。何年か前から気にはなっていたといいますが、登記法が改正になり、いよいよ変えておかないといけないと思っているということです。


◆登記が義務付けされた

いままでは相続になっても遺産分割協議がまとまらないなどの理由で、相続になっているのに名義が変わっていない不動産はたくさんありました。1年どころか、5年、10年、20年。30年。そうした状況でも特に義務化はされておらず、ペナルティがなかったため、何年も、何十年も、そのままになっている不動産がたくさんあったのです。

ところが、法律が改正され、2024年4月1日より相続登記が義務化されることになりました。しかもいままでの相続で名義が変えられていないものもさかのぼって義務化となりますので、Rさんの実家もその対象となるのです。

相続登記を3年以内に申請しなかったときには、「正当な理由なく怠れば10万円以下の過料が課される」とされることになりました。

 

◆相続人は明らかだが簡単に名義替えできない理由は外国籍

Rさんの祖父は中国の上海生まれの中国人です。祖父は貿易商をしていた関係で日本の会社とも交流があり、日本に移り住んだちといいます。それから上海に帰ることなく、ずっと日本で生活をしていましたが、国籍は中国のままだといいます。

けれども、自宅を購入するときには住民票で登記をしますので、住民票が取得できた祖父には不動産の名義を登記することができたということです。

結果、それから50年、売却することなく、ずっと家族で住み続けてきました。この間に、家を売却するようなことがあれば、事情は違っていたのかもしれませんが、祖父も、父親も、ずっと同じ家に住み続けてきました。


◆名義人が亡くなっても固定資産税は課税される

不動産を所有していると毎年、固定資産税がかかります。所有者が固定資産税を払うことが原則ながら、名義人が亡くなっていても、父親が住む家に固定資産税の納付書が送られてきますので、納付をしていれば、何の支障もありませんでした。法務局で名義が変わっていなくても、義務ではなかったと同様で、不動産のある市区町村も、納付さえしていれば問題はなかったと言えます。

 

◆相続登記はどうなる?

日本人の場合、不動産の所有者が亡くなった時には、亡くなった人の戸籍を集め、相続人の戸籍や住民票、印鑑証明書に合わせて遺産分割協議書を添付して、相続登記をすることができます。

しかし、祖父の場合、まず、日本では戸籍が取れないのです。日本に住んでいても戸籍は中国にありますので、本国から取り寄せる必要があります。

 

◆遺産分割はまとまっていて協力もらえる

父親は日本人の母親と結婚しており、父親の妹も日本人と結婚しているとことから、日本の戸籍が取れる状況ですが、亡くなった祖父の戸籍は中国で発行されるものが必要になるのです。しかも、亡くなって30年は過ぎていますので、戸籍などを取得するのは時間がかかると想定されます。

それでも、登記法が変わるこの時期にきちんと登記しておきたいので、手続きをお願いしますとRさんは依頼して帰られました。

父親はずっと祖父母と同居をしてきましたので、父親の妹もその家を父親が相続するのは当然と言ってくれていて、手続きには協力的です。祖母も亡くなっていますので、兄妹ふたりで祖父の相続手続きをすればいいのです。

 

◆相続の名義替えは司法書士に

早速、業務提携先の司法書士に依頼をしたところ、祖父が日本に来てから、亡くなるまでの戸籍を取得してもらうように依頼があり、Yさんにそろえてもらうようにします。その後、法務局や領事館に働きかけて相続登記ができるように手続きをすると引き受けて頂きました。

戸籍関係の取得が必要な間に、父親と妹の遺産分割協議を済ませておくようにします。

 

◆亡くなる前にできたこと 公正証書遺言を作る

Rさんの祖父はすでに亡くなってしまっているので、相続後の手続きをする以外にはないのですが、亡くなる前であれば、いくつか選択肢はあり、簡単に手続きできる方法もあったといえます。

1つは、日本の公証役場で公正証書遺言を作っておくことです。日本の公正証書遺言があれば、相続人の手続きにより、名義替えはできたと言えます。

自筆で作る遺言書だと亡くなってから家庭裁判所に持っていき、検認を受けなければなりません。また検認が終わったとしても、書き方などで遺言書が無効になるケースもあります。無効になると遺言書では手続きできず、遺産分割協議が必要になります。

 

◆亡くなる前にできたこと 生前贈与をしておく

2つ目は、生前に自宅不動産を贈与して、父親名義にしておくことです。自宅の評価は土地1000万円、建物300万円です。祖父から子どもに贈与する場合、2500万円までは贈与税がかからない特性があります。それを活用して名義を祖父から父親に変えておくことは相続の手続きよりは簡単だったと言えます。

贈与税は、相続時精算課税制度を使えば、2500万円までの財産の贈与を受けても、贈与税はかからないのです。

相続時精算課税というように、相続になった時は相続財産として加算して相続税を払うことになりますが、そもそも相続財産が相続税の基礎控除以下であれば贈与税だけでなく、相続税もかからないとなります。祖父の財産は自宅の他は預金ですが、それほど多くなかったようで、基礎控除の範囲内に収まりそうでした。

生前贈与のデメリットとなるのは、登記費用が相続の時の5倍になることです。相続では名義替えの時に必要な登録免許税は、相続では評価の0.4%ですが、贈与では、評価の2%なのです。

さらに贈与では、不動産取得税も課税され、原則は評価の4%とされていますので、登記費用以上に納付が必要となります。しかし、相続では不動産取得税は課税されません。

このような理由から、特別な事情がなければ、不動産は相続のときに登記をするほうが、費用は少なくてすむと言えます。生前に贈与で名義を変えると、相続の時の5倍以上は費用がかかるということになります。

 

◆相続実務士のアドバイス

できる対策

亡くなる前であれば、不動産を贈与して名義を変えておくことができた
亡くなる前であれば公正証書遺言を作成して、相続手続きを簡略化できた


注意ポイント

公正証書遺言があったとしても、外国籍の方が亡くなったときに不動産を所有していると本国から戸籍を取り寄せるなどの手続きが必要になるため、生前贈与しておく必要があったと思われます。

 

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