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相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
家族旅行も節税対策!残す・貯めるだけでなく消費も効果的!
■喜寿77歳になったのでいよいよ相続の準備を
Tさんは77歳。まだコンサルタントとしてマイペースに仕事をしています。妻もほどなく70歳。夫婦で相続の年代になったことから、相続の用意をしておきたいと相談に来られました。
Tさんの相続人は妻の他に、息子が3人。長男家族と同居をしています。次男、三男は近くにマンションを買って生活していますが、2人とも近いので、なにかと集まる家族だと言います。
これから取り組むことを提案してもらいたいということでしたので、「相続プラン」の委託を受けて、課題を整理し、課題解決のためのプラン作りをしました。
■相続対策は財産の確認から
対策の入り口は相続人と財産の確認です。相続人は妻と3人の息子たちですので、基礎控除は5400万円です。つぎに財産を確認して、評価します。
Tさんの自宅敷地は150坪あり、自宅は50坪ですが、隣接する土地100坪には以前、父親が経営する工場があり、祖父の代から父親と叔父たちで板金加工をしていました。親族経営で安定していましたが、長男の子どもであるTさんが家業を継ぐことはなく、叔父の子どもも娘だけで嫁いで離れてしまったと言うことがあり、父親の代で廃業し、アパートに建て替えたのでした。
このようにほとんどが父親から相続した財産で、自宅は4000万円、敷地内にあるアパートは7000万円という評価です。預金5000万円、株は1億5000万円。相続税を計算すると5580万円となりました。
■妻にも財産がある場合は
配偶者には特例があり、財産の半分、あるいは1億6000万円までは相続税の納税はなして相続できます。これを1次相続と言いますが、二次相続と言われる次の配偶者が亡くなった時の相続税は1次相続の財産と配偶者独自の財産を合わせた財産に対して相続税が課税されます。さらに二次相続では相続人が1人減っていますので、基礎控除も少なくなるため、1次相続より相続税が増えることがあります。
よって配偶者独自の財産が多い場合は、1次相続での特例を利用せずに子どもたちが相続して納税したほうがいいこともありますので、見極めが必要です。
Tさんの妻は自分が働いて貯めてきた預金と自分の親から相続した預金や株で8000万円の金融資産があるといいます。
こうした場合、1次相続で妻が財産の半分を相続すると二次相続も含めた相続税の合計が多くなるため、妻が相続しないほうが相続税は少なくて済むのです。
■節税対策は金融資産を賃貸不動産に
Tさんの財産は金融資産が多いため、評価を下げる目的で、株の一部を解約し、賃貸不動産を購入することをお勧めしました。まずは3000万円程度の区分マンションですでに賃貸しているオーナーチェンジ物件を少しずつ買っていくことをご提案し、2部屋の購入が実現、相続税は2割程度下がりました。株を全部解約して、賃貸不動産にし、小規模宅地等の特例を適用するようにすれば相続税は半分程度に下げることができます。
■贈与するなら相続人以外にも
現金を贈与することも節税対策になります。子どもたちが自宅を購入する時には住宅取得資金贈与をしているのですが、まだ金融資産に余裕があり、毎月家賃が入ってきますので、贈与していくことのお勧めしています。
これからの贈与は相続になった時は7年間遡って持ち戻しすることになりますので、早めに贈与をしていく必要があります。
また、Tさんの子どもは3人ですが、長男の子どもが3人、次男の子どもが2人で三男の子どもが1人と孫は6人います。それぞれの配偶者も合わせると子ども家族は12人ですが、相続人の長男、次男、三男を除く配偶者と孫6人に贈与した財産は相続の持ち戻しにはなりませんので、効果的です。
■消費も節税になる
