事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
最後まで自宅は理想論。一人暮らしには適切な見守りが不可欠!
■おひとりさま、一人暮らし
Nさん(80代・女性)と甥のHさん(60代)が2人で相談に来られました。Nさんは誕生日が来ると88歳ということですが、はきはき話されるし、明るく楽しい方です。
Nさんは、3人きょうだいの末っ子。長女がHさんの母親、長男、次女の順です。Hさんの母男はすでに95代。まだ健在ながら自宅での生活はできなくなり、近くの老人ホームに入所しています。
Nさんは大学をでてから仕事が決まり、通いやすいところで一人暮らしを始めました。公務員として安定した職場だったということで、定年まで勤めたと言います。来られた時にはお元気そうに見えたNさんですが、Hさんが言うには3か月前には警察や救急車を呼ぶ事態となり、大変なことがあったといいます。
■待ち合わせに来ない、、警察をよぶことに
Hさんは一人暮らしのNさんの通院に付き添うようにしていました。80代になりひとりで電車やタクシーでの移動に不安があるということで、定期的にNさんのサポートをしています。
3か月前もNさんと携帯で連絡をして待ち合わせ場所を決めて病院に行く約束をしていたのです。待ち合わせ場所にいつもは元気に歩いて来るNさんなのに、待ち合わせ時間になっても現れない。忘れているのかと思い、携帯や家に電話してみるものの電話に出ないのです。
真夏のことなので、暑い中、行き倒れてはいやしないかと心配になり、HさんはNさんの住むマンションまで行き、呼び鈴を押しても、再び電話してみても応答なし。
郵便受けを見ると前日の夕刊がささったまま。HさんはNさんのマンションの鍵を持っていないし、さすがに心配になり、管理人と相談して警察を呼ぶことにしたのです。
■救急隊員がベランダから室内へ
ほどなくパトカー1台と救急車1台が到着。Nさんの部屋はマンションの中層階ということもあり、消防車、梯子車も到着。まわりは騒然とした雰囲気になりました。鍵を壊して入るのかと思いきや、さすが百戦錬磨のプロ、それは最後の手段らしく、先ずは同じ階の住宅を軒並みあたって在宅の家にお願いして中を通らせてもらってベランダの非常隔壁を外しながらベランダ伝いにNさんの部屋のベランダに到達。
すると日頃からの自然志向でエアコンを設置していないNさんの部屋のベランダの掃き出し窓は開いていたのです。
そして、救急隊員は窓際にへたり込んでいたNさんを発見。前日からそこで動けなくなっていたようです。Nさんの意識は混濁していたものの、応答は出来る状態でした。
■まさかの搬送を拒否、説得に1時間、、
救急隊員が声を掛け続けると、ようやくNさんの意識ははっきりして来たものの、まさかのことですが、Nさんが病院には行きたくないとゴネはじめたのです。「こんなことになって恥ずかしい、、」といいます。
救急隊も本人に意識があって搬送を拒否している場合はそれを無視して搬送は出来ないということですが、どうみても衰弱していて、普通ではありません。それからHさんと救急隊員の両方が必死に説得して、1時間近く。ようやくNさんが納得して待機していた救急車で病院に搬送できたのでした。
■一人暮らしにはまわりの適切な見守りが不可欠
この間、警察官、消防隊員、救急隊員合わせて10名が待機。自治体の社会支援の手厚さを実感するとともに、大変な社会資源を浪費してしまったことの申し訳なさを痛感したとHさんは言います。
「住み慣れた場所でいつまでも…」はとても大切で理想的です。けれども、それを実現するためには、普段からの定期連絡や安全確認、いざという時のための鍵の共有、キーボックス活用など、本人を支える家族、縁者、友人等の適切な見守りが不可欠であることを改めて心に刻みましたと話してくださいました。
■もう一人暮らしには戻れない、入院中に老人ホームを手配
Hさんは病院の付き添いや食事をしたりで、毎月のようにNさんに会ってはいましたが、最近はマンションまで行くことはなく、今回のことであらためて室内に入り、愕然としたと言います。
しっかりもののNさんですから、部屋もきれいにしてあるかと思っていたところ、一人暮らしには十分な広さの3DKの室内は、洋服やものであふれていて、いろいろなものが散乱している状態だったのです。米寿を迎えるNさんは片付けや掃除ができないようになっていて、このままマンションにもどって一人暮らしは無理だと判断したのです。
幸い、Hさんの母親が入所している老人ホームに空きがあり、すぐに入れる状況でした。そこで、入院中のNさんに、「姉と同じ老人ホームで楽しく生活できるから」と説得して決断してもらうようにしたのです。
