事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
母親から兄に自宅兼貸店舗が贈与。家賃は分けてもらいたい!?
◆母親は長男と同居
Mさん(40代・女性)からご相談がありました。Mさんの母親(70代)は自宅で独身の長男(50代)と同居してきました。
自宅は店舗併用住宅となっていて、1階を飲食店に賃貸しており、毎月20万円の家賃が入ります。その家賃は母親の生活費となっています。
母親は同じ市内にもう1つ家を所有しており、貸してきましたが、数年前に入居者が退去したことから、Mさん家族が住むようになりました。実家とは15分程度の距離にあり、母親は二人の孫がかわいいので、行き来できるようにと呼び寄せたのでした。
◆母親の老後の面倒は誰が?
兄は仕事をしており、日中は出掛けてしまい、母親一人で自宅にいる生活ですが、Mさんが様子を見に行くと食事もろくにとってないことも見受けられ、そろそろ認知症の入り口に入っていると思われるといいます。
兄は母親の介護をするタイプではないため、Mさんが自宅に通って母親の面倒を看ることになると思われます。それであれば、Mさん家族が自宅に同居した方が良いと言うと母親も賛成してくれました。
しかし、それを兄に言ったところ、激怒され、自宅は自分が引き受けるという一点張り。Mさんの意見には耳を傾けようとはしませんでした。
◆不動産を子どもに贈与
同居の話し合いがつかず、兄とはぎくしゃくしたままで、しばらく様子をみていたところ、母親からMさんが住む家をMさんに贈与すると言ってきたのです。Mさんは言われるまま、印を押し贈与を受けました。自宅のことを聞いてみるとそちらも兄に贈与したということでした。
驚いて登記簿を取ってみると確かに自宅は兄名義に、Mさんの家も自分名義に変わっていました。
母親は認知気味の発言が増えてきて、不安に思った兄が母親を説得したのだと思われます。
◆兄の方が得している
兄は同居しているお陰で母親からいろいろと助けてもらっているうえ、家賃が入る自宅も貰うというのがMさんには納得いかないといいます。
将来の母親の介護も兄に任せられるか分からず、Mさんの負担が大きくなるのに、兄はのうのうとしているのが許せないのです。
Mさんはそれを母親にも言って迫ったところ、母親は「自宅の名義を自分に戻して、遺言書を書き直す」という気持ちになってくれたといいます。家賃も兄と半分ずつ分けたいのがMさんの考えだといいます。
◆名義を戻すには
不動産の名義を戻すにはいくつか方法があります。
①錯誤 登記をしてほどなくであれば、間違って手続きをしたので戻す「錯誤」が使えます。1ヵ月以内程度であれば不自然ではありません。
②贈与 兄から母親へ「贈与」することも可能です。その際は贈与税がかかります。
③売買 母親が兄から買い取る形となります。
いずれの方法も現在の名義人である兄の実印、印鑑証明書、権利証(登記情報)が必須のため、兄を抜きに母親の気持ちだけではで続きはできないのです。
Mさんには母親と兄と一緒に話をしていくように説明しましたが、今までの兄の態度では協力を得られないのではないかということです。
Mさんがこれから担当するであろう母親の介護について、Mさんの貢献を無下にしないよう、兄と相談し、家賃から介護料を払ってもらうなどの話し合いをしていくことをおススメしました。
相続実務士のアドバイス
●できる対策⇒名義を戻す手続きはできるが、兄の協力は不可避で現実的ではない。
これからの介護の貢献を対価として支払うようなルール決めをする。
●注意ポイント⇒家賃は所有者が受け取ることが原則であり、既に母親に権利はなく、兄の権利。
話し合いで理解を得るようにすることが必要になる。
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