Tさんの場合、もともとアパート収入があるのですが、さらな金融資産を賃貸不動産にすると家賃収入が入り、現金は増えていきます。そのまま使わずに貯めておくと財産が増えて、相続税も増えてしまう結果になりかねません。
よって必要なものには適度に使う=消費も節税対策になります。
Tさんご夫婦にはそうしたことも説明して、ご提案しました。ちょうどTさんは喜寿を迎える年だということで、喜寿のお祝いとして子ども家族と一緒にハワイ旅行をすることを計画されました。総勢14人で1週間のハワイ旅行ができ、とても有意義でさらに家族の仲が深まったと話をされていました。旅行中に相続対策に取り組んでいることも話をして理解を得たと言うことです。
もう少し節税対策が進んでから分割案を決めて遺言書を作成される予定です。
またTさんだけでなく、妻も金融資産が多いため、節税になる不動産対策をご提案しており、適度な賃貸物件が見つかり次第、購入すると言われています。
Tさんのように夫婦、家族で相続対策を進めることが理想で円満の秘訣です。財産は貯めておくだけでなく、旅行のように「消費」することも効果的な対策になります。
■相続対策は相続プランをつくることから
Tさんご夫婦から委託を受けた「相続プラン」がどのように内容化を説明しましょう。
1.相続人の確認・・・基礎控除がわかる
最初に、相続人を確認し、家系図を作成します。相続人の確認をすることで、「相続税の基礎控除」が算出できます。基礎控除の確認は「相続プラン」の提案の前提条件となります。「相続税の基礎控除」は3000万円で相続人1人につき600万円加算しますので2人なら4200万円となります。財産の総額が「基礎控除」を超える場合と超えない場合とでは対策の内容は大きく変わります。
2.財産の確認、現地調査、評価
不動産は、名寄せ帳、固定遺産税納税通知、固定資産税評価証明書などの書類で土地と建物の所在地や面積などを確認します。共有者がある場合は、登記簿謄本で共有の割合を確認するようにします。預金は通帳の残高を確認します。株式は証券会社の預かり証、保険は保険証券で確認するようにします。同族会社の株や法人への貸付金がある場合も評価をして財産に加えます。アパートや住宅のローンなどの負債は金融機関の返済表などの明細で確認します。
不動産、動産、負債を確認したあと、財産評価をします。不動産については面積や利用状況により評価が変わるため、必ず現地調査をし、簡易測量をし、利用状況を確認します。
プラス財産からマイナス財産を引き、基礎控除を引いた課税財産を算出して、相続税の予想額を計算します。さらに不動産の共有、担保設定、連帯保証など、課題を整理します。
3.経済面の対策1 分割金、納税資金を確保する◆
相続税の予想額を出し、財産分与を考えると相続時にどれくらいの現金が必要となるかは、ある程度想定できます。現在の財産の中で、すでにそれに見合う現金や有価証券などの動産がある場合は大きな不安はないと言えます。しかし、不動産はあるが必要とされる現金がないこともあるでしょう。それでも財産分与の分割金や納税資金は必要ですから、そのための用意は必要です。相続になってもお金は急に増やせないということです。
こうした場合の対策を考えた場合、相続税の予想額や財産分与を目安とした生命保険に加入しておき、分割金・納税資金を準備することもできます。あるいは、売却に時間がかかることもあるので不動産は早めに売却をして換金しておくことも方法の一つです。相続になったら分けられる形に換えておくことも対策となります。
また、まとまったお金がない、作れない場合でも、賃貸事業などの安定収入があれば、分割金や納税に充てることができるといえます。ただし、収益が安定した賃貸事業にしておくことが大切です。スタートするときも当然ながら、毎年、収益のバランスを確認して負担がない優良な賃貸事業にしておくようにすることで相続のときにもプラス財産になります。
3.経済面の対策2 積極的な節税対策をする
相続税がかかることがわかれば、次は節税対策をしたいということになります。節税対策の方法はいくつもありますが、個々の事情に合わせたオーダーメードの提案が必要になります。主な生前対策となるのは「不動産」と「現金」を活用した対策であり、「財産を減らす対策」の贈与や「評価を下げる対策」の購入、資産組み替え、土地活用などの不動産対策だと言えます。
