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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

家賃収入or保険料3割負担? 80代、母親の老後の選択肢は?

 

■事例1 Тさんの母親の場合

 

・母親の財産はアパート

Тさん(60代男性)から母親(80代)のことで相談がありました。母親は自分の親から相続したアパートを所有しており、毎月24万円の家賃収入が入ります。2DK4世です。築年数は30年以上経過していて、古いのですが、最寄り駅から徒歩10分程度の閑静な住宅街にあり、満室稼働しています。

母親の相続人は父親と姉とТさんの3人です。基礎控除は4800万円です。アパートの評価は土地2630万円、建物120万円、預金2000万円、合計4750万円ですので、ぎりぎり相続税の申告は不要です。

相続税の心配はないと確認できたのですが、Тさんの相談は次のことでした。

 

・母親の保険料は3割負担

母親はアパート収入があるばかりに、父親の扶養にはなっておらず、毎年確定申告をしていて、保険料が3割負担だといいます。この保険料がけっこう負担になるというのです。

そこでアパートの建物のみ母親からТさんに贈与してもらえば、母親の家賃収入はなくなるので、保険料も安くなるとアドバイスしました。アパートの土地が貸家建付地でなくなるため、評価は500万円以上増えますが、これから預金も減る傾向にあるため、相続税の基礎控除の範囲内になりそうだと。Тさんは母親から建物を贈与してもらう方向で母親と相談するということです。


■事例2 Kさんの母親の場合

 

・母親の相続時に相続税がかかる

Kさん(50代女性)が相談がありました。Kさんご家族とは25年ほど前からのお付き合いです。土地持ちの家系で跡取りの父親は多くの土地を相続しましたので、早くから賃貸業を始めていて、貸店舗などを建てていました。

夢相続で節税プランをご提案し、公正証書遺言も作成されましたので、父親が亡くなった15年前には遺言書のとおりに母親(80代)が半分相続し、納税も無理なくできてスムーズな相続ができたのです。

 

・母親の二次相続対策

Kさんの母親の現在の財産は1億4000万円程。相続人はKさんと妹の2人。基礎控除は4200万円ですので、はるかに超える財産で、相続税は1560万円かかると試算されました。

父親と同様に、母親が80代半ばになった昨年、公正証書遺言を作成するということで夢相続が証人となり、公正証書遺言を作成されています。Kさんと妹の間はよく、もう母親の財産の分け方も決まっているので、もめる要素はありません。

それでも心配なのは、相続税なのです。父親が亡くなった時もKさんと妹は土地の一部を売却して納税するようにしました。

けれども今度は自宅や貸店舗など、維持しないといけない不動産ばかりなので、不動産を売らずに相続税の納税を済ませたいと考えています。

 

・貸店舗を贈与してもらう

Kさんの悩みは相続税よりも母親の保険料のことだといいます。

「母親に収入がある為、介護などの保険料その他が3割と高いです。
 生前贈与をすることによって、母が年金収入のみになると保険料などが1割負担になります。 しかし、私に収入が入ることにより、私自身の税金がアップするなど不安もあります。 建物も古く将来建て替えの可能性もあり、その時は私の名義にしておいた方が何かと動きやすいのではないかと思っています。何か得策があれば教えて頂きたいです」

 

・贈与のメリット、デメリット
貸店舗の建物の贈与を受けた場合のメリット、デメリットをあげてKさんに説明したところ、Kさんからいくつか質問もありました。

お母さん 保険料が下がり、収入はKさんへ・・・保険料も、相続財産の増加も防げる※土地の評価は少し上がりますが、前記の効果の方がメリット大です

Kさん 扶養をはずれるので自分で保険料負担、家賃収入がはいるので有効に使える・・・お母さんを扶養にすれば所得税は減らせる

今年贈与を受けると、来年、贈与税の確定申告をする必要があり、贈与税がかかる。

お母さんの保険料の支払いが多いと1割に下げるメリットはあり、但し、土地が貸家建付け地でなくなり、相続税は増えるが、現金の増加を防げるので、節税効果となり、結果的には、建物贈与を受けるメリットはあるといえます。

