事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
最後まで平行線。お金の問題じゃない!遺産分割がまとまらずに15年。
■父親は平成15年に亡くなった
Sさん(60代・女性)の父親は平成21年に亡くなり、相続の手続きが必要になりました。相続人は母親と50代の弟の3人です。父親の財産は35坪の自宅の不動産程度で、しかも、自宅の土地、建物は共働きだった母親と2分の1ずつの共有名義となっていました。現在の自宅の土地、建物の2分の1の相続評価は3000万円ですので、預金を足しても、当時の相続税の基礎控除8000万円以内
の財産で、相続税の申告は不要でした。
■父親の相続の遺産分割が行き違いの発端
父親は平成21年に亡くなりましたが、15年経っても遺産分割協議ができていません。ことの発端は四十九日の法要の席だったといいます。
法要が終わり、母親とSさん夫婦、弟夫婦は実家に戻ったのですが、その席で弟からこんな風に言われたのです。
「実家は自分が相続する。お母さんと姉さんは現金でいいな?」
「書類も作ってあって、お母さんの印はもらったから、姉さんもここに実印押してくれたらいいので」と。母親からも何も聞いていなかったSさんは弟が、さも当然のように、「実家を相続する」ということが許せなかったのです。
弟は会社員で、結婚するまでは実家で同居していましたが、結婚してからは実家話離れていますし、子どもが生まれてからは自分の家も購入していますので、実家を相続するのは納得しがたいと、Sさんは印を押さなかったのです。これが気に入らないとなり、弟はこれ以来、Sさん夫婦と話しようとせず、ずっと避けている状況だといいます。
母親は長男の弟がかわいいようで、弟がいうとおりに家は弟名義にすればいいのでは言っていて、結果、父親名義のまま15年が過ぎたのでした。
■いよいよ母親が亡くなり、相続手続きをしなくては
昨年、一人暮らしをしてきた母親が亡くなりました。その間、Sさんは実家に通って母親の介護をしてきましたが、3年前ころからいよいよ一人暮らしが大変になり、母親は介護施設に入所しました。実家は空き家となり、預金は弟が管理すると通帳を全部、持って行ってしまいました。
Sさんはさらに弟に対して不信感が募り、許せない気持ちのまま、
父親と同様で、母親も遺言書がないため、いまとなってはSさんと弟の2人で父親と母親の財産について遺産分割協議をしなければなりません。
父親の財産はすでに自宅だけ、母親は自宅と200万円程度の預金で、母親の財産についても基礎控除4200万円以内ですので、相続税の申告は不要です。
2人とも同居しておらず、同等の立場ということで、財産は等分に2分の1ずつ分けるというのがSさんの希望です。実家も売却して2人で分けるしかありません。
Sさんは弟とは直に話ができないということで、弟との連絡役として売却等の話をまとめてもらいたいと相談に来られました。
■調停はしたくないが、、歩み寄れない。お金の問題じゃない!
Sさんも、弟も「財産は等分に分けること」、「実家は売却すること」については、異論はないといいますので、当事者間で事務的に進められそうなものですが、しかし、それでは進まないことがわかっています。15年の間も互いに譲らず、平行線できた姉弟ですので、「姉のというとおりでは気に入らない」「弟のいうとおりではおもしろくない」という感情があり、
いまさらその距離が縮まることはないと言えます。
Sさんは「お金の問題じゃない!15年前の遺産分割協議書のことから、弟に詫びさせたい」という気持ちが根底にあり、何事も疑心暗鬼となって、決断できないようです。
しかし、空家の実家をそのまま維持することはできないため、当社がSさんの窓口となって売却を進めていくよう依頼を受けました。
弟は自分で探した弁護士が間に入って連絡窓口になるということで、ようやく売却が進みだしたのです。
■買主が決まってから、まだ、半年かかった、、、
Sさんの実家は閑静な住宅街にあり、人気があるエリアですので、路線価評価6000万円の1.5倍の価格で購入申し込みがは入り、売却することは難しくはないと判断できましたが、それからもSさんと弟の足並みが揃わず、購入申し込みがあればすぐに契約するのが本来のところ、それから半年は膠着状態となり、進みませんでした。
売買の価格はどんどん動いているため、購入希望の法人も待ちきれないほどでしたが、
なんとか、遺産分割協議書の作成、相続登記が終わり、測量を開始、不動産売買契約をすることができたのです。
しかし、一同に集まって調印はかなわず、順番に署名、押印し、印紙もそれぞれに貼り、各自、原本を保有する形としました。
どこまでも会わず、一緒にせずということで、残念ながら、長年の確執は解消されないままとなりました。
それでもようやく父親が亡くなったときから15年間かかえてきたことが解消することなので、ひとつハードルは超えたと言えます。
Sさん夫婦には3人の子どもがあり、次の自分たちの相続には弟は関係しないため、いまから自分たちの子どもがもめないための対策はしたいとSさんはしみじみ話をされていました。
■自宅がある人の対策は遺言書が必須
誰しも実家には住んでいた経験があるため思い入れがあります。大人になって家を離れた人でも多くは「実家を残したい」と言われます。ずっと住んでいる親世代はさらにその思いが強く、「家を残して、子どもや孫世代に継いでもらいたい」と言われます。
けれども相続人が複数の場合、遺産分割協議はなかなか難題です。家が財産の大きな割合を占めていればなおさら、分けにくく、不公平感があるとなります。
そこで、自宅がある人で、これからの相続を考えるのであれば、下記のようなことがポイントになります。
〖生前〗
- 遺言書で家を相続する人を決めておく
- 遺言書の内容を相続人全員に知らせて、自分の意思を伝えておく
- 不公正感のない分割案を作る
- 不動産と金融資産のバランスが取る
- バランスが取れていない場合は生前に自宅を売却して分けやすくしておく
〖相続時〗
- 相続人全員で情報共有、コミュニケーションを取る
- できるだけ公平な分割にする
- 相続の専門家のアドバイスを受け、依頼する
- 相続登記が義務化されたことを説明、理解してもらう。
最初のご相談は無料です。
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