事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
権利譲渡も選択肢。合意があれば法定割合でなくてよい。
◇叔父さんが亡くなった
Kさん(60代・男性)が書籍「いちばんわかりやすい相続・贈与の本」を読んだと相談にこられました。
相続の手続きに行き詰まっているといいます。
Kさんが言われるには、昨年、叔父さんが亡くなったが、配偶者が亡くなっていて、
子供がいない方だったと。そうなると兄弟姉妹が相続人になります。
さらに亡父の父親は再婚しており、先妻の子供が6人、後妻の子供が8人。
亡父や亡くなった叔父さんは後妻の子供になります。
Kさんの父親をはじめとしてほとんどが亡くなっていて、代襲相続人が23人、
じつのきょうだいで残るは一番下の叔母さんだけで、相続人は24人ということです。
◇行政書士に戸籍収集を依頼
亡くなった叔父さんに一番近い立場は、やはり、妹である叔母さんで、
つぎに叔父さんの老後のサポートをしてきたのがKさんで、貢献したのは2人でした。
叔父さんは、自分の財産は妹に渡すと、日ごろ口頭で話をしていたといいますが、
遺言書にはしなかったようで、結果、遺産分割協議が必要になりました。
まずは相続人の確定と所在確認ということで、叔母さんの知り合いからの紹介として
行政書士に依頼をしました。
◇アドバイスは何もない
行政書士は相続人の戸籍謄本と住民票を取り寄せてくれましたので、まったく
お付き合いのない異母きょうだいの住所地は確認することができました。
Kさんは自分で家系図を作り、電話番号などの連絡先も徐々に把握することが
できてきましたが、行政書士はそうしたこともしてくれません。
本を何冊も読んだり、聞いたりして、各相続人の法定割合を自分で調べたりして
家系図と相続割合などの書類は、全てKさんが自分で作ったといいます。
◇法定割合では違和感
叔父さんの財産は自宅と金融資産で約1億円ありますので、法定割合で分けるとなると
まったく会ったことのない先妻の子の代襲相続人たちにも一律、現金を渡すことになります。
しかし、叔父さんは財産は叔母さんに渡すと言っており、
貢献したのは叔母さんとKさんですので、ここで違和感が出てきたのです。
行政書士にきいてもアドバイスはなく、相続に慣れていないのか、
遺産分割協議書を作る力量もないように思えます。
Kさんはここにきていよいよ行き詰ってしまい、分け方はどのように考えて、
どう進めていけばいいのか、相談に来られたのです。
◇合意があれば法定割合でなくてもよい
遺産分割は法定割合を目安にしますが、全員の合意があれば、どのように決めても
いいので、貢献度の高い叔母さんを中心にして、代襲相続人は叔母さんに自分の
権利を譲渡する手続きも方法の1つで、今回はそうしたほうが現実的だとアドバイス
しました。叔母さんから贈与税がかからない範囲の現金を渡すことで理解を得る方法です。
Kさんもそうした方法が一番しっくりくるということで、叔母さんと相談するということです。
Kさんの貢献は叔母さんから別途、贈与するなり、
分けて考えることが混乱しない方法だとアドバイスしました。
相続コーディネート実務士から
・法定割合でなくても、合意があれば、遺産分割は認められます。
・遺産分割協議書でなくても、権利を譲渡する「譲渡証書」の手続きでも構いません。
この場合はひとりずつ書類を作成すればいいので、相続人が大勢の場合には適していると言えます。