事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

独立型二世帯住宅。しかも区分登記。小規模宅地等の特例は使える?

◆独立型二世帯住宅で長男家族と同居

Kさん(80代・男性)が相談にこられました。5年前に長男家族と同居をするために自宅を二世帯住宅に建て替えたといいます。現在は1階にKさん夫婦、2階に50代の長男夫婦と孫二人の6人で楽しく生活をされています。
土地はKさんが親から相続したもので自分の名義です。建物資金は、1階部分はKさんが自分の預金から出し、2階は長男と嫁がそれぞれローンを借りて負担しています。
ハウスメーカーや融資する銀行の提案により、完全独立型の二世帯住宅となり、しかも建物は区分登記をしました。1階はKさん名義、2階は長男と嫁の2人名義となっています。

 

◆長女にも家を相続させたい

Kさんには長女もいて、すでに結婚して近くに住んでいますが、老後は長女に面倒を看てもらいたい希望もあり、1階は長女が住める部屋も用意してあります。一人暮らしになったときには長男夫婦よりも長女を頼りたい気持ちもあり、1階は長女に相続させようかと考えているということです。


そうしたこともあり、完全独立型の二世帯住宅はふたりの子どもに自宅を相続させることができるので、望む形だと思ったのでした。

 

◆二世帯住宅で特例が使える

Kさんは80代になったこともあり、相続になるとどうなるか整理しておこうと本を買って読んでみたということです。その中に同居する子どもがいれば小規模宅地等の特例が使えて、相続には有利だとあり、自分のときもその特例が使えるのか知りたいということでした。


一般的な二世帯住宅は土地も、建物も親名義のことが多く、同居する子どもは使用貸借としてただで親の家に住んでいることになります。この場合、相続になると同居の子どもに小規模宅地等の特例が使えるので、自宅の土地は330㎡までは2割の評価で申告することができ、相続税は少なくなるのです。

 

◆相続はどうなる?

しかしKさんの場合は、土地はKさん名義ですが、建物の2階が長男名義であり、区分登記をされているため、同じ建物に住んでいるとはいえ、独立した別の家となり、家なき子でもないため、小規模宅地等の特例が使えないのです。


Kさんの相続で小規模宅地等の特例が使えるのは、配偶者か、家を所有していない長女の2人となります。ただし、Kさんの考えのとおりに長女が1階を相続すると、きょうだいで自宅を半分ずつ持つことになり、維持するなかで修繕費や建て替え、売却など意見が合わないことがでてくるとトラブルに発展することもあり得ます。

 

◆解決策はあるか?

建物が区分登記されていることは、特例が生かせるのも半分だけとなり、効果は半減してしまっています。よって、解決策の1つとなるのは、二階部分の建物の権利をKさんが長男夫婦から買い取り、建物全部を自分の名義にする方法が考えられます。それには現金で買い取るなどして、登記も変えておく必要があります。


しかし、名義替えの費用や不動産取得税がかかるため、慎重な判断が必要です。建てるときに相続のときや特例の効果を検証する必要があったと言えます。


Kさんには、いまから建物を買い取るよりは、そのお金で賃貸物件を購入すれば貸付用の小規模宅地等の特例が使えて、評価が下がる分、節税につながります。自宅をきょうだいで共有するよりは、長女には別の不動産を渡して争わないようにすることが望ましいとアドバイスをしています。

 

◆相続実務士のアドバイス

●できる対策
自宅の共有は避ける
自宅以外の不動産を用意する

 

●注意ポイント
1つの建物を共有すると将来のトラブルになりかねない。
不動産はひとりずつ別のものを渡せるようにすればトラブルは避けられる。


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