事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
実家の共有名義はどう解消する?分筆?贈与?買取?売却?
■祖父から生前に贈与を受けている
Hさん(50代男性)が相談に来られました。夢相続で証人業務を担当して公正証書遺言を作成していた父親が亡くなったので手続きをお願いしたいということです。
Hさんの父親は開業医で、自宅で内科クリニックを経営してこられました。自宅は祖父の代に購入したもので、その後、父親の代で建て直していますので、建物は父親名義です。
土地は祖父がHさんと姉に贈与をしており、父親2分の1、Hさんと姉が4分の1という割合で共有しています。母親が数年前に亡くなったため、父親はクリニックを閉鎖して、一人暮らしをされてきました。父親は90代になられていましたが、自宅でひとり暮らしができていましたので、まだお元気でしたが、脳梗塞を起こして亡くなってしまったといいます。
■遺言書で父親の持ち分は長男へ
父親が遺言書を作る際、自宅は長男のHさんにという希望で、そのような内容で作成されました。結果、父親が亡くなったことにより、実家の土地はHさんが4分の3、姉が4分の1の共有となりました。
Hさんは実家をはなれて金融機関に勤めており、いまから実家に戻って住む選択肢はありません。実家から30分程度のところに家を購入して妻子と暮らしています。
姉も結婚を機に実家を離れましたので、名義だけがあるという状況です。
父親がクリニックを運営しているときには、当然父親が一括して固定資産税を払ってきました。
■共有の実家をこれからどうする?
父親が亡くなり、母親も以前に亡くなっていますので、実家は空き家となりました。Hさんも、姉も、現在の住まいがあり、実家に戻って住む選択肢ありません。このまま共有して空き家を維持するのも得策ではないため、どうすればいいか、相談がありました。
実家の土地の面積は160㎡、路線価は30万円、相続評価は4800万円となりました。これを持ち分で按分すると4分の3のHさんは3600万円、4分の1の姉は1200万円となります。
この共有の実家をどうすればいいかというのもアドバイスをしてもらいたいといいます。
■共有のまま維持できるか?
現在、お父さんが亡くなった時点で実家は空き家となっています。Hさんも姉も、すでに実家を離れて自宅を所有していますので、今後、実家に戻って生活することはないといいます。
そしてHさんも、姉も医療関係者ではないため、そもそもクリニックを継ぐことはないということで、実家をもとのようにクリニックとして利用する選択肢はありません。
そうなると共有している実家の利用についてはこれから考えるという程度で、何も決まっていないというところだといいます。
かりにリフォームして賃貸するとか、建て直して賃貸するなどの方法で維持する場合、共有のままでは地代の問題や管理や修繕費など賃貸事業には決断しないといけないことも多く、トラブルのもとになりかねません。
またいずれかが亡くなるとその配偶者、子どもが相続するので、さらに人間関係が難しくなります。
よってきょうだいの共有は避けたほうがいいとアドバイスをしています。
■共有不動産の解消の仕方は4つ
不動産の共有を解消する方法は4つあります。その4つとは分筆、贈与、買取、売買です。それぞれの内容を説明しましょう。
1.分筆して土地を持ち分に応じて分ける
ひとつの土地をふたりで共有している状況を解消する方法として、所有する割合に応じて土地自体を分けてしまうことができます。いままでは自宅の建物が建っていますので一体として使ってきましたが、それをHさんが所有する120㎡と、姉が所有する40㎡に分けるようにします。建物は解体して、土地をそれぞれの面積で分けますので、土地家屋調査士に依頼して、測量して、分筆登記をします。
現実的には、間口10m、奥行き16mという地形ですので、手前と奥の敷地に分けるとなると使いにくい土地となります。また姉の持ち分40㎡では狭小住宅となります。
よって分筆という方法はありますが、現実的ではないと言えるでしょう。
2.姉が自分の持ち分を弟に贈与する
分筆で検証したように実家の土地を分けることは現実的ではないとすると、次に検討できるのは、1人の名義にして現状のように、一体で利用することです。その方法の1つが贈与です。持ち分が多いHさんの名義にするならば、姉が4分の1をHさんに贈与する方法があります。
姉の所有する土地の評価は1200万円ですので、姉からHさんに贈与をしてもらうようにすれば、名義はHさんひとりになります。贈与を受けた場合は翌年、贈与税を支払うことになり、1200万円の贈与税は非課税110万円を引いた1090万円に課税されます。
贈与税の計算は下記の通り
1090万円×45%-175万円=315.5万円
3.姉の持ち分をHさんが土地代金を払い買取る
贈与は姉が無償でHさんに土地を渡すことで、姉には何も残らないため、不公平感があります。そこで、Hさんが姉の持ち分4分の1を、相続評価1200万円で買い取ることが次の方法になります。
Hさんは自己資金などで姉に1200万円払います。姉は土地を売却したことで、翌年、申告をして、譲渡税を払います。譲渡税の計算は下記のとおりです。
1200万円-原価【5%】60万円=1140万円×20.315%(国税・住民税)=231万円
納税後の手取り額969万円
共有者の持ち分を買い取るときの価格は、路線価を基準にすることが基本になりますが、姉が流通している時価による価格を希望する場合は、時価を選択する必要も出てくるかもしれません。両者で話し合い、決めることになりますが、相続評価は時価の8割程度とされており、その価格では不満となれば、周辺の取引事例を参考にして、価格を決めることになります。
4.一緒に第三者に売却して持ち分で分ける
共有者間の買取は、価格を決めるにあたり、感情的な行き違いを生じることにもなりかねず、不満が残るということもあり得ます。そうした事態を避けるためにも、共有者が合意をして、一緒に第三者に売却するという方法もあります。そうすることにより、感情的な不満は残りませんので、持ち分により、分けることで、円満に共有を解消できる方法となります。
さらに、路線価価格よりも高く売れるエリアもありますので、得策だとも言えます。
たとえば、相続評価=路線価では実家の土地の全体評価は4800万円ですが、売却すれば相続評価以上になることがあります。また一緒に売却することで自分たちのお金を使うことなく、売買代金で譲渡税を支払うことができます。売買代金は持ち分の割合により按分しますので、Hさんが4分の3、姉が4分の1で分ける形です。
かりに7000万円で売却できたとして、Hさんは5250万円、姉は1750万円となります。仲介手数料や測量、片付け費用などの経費もその割合で按分して負担します。
■まとめ どの方法を選択するか?
以上のように共有を解消するには、分筆、贈与、買取、売買という選択肢がある中、どれを選ぶかは姉弟で話し合って決めていく必要があります。共有ではなく、どちらがの名義にするか、売ってしまうかの二択になります。その際の参考価格は夢相続で提示して、説明していますので、具体的な相談ができるとHさんは話をおられます。どの方法だとしても夢相続で次のサポートをしていく予定です。
最初のご相談は無料です。
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