 

Kさんからの質問

土地の評価が少し上がるとはどのくらい上がるのでしょうか?⇒80万円程度相続税が増えます

土地が貸家建付地でなくなるのは何故でしょうか?⇒自分の建物でないと更地評価になります

相続税が上がるのはなぜなのでしょうか?⇒更地評価になると評価が増えるため、相続税も増えます。ただし、建物評価は減らせます

母を扶養にする場合、どんな手続きが必要なのでしょうか?⇒申請すればいいかと思いますが、役所の窓口でご確認ください

扶養になった事で、母は何か変わる事はあるのでしょうか?⇒扶養している人の所得税が減ります お母さんの保険料は払わなくてもよくなります

 

・総合的な判断

母親の二次相続でははまだ相続税がかかりますので、家賃の受け取りをKさんにして母親のお金が増えないようにするのは得策かと言えるとアドバイスしており、贈与を受ける方向で契約書や登記関係の書類の準備をしているところです。また建物は240万円ですので、来年、贈与の申告が必要になり、多少の贈与税がかかることもお伝えしています。夢相続は贈与のコーディネートを担当、司法書士、税理士の協力のもとに進めています。


土地は親名義のまま、建物を子どもに贈与した場合の相続時のメリット・デメリットの参考

 

①メリット

  1. 相続財産(親の名義)の評価額を減らせる
  • 建物の評価額を相続財産から切り離すことができるため、親の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できる可能性がある。
  • ただし、土地は親の名義のままなので、土地の評価額はそのまま相続財産に含まれる。
  1. 建物の贈与により、家賃収入を子どもに移せる
  • 親がアパート経営をしている場合、建物を子どもに贈与すると、家賃収入が子どもに移るため、親の所得を減らし、相続税対策や健康保険料の軽減につながる。
  • ただし、土地の使用料(借地権)が発生する場合、親に一部の所得が残る可能性がある(後述)。
  1. 子どもに生前贈与することで相続税対策になる
  • 相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税)を使えば、贈与時に大きな税負担なく子どもに財産を移転できる。
  • 将来、相続が発生したときに贈与された建物の評価額は相続税の計算に含まれるが、相続時に値上がりしていても贈与時の評価額で計算できるため、資産の増加リスクを抑えられる。

 

② デメリット

  1. 土地と建物の所有者が異なると、将来の売却や相続でトラブルになりやすい
  • 親が亡くなった後、土地の相続人が複数いると、建物の所有者である子どもと土地の所有者(他の相続人)で意見が分かれ、売却や活用が難しくなることがある。
  • 土地は相続で他の兄弟が取得、建物はすでに贈与されている子どものもの」という状況になると、土地の賃貸借契約や売却の交渉が複雑になる。
  1. 土地の使用料(地代)をめぐる税務リスク
  • 土地は親名義のままで、建物だけが子ども名義になると、税務上「親が子どもに無償で土地を貸している」とみなされる可能性がある。
  • 「借地権の設定があった」とみなされると、贈与税が発生するリスクがある
  • これを回避するため、親に対して子どもが適正な地代を支払う必要があるが、実際に地代を払うと子どもに経済的負担がかかる。
  1. 贈与税の負担が発生する可能性がある
  • 贈与税の基礎控除(110万円)を超える価値の建物を贈与すると、贈与税の負担が発生する。
  • 相続時精算課税制度を使えば贈与税は発生しないが、将来の相続税の計算時に贈与された建物の価値が相続財産に加算されるため、税負担の先送りになる可能性もある。
  1. 建物の贈与後、土地の評価額が高くなる可能性がある
  • 一般的に「建物がある土地」は、更地よりも相続税評価額が下がる(貸家建付地評価などの特例)。
  • しかし、建物が子ども名義になると、親の相続時には土地のみが評価対象となり、場合によっては相続税の軽減効果が薄れる可能性がある。

