事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
母親は介護施設へ。2年間、空き家になっている家はすぐに売却しないと!
◆20代で家を離れた一人娘には、高齢の母親と独身の叔母が二人!
Hさん(50代女性)は一人娘で、両親から大事に育てられました。それでも大学進学するには実家を離れる必要があり、高校を卒業してから大学の寮に入りました。卒業後も実家に帰る選択肢はなく、そのまま都市圏で就職し、会社の同僚と職場結婚をして仲良く暮らしています。
Hさん夫婦は子どもには恵まれなかったので、ずっと夫婦とも仕事をしてきました。父親は70代で亡くなり、母親が一人暮らしになりましたが、母親は元気で一人暮らしを楽しんでいるようでしたし、仕事をしているHさん夫婦は通勤を考えると同居できる距離ではありませんでした。
◆母親が一人暮らしをするには不安が出てきた
それでも、母親が80代半ばとなり、歩くことが大変となり、Hさんのところに電話が入ることが多くなってきました。Hさんには仕事があり、母親の家までは2時間ほどかかる距離に住んでいるため、急な呼び出しには対応できないのです。
そうした状況もあり、介護ヘルパーさんからも母親の様子を聞くとそろそろ一人暮らしは不安だとアドバイスをされ、介護施設に入所することになりました。
それで一安心はできたのですが、あっという間に2年が経ち、実家の空き家の管理も気になり始めました。
母親は一人では自宅に帰ることができないため、Hさんが介護施設に迎えに行き、外出して見に行く程度です。さらにコロナの時期には外出も、施設で会うこともできなくなったため、いよいよ実家をなんとかしておきたいと相談に来られたのです。
◆母親が認知症になるぎりぎり前に意思確認できて、なんとか売却できた!
実家は父親が亡くなった時に母親名義にしました。よって売却するには母親の意思確認が不可欠になります。
Hさんから母親の状態を聞いた当社は、空家の実家は母親の意思が確認できるうちに、すぐ売却したほうがいいとアドバイスしました。介護施設に入所すると認知症が一挙に進行してしまう方もあり、売却は早い方がいいと判断したのです。これを先延ばししてしまうと介護費用が足りなくなり、いざ、自宅を売却しようとしても、母親の意思確認ができず、名前を書くこともできないとなり、相続になるまで売れなくなるのです。
そうした事態になる前にとアドバイスをしましたところ、Hさんは母親に相談し、もう自宅に帰ることはないので売却してもいいとなりました。
母親が介護施設に入居する時点で貴重品は持ち出していますが、お仏壇や位牌を供養し、荷物の処分などして、家の売却は無事に終わり、住まない家が現金に変わりましたので、これからまだ長い介護に費用がかかっても不安がなくなりました。Hさんが相談に来られてから半年かからずに売却を終えることができ、とてもよかったと安心されました。
◆認知症になるとできないことが出てくる
認知症になって“意思能力が低下”した状態になると、契約行為などが一切できなくなります。相続や資産に関連することなど、次のようなことができなくなれます。
・金融機関での取引 →預金の払い出し、振り込み、預金の解約、借入など
・不動産取引 →売却、購入、貸す、借りる、土地測量、建替え、改修工事など
・生命保険 →契約締結、解約、変更など
・贈与 →現金、住宅や教育などの資金贈与など
・金融商品取引 →株や債券などの取引など
・相続関連 →遺言書、遺産分割協議、民事信託契約など
このように身近なことから、資産を動かすときなど様々な場面で何もできなくなります。
◆認知症になると生活費も引き出せない、家の売却もできない
では具体的にどのような場面で支障が生じるのでしょうか。
1. 日常の生活費を口座から引き出せなくなる
電気、ガス、水道などの光熱費、家賃、食費、日用品費などの日常生活でかかる費用、その他に介護施設の月額利用料、医療費などが払えなくなります。
金融機関で親が認知症で手続きができないという事実を伝えてしまうと、これらを支払うために親の口座から現金を引き出すこと、振り込みすることは一切できなくなる可能性があります。そうなると認知症の本人の口座からできなくなった支払いについては、子どもが立て替え払いをしなければならないかもしれません。自分たちの生活費の他に、親の生活費の負担が生じるということです。
2. 老人ホームの入所金や利用料を捻出するために実家売却ができない
親の介護について、介護施設を頼ることもあることでしょう、その場合、入所するための入所金や毎月の利用料等を支払う必要があり、当然、費用がかかります。所有者本人が支払うべきところですが、認知症で意思能力が低下している場合は、売買契約を締結することはできません。契約が必要になる賃貸もできないということになります。
潤沢な資金があれば良いのですが、家を売れないために資金面に不安がある場合は、子どもが負担したり、家族で介護することになったり、希望外の遠隔地の施設などと、家族の精神・肉体的な負担が生じることになります。
3. 遺言書で揉めることも
認知症の疑いがある場合、親がのこした遺言書をめぐって、相続人間で争いが起こることも考えられます。公正証書であれば、作成時に公証人が確認して作成しますので、否認されることはないのですが、自分で書いた自筆遺言の場合は本人の意思ではないと主張されることがあり、遺言書自体が無効になることもあります。
遺言書が無効となると、相続人間での遺産分割協議をすることになりますが、そもそも、遺言書の無効の裁判の時点から感情的な対立になっていますので、円満な話し合いは望めないことでしょう。遺産分割協議が整わないと、相続税の節税になる特例も使えず、弁護士費用もかかり、相続人にとっては何もいいことはありません。
◆認知症になったときに、現金引き出しや不動産売却ができる“民事信託契約”
親の財産で介護や生活費の工面、実家を売却したいというとき、すでに認知症等で意思能力が低下している場合は、それらは全てできないのです。そうしたことを事前に避けるためには「民事信託」契約をしておくことで解消されます。
民事信託とは、資産の所有者=「委託者」からも資産を託される方=「受託者」に資産の所有権を移転します。受託者は、託された資産から利益を受ける方=「受益者」のために、資産を管理・承継することになります。民事信託での関係者は、「委託者」「受託者」「受益者」の3人になります。
委託者から受託者に資産の所有権を移転するということが、民事信託の最大の特徴です。受託者は、委託者から財産の委託を受けた目的に従って、受益者のために資産を管理・承継しなければなりません。
受託者は,資産の所有者になりますが、「信託の目的」という厳格な縛りの中で資産を所有するということになります。したがって、必ずしも自由に資産を利用できるわけではありません。
受託者は、信頼できる方であれば,必ずしも家族でなくても構いません。もっとも、多くは親が,子どもに財産を託するものです。
民事信託契約ができていると、親が認知症になったとしても、財産を託された子どもが親の代わりに、売買、賃貸などの契約ごとができますので、認知症による空白期間が生じないと言えます。
◆相続実務士のアドバイス
●できる対策
空き家の自宅は認知症になる前に売却してしまう
●注意ポイント
認知症が進み、意思確認が取れなくなると家の売却などができなくなります。本人が家に戻れない、子どもも住まないという場合は早い決断が必要です。タイミンぐを逃してしまうと相続になるまで売却できなくなるため、動かせない財産をかかえていくのは大変です。
最初のご相談は無料です。
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