【贈与】・配偶者の特例を利用する・・・自宅の贈与は2110万円まで無税
【贈与】・現金、不動産を贈与する・・・生前に財産の前渡しをする
【建物】・現金を建物に替える・・・建物評価は半分以下になる
【購入】・現金で不動産を購入する・・・不動産で評価を下げる
【組替】土地を売却、賃貸不動産に買い替える・・・立地や形を変えて事業を継続する
【活用】土地に賃貸住宅を建てて賃貸事業をする・・・確実に節税できる
【法人】賃貸経営の会社をつくる・・・現金の資産増を回避する
相続人が増えれば基礎控除が増えるので、養子縁組で相続人を増やすことも対策の一つです。孫や嫁と養子縁組をすることが一般的で節税の価値は出ますが、あとで相続人間の感情的な問題にもなるため、事前に同意を得ておくようにするなど配慮をすることが必要でしょう。
4.感情面の対策 分け方を考える、分けられるようにする◆
財産の多い少ないにかかわらず、相続になれば財産継承の手続きをしなければなりません。ところが相続になっても遺産分割の話し合いがつかないばかりに、実質的な財産分与ができず、何年も不動産の名義が亡くなった方のままになっていて困っているというご相談が絶えません。遺言がないため相続人で分割協議をしなければいけないところ諸事情で頓挫しているようです。
事情は個々に違いますが、いくつかの共通項をまとめると、複数の相続人がいるのに不動産は自宅1ヶ所で分けられない場合や賃貸物件で収益があるものと自宅のように収益がないもので価値が違うため分けられないことが多いようです。不動産を共有して決めてしまうこともよくあるケースですが、将来的に問題に発展することもあり、お勧めではないことがあります。
不動産1ヶ所では物理的に分けられないことの方が多いため、相続で分けられるようにしておくことが大切です。たとえば、特定の相続人に不動産を相続せるならば、他の相続人にはそれに見合う動産を用意することでバランスを取ります。中には遺言で不動産を売却して分けるようにとしている方もあります。不動産の数がある場合でも誰がどこを相続するかを指定しておかないと話し合いがつかないこともあります。節税するよりも分けられることが大事だといえますので、やはり用意が必要です。もめてしまえば節税もできないことになります。
4.感情面の対策 分け方を決めて遺言書をつくる◆
次の世代に継承してもらうための分け方を指定しておくことは大切です。意思表示もなく、あとの者がなんとかするだろうというのでは、うまくいくはずがありません。決めたあとは意思を伝えておかなければ、残された人に迷いや欲を持たせるものです。財産分与の具体的な方法を決めていないばかりに形として残った不動産や動産を巡り親族がもめるとすれば、相続の価値は半減することになります。相続人が迷わず、争わないための羅針盤になる「遺言書」を作成し、自分の意思を明確にして残しておくことが必要で、公正証書遺言が安心です。
遺言書は具体的な財産分与だけでなく、感謝や気持ちを綴ることもできます。残された人達を思いやる愛情にあふれたものであれば、感情的な部分で救われ、生きる勇気を与えられるはずです。意思を残すことで、家族に有形、無形の財産を残せば、相続の価値があるといえます。
相続の手続きは相続人全員で進めますが、窓口となる代表者は1人の方が何事もスムーズにいきます。その代表者を選任しておくことも大切です。相続ではその家庭の事情があからさまに表に出てきますので、財産のことで争わないような家庭を作っておく、日頃から物よりも大事なものがあることを教えておくことが理想ですが、これが簡単なことなら誰も苦労はしません。相続人は時を経て、次は自分の相続人へと継承させることになります。親の代で揉めたところはまた次もとなりかねません。マイナスのDNAは残さないことも財産になります。
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