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相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
相続になってからできる節税(1)【配偶者税額軽減】相続税は0に
■相続対策の準備をしていたが、、
Hさん(50代男性)が、母親(80代)と相談に来られました。父親(80代)の生前対策として自宅の建て替えを検討しているとのこと。そこで、父親の財産の確認と評価をして、自宅建て替えによる相続プランを作成することになりました。
相続人は母親と子どもが3人。Hさんは長男で、2人の妹は嫁いでいます。相続税の基礎控除は5400万円です。財産は自宅と賃貸アパートで、1つの敷地に2棟の建物が建っています。同じ時期に建てているのですが、すでに築50年ほど。修繕費もかかるようになり、建て替えの時期だと言えます。
ところが、財産の確認が終わった頃、父親は入院中に体調が悪化して、亡くなってしまったのです。Hさんからの報告を受けて、生前プランは中断し、相続後の手続きに切り替えることになりました。
■父親の財産は1億5000万円弱
自宅は父親と母親と共有名義になっています。自宅の奥に賃貸アパートを建てていて、2DK8万円が4世帯ですので、毎月32万円の家賃が入り、生活費にしているということです。よって自宅と賃貸アパートは母親が相続することは必須と言えます。
財産の6割が不動産、4割が預金、株式です。預金や株式は亡くなった日現在の残高をもとに評価をしますが、確認していた金額に大きな増減はありません。葬儀費用や未払金を引くと1億4937万円だとわかりました。相続税1319万円と試算されました。
■とりあえずの節税は配偶者の特例
父親は相続対策は何もせずに亡くなってしまいました。自宅とアパートの築年数は50年以上も経過しているのに、建て替えはしなかったため、建築費の借入等の負債もありません。配偶者は半分無税という特例があり、相続税1319万円の半分は払わなくてもよいとしても、子どもたちは659.5万円を払うことになります。
けれども配偶者は1億6000万円まで相続しても無税の特例もあるため、こちらを適用すると母親が全財産を相続することで相続税は払わなくてもいいとなります。1319万円の節税ができということです。
■節税のために知っておきたい重要ポイント
前提 「評価を下げる」+「納税を減らす」 これが節税のしくみ
相続税を節税する方法の一つは、「財産評価を下げること」です。
それは、”申告の評価を下げる”ことです。評価を下げれば相続税も下がります。
亡くなってからでも評価を下げることができる財産として、主なものは不動産です。不動産でも、特に、「土地」の評価の仕方はひとつではなく、いくつかの方法があります。また、「土地」そのものがどれ一つとして同じものはなく、個々に状態が違い、マイナス要因がいくつも見つけられることがあります。土地の現実の状況を評価に反映できれば、評価減を引き出すことができ、相続税も節税できます。
また、他の財産でも評価を下げる要因が見つかることもあります。そうした個別の状況を引き出し、確認することで、減額の要素を一つだけでなく、二つ、三つと積み重ねていくことで、”申告の評価を下げる”ことができ、合法的に相続税を安くできるのです。
相続税を節税する方法の二つ目は、「納税を減らすこと」です。
たとえば、配偶者の税額軽減の特例が最たるものですが、効果的に利用することで納税額を大幅に減らすことができます。また、農地の納税猶予も納税を減らす選択肢となります。
このように「評価を下げること」と「納税を減らすこと」の組み合わせで、相続税を安くするのです。
相続税の節税は、「遺産分割」、「評価・申告」、「納税」のタイミングで考え、選択していきますが、サポートをする専門家のノウハウや実務経験により、導き出させるものだといえますし、合わせて相続人自らの理解や決断が不可欠だと言えます。
個々の事情を判断し、具体的なこととして、どこから節税をはじき出すかを見極める能力があれば、亡くなってからでも節税のチャンスを作り出すこともできるのです。
このように個々の事情により、いくつかの機会にまだまだ節税するチャンスが残されています。こうしたチャンスをどういうふうに生かしていくかで、相続税も大きく変わります。
■配偶者税額軽減の特例で変わる(納税を減らす)
二つ目は、配偶者税額軽減の特例を利用することで納税額を減らすことができます。配偶者には財産の半分、あるいは1億6000万円までは無税とする特例があり、配偶者の取得割合を増やすことで納税額を減らすことができます。
□配偶者には最大の節税(納税を減らす)
6種類の税額控除のうち、最も節税効果が大きいのは、配偶者税額控除です。これは、「配偶者の税額軽減」といわれていることからもわかるように、被相続人の配偶者の税負担を大幅に軽減するものです。
(1)控除額の算式
・被相続人の配偶者が取得した財産の課税価格が法定相続分以下なら、取得額がいくら多くても、相続税はかからない。
・配偶者の取得額が法定相続分を超えていても、その額が1億6000万円以下なら、相続税はかからない。
(2)配偶者税額控除を受ける条件
この配偶者税額控除を受けるためには、次の2つの条件が必要です。
・婚姻届が出ている法律上の配偶者であること。
・相続税の申告期限までに、相続人・包括受遺者間で遺産分割が確定していること。
ただし、この控除を使うには、相続税の申告期限までに、相続人同士で遺産の分割が確定していることが必要です。
相続人同士で遺産争いがあり、申告時までに分割ができない場合には、
軽減の特例は受けられません。ただし、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が行われた時は、この軽減の特例が受けられるようになります。
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■二次相続の納税まで比較(納税を減らす)
配偶者が相続した財産は次の相続でまた課税対象となります。一次相続では、配偶者の税額軽減の特例を利用すれば、財産の半分、あるいは1億6000万円まで無税ですから、確実に納税の負担は減らせると言えます。
しかし、配偶者が相続した財産については、その次に配偶者が亡くなったときに、また、相続財産として課税されるのです。そのときは相続人が1人少なくなりますので、基礎控除が引けると言っても、納税額は大きくなります。
配偶者が、一次相続で財産を取得する前からすでに独自の財産を所有している場合は、配偶者の半分、あるいは1億6000万円の財産を取得することによって、一次相続では無税であっても、二次相続では一次相続以上の相続税が課税されることになります。
よって、そうした相続税の負担を避けるには、一次相続、二次相続における財産の分割の仕方とトータルの相続税額を計算し、比較することで、納税額が少なくなる分け方を選択するようにします。
配偶者の年齢を考えると、近いうちに二次相続が起こることも想定できるというような場合は、配偶者には財産を分けずに、子供たちで取得することもあります。その際も納税額を確認してから決めることが無難でしょう。
一次相続、二次相続のトータルの納税額を減らすという目的とすると、一次相続では配偶者の税額軽減の特例を最大限に利用して、納税を最小限に抑え、その上で、配偶者自らが評価を下げることや贈与などで財産を減らす節税対策に取り組むようにすれば、二次相続でも相続税を減らすことができます。
どういう方法が適切であるかは、配偶者の年齢や体調、相続人の状況、財産の状況などによって選択していくことになります。
■結論 とりあえずの節税
今回は配偶者は1億6000万円まで相続しても、税額軽減により、納税しなくていいという特例を適用することをお勧めしましたところ、Hさんをはじめとして母親も妹たちにも理解が得られました。よって、とりあえずは父親の財産は母親がすべて相続することで相続の手続きを進めることになりました。
合わせて母親の二次相続対策が必要になりますので、土地活用のプランを提案していくようになります。
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