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相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
父親の相続登記をする前に母親も亡くなった!数次相続はどうする?
■父親の逝去日は20年前
Sさん(70代女性)が相談に来られました。父親が20年前に亡くなり、実家は母親がひとり暮らしになりました。Sさんは他県に嫁いでいて同居はしていません。他にきょうだいはなく、一人っ子なので、いずれ、実家はSさんが相続することになります。
父親の財産は家と預金程度で、当時の基礎控除7000万円を超えてはいませんでした。預金は母親が引き継ぎ、家は2人で相続しようと話をしていたと言います。ところが、一人暮らしをしていた母親も2年前に亡くなったというのです。これからどのような手続きをすればいいかというのがSさんのご相談の内容でした。
■40年前に父親と共有名義で実家を購入
Sさんは一人っ子ですので、将来もずっと両親と一緒に暮らすつもりだったと言います。そのつもりで、仕事をして貯金してきたお金を頭金にして、父親と共有名義で建売住宅を購入しました。父親が8割、Sさんが2割ですが、頭金は1割程度。残りはSさんも父親もローンを組みました。購入金額は4500万円です。父親もSさんも働いていましたので、毎月の給料でローンの支払いができていて、それまでの借家の家賃の以下の支払いで住むことができていました。その後、Sさんは30代半ばで結婚して家を離れることになりましたが、その後は両親が2人で生活して来られたのでした。
■遺産分活協議書は作成していた
父親が亡くなった時、母親とSさんの2人が相続人ですので、司法書士にアドバイスを受けて、遺産分割協議書は作成していました。自宅に関し、父親の名義の8割につき、母親とSさんで等分にし、預金をはじめとする他の財産は母親が相続する内容です。当初の家のローンもすでに完済していましたので、負債はとくにありません。
そのまま司法書士に相続登記を依頼しておけばよかったのですが、母親が手続きしてくれているものと思っていたところ、母親が亡くなって、固定資産税の通知書にはまだ父親の名前があり、登記を確認したところ、父親名義のままだと判明したのでした。
■父親の相続手続きをする前に母親も亡くなった
父親の相続時の遺産分割協議書は探して見つかり、手元にあるとSさんは持参しておられました。けれども、相続人の母親も亡くなってしまっていますので、果たしてそれが使えるのか、使えないなら、どうすればいいかというのが、Sさんの質問でした。
当時集めた父親の戸籍関係、相続人の母親とSさんの戸籍や印鑑証明書など関係書類が一式残っていて、法務局に申請していないだけだったのかもしれません。しかし、これから相続登記するには、自宅の持ち分10分の4を相続する母親の本人確認ができないのです。現在は、相続登記するにも、本人の身分証明書や司法書士による意思確認(面前、電話等)が不可欠な時代。亡くなった人の分を登記することはできないと言えます。
■数次相続とは?
Sさんのように、父親が亡くなり、その相続手続きが終わらないうちに二次相続が発生することを数次相続といいます。10年以内に相続が発生したときの場合を指し、相続税から控除できる特例もあります。
Sさんの両親の場合は、父親が亡くなってから20年経ったところで、母親が亡くなっていますので、本来は手続きができる年数がありますので、一般的な数次相続とは違うケースではありますが、一次相続の手続きができていないうちに、二次相続が発生したことにはなります。
■手続きしなかったことを生かす
仮に遺産分割協議のとおりに相続手続きをしていたとすると、登録免許税と司法書士の手数料がかかっていました。ところが、登記をしていなかったため、いまとなっては母親分の相続登記をするすべがないため、母親の登記は飛ばして、Sさんが一度に父親の相続をすることになります。そうなると母親の時の司法書士の手数料や手間は省けるということになり、結果的には多少なりとも費用負担が減らせたと言えます。
■遺産分割決定書が必要
これからの手続きをどうするかというと、相続人はSさんひとりとはいえ、一次相続の手続きができていない場合は、遺産分割が決定したという書類を作成する必要があります。遺産分割協議書は、相続人2名以上の場合に作成しますが、そのかわりに、「遺産分割決定書」を作成します。数次相続の場合に、第1相続から第2相続において、相続人一人で遺産分割を決定することをいいます。
Sさんにそうした説明をし、相続登記をすることの委託を頂きました。相続手続きは1回とはいうものの、父親の戸籍一式と母親の戸籍一式について、生まれた時から亡くなるまでをそろえる必要があります。そうした関係書類を揃え、遺産分割決定書を用意することで、不動産の父親の名義がSさんに変えられるのです。
■実家はどうする?
相続登記のめどはつけられますが、課題はまだあります。実家は空き家となっていて、Sさんが定期的に通って片づけをしていますが、夫名義の家に住んでいるので、実家に住む予定はありません。Sさんに子どもが゜いれば子供のために維持することも検討できますが、Sさん夫婦には子どもがいないといいます。
ならば、相続登記をするタイミングで売却することをご提案しました。順番的には測量をし、買主を見つけて、契約、引き渡しとなります。建物は築40年経っていますので、解体するか、大々的なリフォームをするかになり、買主の希望に寄ることになります。
まだ家の中に荷物がたくさん残っているということで、3ヶ月ほどで整理をしつつ、測量を始めて、買主を見つけるように売却をお勧めしています。Sさんはこれで方向性が出せたので、よかったと少しずつ手続きや片づけを進めて肩の荷を下ろしていきますと言っておられます。夢相続では相続手続きや不動産の売却をすべてお手伝い、サポートできますので、任せて頂けて、安心していただけます。
■遺産分割決定書 例
遺 産 分 割 決 定 書
被相続人 〇〇〇〇(昭和○○年○○月○○日生まれ)
死亡日 平成○○年○○月○○日
本籍地 ○○県○○市○○区○○ ○丁目〇〇番地
最終の住所地 ○○県○○市○○区○○ ○丁目〇〇番○○号
相続人兼被相続人 〇〇〇〇(昭和○○年○○月○○日生まれ)
死亡日 令和○○年○○月○○日
本籍地 ○○県○○市○○区○○ ○丁目〇〇番地
最終の住所地 ○○県○○市○○区○○ ○丁目〇〇番○○号
被相続人 ○○○○の遺産について、相続人兼被相続人 ○○○○
と相続人 ○○○○の間で、○○○○の生前に、○○○○が持分全部を相続することで合意していた。
- 相続人 ○○○○は、次の遺産を相続することとした。
(1)土地
所 在 〇〇県〇〇市〇〇区〇〇〇丁目
地 番 ○○○○番〇〇
地 目 宅地
地 積 ○○○.○○㎡
持 分 ○○分の〇
(2)建物
所 在 〇〇県〇〇市〇〇区〇〇〇丁目
家屋番号 ○○○○番〇〇
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 ○○.○○㎡ 2階 ○○.○○㎡
持 分 〇〇分の○○
上記の通り、相続人による遺産分割が決定したので、これを証するため、本書を作成し、相続人が保管する。
令和○年○○月○○日
住 所 ○○県○○市○○区○○○丁目〇〇番○○号
相続人 ○○ ○○ 実印
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