事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

家裁の調停、保佐人の手配。法律で追い詰めるとうまくいかない。

◆父親はひとり暮らし

Kさん(50代・女性)がひとり暮らしの父親のことで相談に来られました。
母親はすでに亡くなり、80代になった父親ですが、ヘルパーなどのサポートを受けて、自宅暮らしを継続しています。
子どもは3人で、姉と次女のKさんと弟がいますが、3人とも独立しており、それぞれが父親の自宅より一時間程度のところで住まいを持って生活をしています。

 

◆保佐人を手配

それほど遠くではないものの、姉と弟は実家にはほとんど顔を出すことはなく、またKさんとも行き来をすることがなく、ほとんど没交渉だといいます。
それゆえに父親のサポートをするのはKさんだけという状況でした。

 

◆公正証書遺言を作成

2年前に父親は「遺言書を作りたい」と言って、公正証書役場で作成しました。司法書士事務所を通して、父の希望を取り入れたものを作成することができました。
その頃には既に父親は80代を過ぎ、認知障害、記憶障害が始まっていたようですが、さらに翌年2月に交通事故にあってから急激に症状が進行したようだといいます。

いよいよ「認知症」かと思い、Kさんは成年後見制度を申し立てましたが、鑑定の結果は軽度認知障害ということで、成年後見制度は利用できず、弁護士が保佐人として選任されました。
こうした手続きはKさんが全て自分で手配してきたといいます。

 

◆遺言書を取り消し

問題は、2年前に作成した公正証書遺言書で、昨年の事故以降、急に弟が実家に来るようになり、なにかにつけて父親にKさんを非難するようになり、公正証書遺言もKさんに有利な内容になっているのはおかしい、と吹き込むようになりました。
あげくには、昨年9月、長男が父を公正証書役場に連れていき、遺言書を取り消させてしまいました。
今後、どうすればいいかというのがKさんのご相談内容です。

 

◆家はいらない

遺言書の内容をお聞きすると、家は長男に、預金を3人に渡すとしながらも、今まで姉と弟に贈与した分を考慮した内容で、決して弟が不利とは言えない内容です。
しかし、遺言書が取り消されたいまとなっては、姉、Kさん、弟の3人で話し合いをすることは難しいと言えますので、父親に遺言書を作成してもらうことは必須と言えます。
弟は家はいらないと言っているようで、その発言を考慮した内容にする必要もあります。

 

◆家庭裁判所では解決しない

Kさんは保佐人の手続きの他でも、姉と弟に対して、父親の介護についてなど家庭裁判所の民事調停を申し立てたことがあります。そのときは家庭裁判所からの呼び出しということで姉と弟は出向きましたが、Kさんとの溝は決定的になったとも言えます。

このことからもKさんが姉と弟をまとめていくには感情的なしこりがあり、難しいと思えますので、父親の意思により相続させることが望ましい状況です。
いずれにしても父親の遺言書は必須となりますので、必要書類を用意して父親に作ってもらう状況を作ろうとアドバイスしました。

 

 

相続実務士のアドバイス

 

●できる対策⇒父親に相続のさせ方を決めて遺言書を作ってもらう。
       家庭裁判所に頼るのではなく家族で対処していく。

●注意ポイント⇒姉も弟もKさんが家庭裁判所に頼りすぎたことで壁ができたとも言えるため、
        まずは父親の意思を優先することで、これ以上の深刻な争いを引き起こさないことの配慮が必要です。
        

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