事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
父親の相続税申告をスルー。母親も亡くなった。どうすれば?
◆相続税の申告をしなかった。7年過ぎると申告できない
今年の夏に母親が亡くなったと相談に来られたNさん(50代・男性)。
父親は15年前に亡くなっており、相続人となるきょうだいは2人の妹です。
Nさんは長男として両親と同居してきました。
自宅の土地、建物は父親名義のまま、相続手続きをしてきませんでした。
父親名義の自宅の土地、建物は、現在の評価では約1億円で、
当時の相続税の基礎控除の9000万円を超えています。
それに金融資産を足すと基礎控除を超える財産だと言えますが、
相続税はかからないという判断から何もしなかったといいます。
相続税の申告期限は本来10か月ですが、
申告をしなかった場合、時効は5年で、悪質でも7年とされています。
よって本来の申告期限から7年過ぎると申告をしたくても、受付してもらえないということです。
Nさん場合は、母親の特例を適用すれば納税は不要ですので、
本来は申告をしておくべきところでした。
◆父親名義は母親の財産ではない。申告は不要。
Nさんきょうだいは、父親の財産は母親が相続するものだという感覚でいたようですが、
正式な遺産分割協議はしていません。
よって父親名義の土地は、母親の財産にはなっていないということなのです。
母親の財産は預金1500万円と500万円の生命保険だけですので、
相続税の基礎控除の範囲内で、申告は必要ありません。
父親の相続では財産の半分が母親の法定割合でしたが、
しかし、それも確定していないため、母親名義のものだけが母親の財産となります。
◆父親の相続+母親の相続。別々に手続きする。
父親の相続税の申告はする術がなく、母親の相続税の申告は不要とわかって
Nさんはとりあえずひと安心されました。
しかし、このままにしたのでは、問題が生じます。
15年放置してきた父親名義の家の遺産分割協議をいよいよ、しなくてはなりません。
母親の預金の分け方も決めなくてはなりません。
Nさんは両親と同居してきた自宅を自分が相続し、妹たちには母親の預金を等分に
分けることで納得してもらいたいと考えています。
遺産分割協議は父親のものと、母親のものを別々に作成することになります。
両親ともに遺言書はないため、これから妹たちと具体的な話し合いをするということです。
父親の相続人であった母親は、すでに故人ですので、
これから遺産分割協議をする場合はきょうだい3人だけで行うことになります。
もう先延ばしをしないようお勧めした次第です。
相続コーディネート実務士から
遺産分割協議を先延ばしても大きな不都合はないものの、
今後はきょうだい3人の共同財産としていくわけにはいきません。
その都度、適切に対処されることをお勧めします。