 

相続時の対応策(デメリットを回避する方法)

  1. 将来的に土地も子どもに贈与する or 相続で子どもが土地を取得するよう遺言を残す
  • 親の土地を相続するのが建物の所有者(子ども)になるように、遺言書で明確にしておくと、相続時のトラブルを防げる。
  • 土地の評価が高くなる場合は、生前に**土地の一部を贈与しておく(税負担に注意)**のも方法。
  1. 子どもが土地を親から借りている形を明確にし、適正な地代を支払う
  • 税務上のリスクを避けるために、土地を「借地」として扱い、子どもが親に地代を支払う形を取ると、贈与税のリスクを低減できる。
  • ただし、地代を払うと子どもの経済負担が増えるため、慎重に検討が必要。
  1. 「相続時精算課税制度」や「住宅取得資金贈与の特例」などを活用する
  • **相続時精算課税制度(2,500万円まで贈与税なし)**を使えば、将来の相続時に建物を相続財産として計算しつつ、今の時点で税負担なしで移転できる。
  • 住宅取得資金贈与の特例が適用できる場合は、贈与税の負担を減らせる可能性がある。

 

④ まとめ(メリット・デメリットを整理)

項目

メリット

デメリット

相続税対策

建物の評価分を相続財産から除外できる

土地の評価額が逆に上がる可能性

所得税・家賃収入

家賃収入が子どもに移り、親の税負担を減らせる

地代を支払わないと贈与とみなされるリスク

税務リスク

贈与時に相続税対策ができる

贈与税がかかる可能性

売却・相続時のトラブル

事前に財産分けを進められる

土地と建物の所有者が分かれることでトラブルになりやすい

 

■母親の健康保険料の負担を減らすための方法の検討項目

 

  1. 国民健康保険料の軽減措置を確認

アパート収入がある場合でも、収入の種類によっては「所得割」の軽減が適用される可能性があります。お住まいの自治体の国民健康保険課で確認してください。

  1. 社会保険(被扶養者)への加入を検討

もしご家族(子どもなど)が**会社員(社会保険加入者)**であれば、被扶養者として健康保険に加入できる可能性があります。
条件:

  • 年間の合計所得が180万円以下(一般的な目安)
  • 同居が条件になることもあり

この場合、健康保険料の支払いはなくなり、医療費の自己負担も1割~2割に軽減される可能性があります。

  1. 後期高齢者医療制度への移行(75歳以上の場合)

すでに後期高齢者医療制度に加入している場合、所得に応じた軽減措置が適用されることがあります。自治体に確認すると、減額できる可能性があります。

  1. 所得を抑える工夫(確定申告で控除を活用)

健康保険料の負担は所得(課税所得)によって決まるため、確定申告で以下の控除を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。

  • 青色申告特別控除(最大65万円)
  • 経費の適切な計上(修繕費、管理費、減価償却費など)
  • 基礎控除(48万円)や扶養控除の適用

課税所得を減らせば、健康保険料が下がることがあります。税理士に相談するのも良いでしょう。

  1. 医療費控除の活用

年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超える場合、確定申告で控除を受けられます。還付金が発生すれば、実質的な負担軽減になります。

  1. 住民税の非課税世帯に該当するか確認

住民税が非課税になると、健康保険料の軽減が受けられる可能性があります。自治体の担当窓口で非課税基準を確認してください。

 

最適な方法を選ぶための行動リスト

  1. お住まいの自治体の健康保険課で「軽減措置の適用可否」を相談
  2. 社会保険の被扶養者になれるか家族の会社に確認
  3. 確定申告で控除を最大限活用し、課税所得を抑える
  4. 医療費控除や住民税の軽減制度を活用する
  5.  

具体的な制度は自治体によって異なるため、市区町村の窓口で相談するとより適切なアドバイスが得られます。

 

最初のご相談は無料です。
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