事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
姉の独り勝ちは許さない。家を売って3等分の権利がある。
◇10年もの間、父親の相続の分割が終わっていない
今年の1月、姉妹で相談に来られたFさんとIさん。
父親が亡くなってから10年以上経っているが、独身の姉が実家に住んだまま、相続の手続きができていません。
先にお母さんが亡くなり、その後、同居する姉が父親の面倒をみてくれて、
嫁いだふたりにとってはとても助かって感謝しているものの、最近はその気持ちが薄れつつあります。
自分たちにも相続を受ける権利があるのに姉の独り勝ちでは納得いかないといいます。
◇独身の姉よりも自分たちも大変 夫の病気、失業。姉は援助できるのか
独身の姉が財産分与しないなら、私や妹が独りになった時や夫に何かあった時に
財産分与に代わる経済的援助を約束してくれるのでしょうか?とFさん。
Fさんの夫は、2年前に脳梗塞で倒れ、現在麻痺等は快復し、仕事もできていますが、
原因となった心臓は、今もこれからも治療が必要です。
妹のIさんの夫は、昨年、失業の危機があったようですが、支えているといいます。
2人の母親は、50代で病気になり、60歳で亡くなっています。
2人ともまだ50代前半ですが、それぞれが元気で働ける今のうちに解決しておきたいと思い、
相談に来られたのでした。
◇ずっと住んでいたからもらえるわけではない
父親の葬儀のあと、姉から相続の話があるかと2人は期待しました。
しかし、姉からの話がないため、思い切って切り出すと、自分を家から追い出すのかと姉が激怒し、
話ができない状態になりました。
姉の言い分では、ずっと家に住んで、父親の面倒を看てきた自分が妹たちに
追い出されるのは理不尽だと言っていたようです。
しかし、そもそも家は父親の財産。
ずっと住んできたからというのは理由にはなりません。
調停に持ち込んでも同居の寄与分はみとめてもらいにくく、結果は法定割合、不利だということも説明し、
姉に納得してもらう役割を引き受けることにしました。
◇住んでいる人が売ると税金は安くなる、引っ越し費用も売ったお金で
相続財産である父親名義の家を売るためには、相続人に名義変更しなければいけません。
そのために「遺産分割協議書」を作成し、相続の仕方を決めて、3人で署名、実印押印をして法務局に提出します。
相続人が3人なので、不動産も3人が相続するという方法が思い浮かぶかと思いますが、そうした共有をすると、不利益なことが生じます。
今回、相続税はかからないのですが、売ったときの譲渡税がかかります。
しかし、住んでいる人が売ると「居住用財産の3000万円控除の特例」があり、利益の3000万円までは課税されません。
ところが住んでいない妹2人には特例が使えませんので、20%の税金(譲渡税14%、住民税6%)を
払わなければならないので、理不尽さがあります。
◇税金を払わなくてもいい分け方がある 相続財産だからこその特典
相続財産の場合、財産を代表で相続した場合、他の相続人にお金を払うという方法が取れます。
今回がまさにその事例で、自宅に住むYさんが家を相続し、妹2人にお金を払うのですが、
お金がないため、相続した家を売却して払うことになります。
この場合、姉1人が家を相続するため、家を売るのも姉で、居住用の特例が使えるのです。
売却価格は2000万円と想定されますので、本来は400万円近い税金がかかるのですが、
特例を使うと税金なしとでき、まるまる2000万円が手元に残るのです。
引っ越し費用、仲介手数料、測量費用、荷物撤去費用などを差し引くと残りは1800万円となり、
これを3人で分けることになります。
こうした方法があることを説明、姉の理解を得て、なるべく有利な売り方をしつつ、財産を分けて、解決するお手伝いをする予定です。
相続コーディネート実務士から
現在は、財産を等分に分ける時代です。同居していたから、面倒を看たからという理由だけでは
他の相続人の合意がない限り、通らないのです。
父親の家を売って、姉は住み替え、残りを三等分して分けることで、
それぞれが父親の財産を活用でき、姉妹の縁もつなげることができると言えます。