事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
親より先に子どもが亡くなることも?子供がいない夫婦の選択
◆子どもがいない
Yさん(50代男性)が相談に来られました。88歳の母親の相続を想定して、対策をしておきたいといいます。
父親は20年前に亡くなり、母親は実家で一人暮らしをしています。Yさん夫婦は父親が亡くなる前に結婚して、離れたところで生活をしてきました。
Yさんは一人っ子できょうだいがいませんので、相続のときにもめごとになることはありません。しかし、相続人が一人というところに不安があるといいます。
母親の相続の時に妻が困らないようにしておきたいということがご相談の内容でした。
◆母親の財産
実家は戸建て住宅で、土地、建物合わせて2200万円だと確認できました。他に預金と株式で6700万円あります。合わせて8900万円、基礎控除が3600万円、課税財産は5300万円、相続税は890万円と計算されました。
基礎控除が1人分しかないため、相続税が高くなります。金融資産を活用して不動産を購入、生命保険に入るなどの対策をお勧めしましたが、母親には不動産の賃貸業の経験がなく、理解を得るのは難しいとのこと。生命保険の説明も大変といいます。
とりあえずの対策は、Yさんと妻に少しずつ現金の暦年贈与をして、預金は減らしていったほうがいいとアドバイスをしました。
◆心配は自分が先のとき
Yさんの心配事は、母親よりも自分が先に亡くなったときのことです。Yさん夫婦に子どもがいないため、自分が亡くなってしまうと、Yさんの妻は母親の相続人ではないため、母親のきょうだいが相続人になります。
母親には妹がふたりいて、二人とも健在ですので、家や預金が母親の妹のものになってしまうと妻が困るというのです。
◆養子縁組は?
Yさんの妻が母親と養子縁組をして、戸籍上の子どもになってしまえば、相続人は二人となり、Yさんが先に亡くなったとしてもYさんの妻が母親の相続人として財産を相続できます。母親の子どもとなるので、母親の妹たちが相続人となることもありません。
こうしたことから、養子縁組を検討してはということもアドバイスしました。これには母親と妻がともに合意をして役所に届ける必要がありますので、検討したいということでした。
◆母親が妻に遺贈
Yさんの不安をすぐに解消できる方法としては、母親が公正証書遺言をし、「母親より先にYさんが亡くなっている場合は、Yさんの配偶者に全財産を遺贈する」としておけば、きょうだいが相続人になることはありません。
きょうだいには遺留分の請求権がないため、遺言書で手続きが完了するのです。
Yさんはそれであれば母親の了解を得て、すぐに取り掛かれるということでしたので、準備することになりました。
母親の印鑑証明書と戸籍謄本、Yさんとの妻の記載がある戸籍謄本を用意して、原稿の作成ができます。
公正証書遺言には証人が2人必要ですので、夢相続で担当します。
◆Yさんの相続も
Yさんが母親より先に亡くなった場合、Yさんの相続手続きを先にすることになります。相続人は妻と母親で、相続の割合は配偶者3分の2、母親3分の1となります。
高齢の母親に財産を渡すよりも、妻に渡したいと思うところですから、妻と母親が遺産分割協議をして「配偶者が全財産を相続する」とすれば、問題はありません。
しかし、母親がそのときに認知症になっていて、遺産分割協議がスムーズにできないことも想定されます。
それを避けるために、Yさんが「自分の財産は全部を配偶者に相続させる」という公正証書遺言を作成しておくことで、より安心だと言えます。
仮に母親に成年後見人をつけてしまうと財産の3分の1、あるいは遺言書があっても遺留分6分の1を請求されるため、成年後見人をつける前、母親の意思がはっきりしているうたに遺言書作りが必要です。
こうして母親とYさんがおなじタイミングで、別々に公正証書遺言を作成することになりました。
◆寄付や遺贈は?
さらにYさんからの質問です。どこかの団体に寄付する、または親戚に寄付する等です。
「私の公正証書遺言に、私の死亡時に母も妻もすでに死亡していた場合や、母はすでに死亡していて私と妻が同時に死亡した時の相続人を指定する事は可能でしょうか?
具体的にはまだ考えておりませんが、例えば、どこかの団体に寄付する、または親戚に寄付する等です。」
遺言書では最初の内容が実現されない状況になった場合、次の指定をしておく「予備的遺言」をしておくことができます。
Yさんが危惧されるように、亡くなる順番は年齢順とは限らず、母親よりもYさんが先に亡くなる場合、Yさんよりも妻が先に亡くなる場合、Yさんと妻が同時に亡くなる場合等いくつかの想定ができます。そのケースによって、誰に相続させるかを決めておくことができます。
しかし、寄付先を明確に示す必要があり、親族に遺贈する場合はその人の住民票を提出する必要があります。寄付や遺贈の記載をすることはできますが、特に遺贈する場合は一方的に作ることはできないのです。
そうした説明をしたところ、Yさんはまだぼんやりと考えているだけなので、まだ明確に決められないとのこと。
そこで、今回は母親の年齢のことなどを考慮すると早々に作成することが望ましく、同時期にYさんの遺言書も作成することをお勧めし、遺贈先や寄付先を決めたときに追加の公正証書を作るようにしてはどうかとアドバイスしました。
◆母親の妹たちは?
さらにYさんからもうひとつ不安なことがあると。「母親の妹二人はよく自宅に顔を出してくれて母親をサポートしてくれていますので、遺言書のことや相続のことも伝えておいた方がいいのでしょうか?」とのご相談です。
子どもがいる場合はきょうだいに相続権がないので、母親の妹たちは相続の期待はされていないはずです。たとえば母親が家督相続の形で親の財産を相続していてきょうだいに戻す気持ちがある場合は配慮が必要ですが、そうでなければ、普通は子どもが相続していくものです。
けれども介護などに協力してもらった場合はお礼として贈与税がかからない範囲で渡されることもあります。母親が妹たちにもいくらか渡したいということであれば、相続後よりも、生前に渡しておかれて、あとは子どもが引き受けると言っておけば親切だと言えます。
相続後であれば、Yさんが叔母たちにお礼することでもいいでしょう。
◆相続実務士より
Yさんと母親はこうして公正証書遺言を作成されました。母親はまだ元気ですので、公証役場に出向いて作成できましたが、公証人と証人が、ご自宅や老人ホームや介護施設、病室などに出張してお部屋で作成することも可能です。
夢相続では公正証書遺言の証人業務を受けており、遺言書作りをサポートさせて頂いております。
Yさんと母親の場合は、印鑑証明書、戸籍謄本、不動産の評価証明書などの用意ができ、遺言の内容が決まってから1週間程度で作成することができました。
親が高齢で認知気味だから、出かけられないから、とあきらめずに、方法があるはずですので、ご相談ください。
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