事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
父親が亡くなって20年。検認は終わったが登記できない!遺産分割もできない!
■父親が亡くなって20年。相続手続きができていない
姉妹で相談に来られたYさん、Тさんはともに70代。自分たちの相続が気になる年代ですが、まだ亡くなった父親名義の不動産の名義替えができていないといいます。なんとかしておきたいので、どうすればいいかと相談に来られました。
父親は平成15年に亡くなっています。母親は平成8年に亡くなっていましたので、父親の相続人はYさん、Тさんを含む子ども6人となります。
子ども6人なのですが、Yさん、Тさん以外の4人は父親の先妻の子どもたちで、2人とは異母きょうだいだといいます。
■父親は自筆の遺言書を残していた
父親の財産は今となっては自宅の土地、建物だけとなっていますが、平成9年に父親は自筆の遺言書を作成しています。内容は次のとおりです。
「遺言書
遺言者○○○○はこの遺言書により下記を遺言する
- ○○○○の株式は分割、売却することなく保有し、その配当金にて菩提寺の行事等、先祖の供養、墓所の管理、補修等に充てること
- 遺言者○○○○名義の土地、建物の全部を子供等一同の共有財産として維持して保有すること
以上 遺言者○○○○自らこの証書の全文を書き、日付及び氏名を自書して押印した。
平成9年〇〇月○○日 遺言者 ○○○○」
■家庭裁判所の検認も受けている
父親が亡くなったとき、この遺言書はYさんとТさんが預かっていましたので、先妻の子どもたちにも知らせて、家庭裁判所の検認を受けています。よって、正式に遺言書として認められているのですが、これでは不動産の登記ができないと判断されたのです。
Yさん、Тさんが検認証明のある自筆遺言の写しを持参されましたので、確認のために、夢相続の業務提携先の司法書士法人に登記ができないか、確認してみました。
司法書士の回答は、「検認を受けた遺言書であっても、登記は難しい」という結論でした。その理由は次のとおりです。
〇相続人が特定できていない。・・・「小供等」は「子供達だけ」と特定できない
〇相続割合が不明。・・・「共有」は「法定相続通り」とは読めない・読まない
〇「全部」という表現が難。・・・通常「一切の財産」と表現するため、「全部」という表現が「一切の」という解釈をされないこともある
■そもそも、財産を共有する遺言書
財産の処分の仕方を記載するのが遺言書の目的のひとつではありますが、父親の遺言書は自分の財産は子どもらで共有するようにという内容で、分け方の方法が書かれていません。6人の子どもたちで父親の財産を共有するようにということで、結果的に分けられないまま、20年過ぎてしまったといえます。
父親の意思は汲み取れますが、株や不動産を共有するようにという遺言の内容は、円満なように見えますが、現実的には子どもたちがストレスをかかえる要因になっています。
■遺産分割の禁止は有効か?
遺言書では、財産の分配を決めておくことが一般的ですが、Yさん、Тさんの父親のように「自分の財産を相続人の間で共有してほしい」と、遺産分割を禁止する内容を定めることも可能とされています。
但し、遺産分割を遺言書で禁止するにしても期限が存在します。令和3年の法律改正により、相続人の合意による遺産分割を禁止する合意はできるものの10年までの範囲にて一部または全部の合意ができることとなりました。それまでは5年以内とされてきた点の改正となります。家庭裁判所の判断による分割禁止も同様に10年以内とされています。
よってすでに父親が亡くなってから20年が経つYさん、Тさんきょうだいにとっては、父親の意向を十分汲み取り、財産を共有してきたわけですので、そのしばりはすでになく、遺産分割をしなくてはならないと言えます。
■これから遺産分割協議が必要になる
父親の遺言書で手続きができないとなれば、相続人で遺産分割協議をする必要があります。先妻の子どもは、長女、長男、次男、三男で、70代のYさん、Тさんよりも年上ですので、すでに80代、90代となっています。
父親が亡くなった時には全員、健在でしたが、この20年間に、長男、三男、長女の順に亡くなってしまったのです。長女の子2人、長男の子2人、三男の子3人が代襲相続人となり、次男、Yさん、Тさんを合わせると相続人は10人になります。
よってこれから遺産分割協議が必要になります。
■実家は空き家だが、次男家族が敷地内に
父親名義の土地は100坪あります。土地の7割程度の部分に母屋が建っていて、父親が亡くなってからは空き家となっていますが、父親の遺言通りに維持するため、Yさん、Тさんが毎月のように実家の掃除などし、お墓参りもして維持してきています。
敷地の一部には次男が家を建てて住んでいますので、長男亡き後は次男が実家やお墓を守る役割かと思えますが、次男はそんな役割は追いたくないと言います。
■遺産分割はどうする?
次男は90歳、Yさん、Тさんも70代の後半。すでに長女、長男、三男が亡くなっている現状ですので、いつ、次の相続が起きてもおかしくないと言えます。そうした状況で、父親の相続の手続きをしてしまいたいというのが姉妹の共通した意見なのですが、いちばんのまとめ役にならないといけない次男にはまとめる気も、継承する気もないということでYさん、Тさんは困っているということでした。
土地全体を売却して法定割合で分けることが一番公平な解決策なのですが、敷地内に住む次男はそれもいやだということで、進まないといいます。
■解決策はあるか?
次男が売却に協力しないというのであれば、時短の家の部分を分筆し、その土地を相続してもらい、実家を含む土地を売却して、他の相続人で法定割合で分けるようにするのが次の解決策になります。
いずれにしても、次の相続が起きないうちに財産を分けないといけないわけで、もう先延ばしをせずにきょうだい、代襲相続人で話し合いをされるようにとおススメしました。また、2024年4月1日からは登記法も施行されますので、とにかくすぐにでも解決されたほうがいいともご説明しました。
Yさん、Тさんはまずは次男と話し合いをして進めていきたいと帰られたのでした。
夢相続では遺産分割協議の案や不動産の名義替えの手配、不動産の売却ができることもご説明し、サポートしていきます。
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