Nさんも今回のことは大いに反省し、無理はできないと思ったようで、退院後は老人ホームに入れて、安心できたということです。
■自宅マンションが空室に
NさんとHさんが相談に来られたのは、空室になったマンションを売却したいと言うことでした。Nさんは40年前に新築の分譲マンションを購入し、ローンの返済も終わっています。
老人ホームに住み替えた後は、また自宅マンションに戻って生活することはできず、おひとりさまの1人暮らしは倒れていても発見されなかったり、助けを呼べなかったりと不安がありますので、売却することが妥当だとアドバイスし、売却の仲介をさせて頂くことにしました。
立地はいいので売らずに賃貸することも選択肢ですが、築40年のため、賃貸するには間取りや設備をそっくり作り変えるフルリフォームが必要で、費用も時間もかかり、賃貸事業も経験がないということで、選択肢は売却としています。
■遺言書も作成しておく
NさんのきょうだいはHさんの母親と長男ですが、長男夫婦には子どもがいません。甥のHさんは一人息子で唯一の次世代なのですが、母親が健在のため、まだNさんの相続人ではありません。
けれども今後、Nさんの老後のサポートができるのはHさんしかないのは明白です。よって財産もHさんに託したいというのがNさんの希望です。
これを実現するには遺言書で遺贈をするとする必要があります。マンションの売却を進めながら、Hさんに財産を遺贈することも盛り込んだ公正証書遺言を作成る準備を進めています。夢相続は公正証書遺言の証人業務を受けてサポートしています。
このように、生前に老人ホームへ住み替えられたタイミングで、マンションの売却と公正証書遺言ができることで安心だとNさんとHさんはほっとしておられました。安心して長生きして頂けるサポートができ、よかったと思う次第です。
■「最後まで自宅で生活」することの課題
独身で一人暮らしを続ける場合、特に「最後まで自宅で生活する」ことにはいくつかの課題があります。相続人がきょうだいの場合、状況が複雑になる可能性もありますので、以下の理由を踏まえ、事前の対策を検討することが重要です。
1.身体的・健康的な問題
・老化による身体能力の低下
年齢を重ねると、階段の昇降や重い荷物の持ち運びが難しくなるほか、転倒やケガのリスクが増大します。
・持病や突発的な病気の可能性
認知症、心筋梗塞、脳卒中など、突然一人での生活が困難になる病気に見舞われる可能性があります。
・緊急時の対応が困難
倒れたり体調を崩したりしても助けを呼べない状況が考えられます。
2.日常生活の維持が困難
・家事や買い物の負担増加
高齢になるにつれ、掃除、料理、洗濯などの日常的な家事が難しくなります。また、買い物や病院への通院も困難になることがあります。
・住宅のメンテナンス不足
一人暮らしの場合、住宅の修繕や清掃が行き届かず、老朽化が進行する可能性があります。
3.精神的な孤独感
・社会的なつながりの減少
高齢になると交友関係が減少し、孤独感やうつ状態に陥るリスクが高まります。
・緊急時の相談相手がいない
悩み事や不安があっても、すぐに相談できる相手がいない場合、精神的負担が大きくなります。
4.財産管理と相続問題
・財産管理の難しさ
高齢になると財産の管理が複雑になり、詐欺被害や誤った管理が起こりやすくなります。
・きょうだいへの相続時のトラブルの可能性
相続人がきょうだいの場合、遺言がないとトラブルが発生しやすいです。また、きょうだいには相続税の基礎控除が少なく、高い相続税が課される場合があります。
5.介護の問題
・自宅での介護は難しい
自宅で介護を受ける場合、設備の整備や介護人材の確保が必要ですが、一人暮らしではこれが難しいことが多いです。
・施設への移行の必要性
最終的には介護施設やサービス付き高齢者住宅など、外部の支援を活用することが現実的な選択肢となります。
対策案
1.財産管理の計画
遺言書や家族信託を作成して財産の管理と相続の準備をしておく。
2.住環境の整備
バリアフリー化や利便性の高い住宅への引越しを検討。
3.早期の介護サービスの活用
デイサービスや訪問介護を早めに取り入れ、生活の補助を確保。
4.きょうだいとの話し合い
遺産分割や介護に関する考え方を共有し、円滑な相続を目指す。
独身で一人暮らしの場合、自分の希望を実現するためにも早めの計画と準備が必要です。
最初のご相談は無料です。
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