事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
母親が亡くなったことも知らされず。姉たちの思惑は?
◇父親の相続でもめた
О様(50代・男性)の父親が亡くなったのは、15年前。
母親と姉二人で遺産分割協議をするのに苦労されました。
父親に遺言書がなかったため、自宅と貸し店舗、預金などの分け方を決めるのに
姉たちがなかなか納得しなかったのです。
法定割合は母親が2分の1、子どもたちが6分の1ですので、それを目安にしつつも、
自宅と家賃が入る貸店舗は母親名義として、子どもたちには現金を渡すという案が
母親とОさんの案でした。
ところが姉二人は家賃が入る貸店舗の権利が欲しいと言って譲らず、
結果、母親6割、姉たちが2割ずつで相続したのです。
長男のОさんは自宅を相続しました。
◇老後は息子より、娘に頼りたい
遺産分割協議では、姉二人が母親を罵倒するような場面があったようで、
修羅場となったとОさんは話しておられました。
自分が亡くなったらもめないようにしたいと、母親は10年前に公正証書遺言を作成し、
自分の財産はОさんに相続させるという遺言書を作成していました。
ところがそれから年数が経ち、1人暮しが大変になった母親は、
仕事で忙しいОさんよりは、姉二人を頼るようになりました。
母親は遺言書も作り直すと言い出し、貸店舗は子ども三人が等分に
相続する内容に変更されました。
父親の相続ではあれだけいがみ合っていたのに、それを忘れたかのようで、
母娘が仲良くしてくれるのはよいとОさんも母親の面倒は姉任せにしたのです。
◇母親の居場所がわからない
母親がいよいよ動きにくくなったころ、姉たちが老人ホームを探してきて入所させると
言ってきましたが、いつの間にか、すでに連れて行ってしまい、
どこに転居したのかも教えてくれませんでした。
姉たちが教えてくれないので、いろいろ探してみましたが、結果、わからず仕舞い。
不本意ながら、そのまま年数が経ってしまいました。
◇墓石に母親の戒名が刻まれていた
最近Оさんが身内の法事でお寺に出向いたとき、同じお寺にある父親のお墓に、
母親の戒名と亡くなった日付けが刻まれていることを発見したのです。
そのときの衝撃は一言では表現できず、とにかく怒りがこみ上げてきたと。
これからどうすれぱいいかと相談にこられましたので、不動産の登記簿を取得して
遺言書の内容とは違い、母親の生前、すでに姉二人に贈与されていることがわかりました。
亡くなったことを知らせてこないばかりか、財産も移転されており、Оさんの
権利を侵害していることが明らかになり、Оさんも愕然としておられました。
姉二人はОさんが自宅を相続しており、それで十分だと判断したのかもしれませんが、
いまだに母親が亡くなったことを知らせてこないことについて許しがたい思いです。
相談して不動産贈与の事実がわかったことはすっきりしたと話されました。
姉たちの意向がわかったことでもう刺激せずにおきたいという気持ちだといいます。
相続コーディネート実務士から
母親の居場所や亡くなったこと兄弟に知らさないという常識外の出来事ですが、
この感情の行き違いを戻すことは至難の業だと言えます。
事実確認ができたことで割り切ってしまうことも選択肢になります。