事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
相続税の申告は別々にできる!税務調査ですり合わせて明らかに!
■父親は15年前に亡くなった
Yさん(70代男性)は長男ながら、大学時代から実家を離れ、そのまま就職しました。結婚後に通勤しやすい立地で家を購入して生活しています。すでに実家を離れてから50年以上となります。妻と2人の息子に恵まれて幸せな生活をしてきました。
父親が15年前に亡くなり、相続の経験をしています。父親は遺言書を残しており、それに従って粛々と相続手続きをしましたので、特に問題はありませんでした。
相続人は母親と姉、養子になっているYさんの妻の4人でした。
■長男夫婦で実家を相続
父親は大正生まれでしたので、「長男が家を継ぐ」のが当たり前の世代です。Yさんは大学時代から家を離れて、大企業に就職しましたので、実家に戻って生活することはなく、妻や2人の子どもも実家で暮らしたことはありません。
けれども長男夫婦の役割として実家を継いで守る意識は高く、定期的に実家に戻って両親のサポートをしてきました。
姉は結婚して同じ市内に住んでいますので、Yさん夫婦に比べるとより気軽に、頻繁に実家に行ける状況にありました。
■いつの間にやら母親は施設に。実家は空き家
父親が亡くなったあと、母親は実家でひとり暮らしをしてきましたが、90歳になると一人暮らしも大変になったのか、Yさん夫婦に何の相談もなく、いつの間にやら、母親は姉の自宅で生活をするようになりました。Yさん夫婦は離れて暮らしているため、そうした内容も母親や姉からではなく、親せきや近所の人から知らせてもらうように始末。このころから、姉はYさん夫婦には何も相談したり、知らせたりしなくなったのです。母親に会うために姉の家に行っても合わせてくれなくなり、そしていつの間にやら、施設に入所させたようで、どこへということも教えてくれなかったといいます。
■母親の預金は姉が管理
姉は母親の預金も管理するようになり、その後はまったく知らせて来ないため、母親の預金がどれくらいあるのか、わからないといいます。父親が亡くなったときには、母親は預金の大部分を相続しており、母親独自の預金も合わせると、7000万円ほどの預金があったということです。
預金のほかには、父親から相続した不動産は2か所ほどあるということはわかっていますが、その1か所も売却したと親戚から伝わってきています。
姉にはYさんから再三、連絡を取ってみたのですが、応じないばかりか、絶縁状のような手紙が送られてきて、とりつくしまがない状況。Yさん夫婦はあきらめてしまったのでした。
■親戚から母親が亡くなったと聞いた
Yさん夫婦は実家の名義が自分たちになっていることもあり、お仏壇もあり、定期的に帰っては掃除をしたり、庭の手入れをしたりしてきました。そのように、いつものとおり、実家で戻ると、親せきがやってきて、2カ月前に母親が亡くなり、葬儀や四十九などのセレモニーは済ませたようだが、聞いているかとのこと。妹から何の知らせも受けていないYさん夫婦は本当に驚きましたが、姉のいままでの態度からはそうしたこともあり得ると納得したのでした。
■妹から配達証明郵便
そうするうちに、姉から配達証明郵便送られてきました。中には母親の公正証書遺言の正本や死亡届など、母親が亡くなったことがわかる書類だったのです。
遺言書の内容はYさんには自宅近くの空き地を相続させるとあり、預金や株など金融資産など他の財産の一切は姉に相続させるとあります。
これにはYさん夫婦は怒りを通り越してあきれてしまい、姉には関わりたくない、相続放棄をしたほうがいいのか、どうすればいいかとご夫婦で相談にこられたのでした。
■土地の相続評価
遺言書で指定してある不動産は空き地で100坪ほどありますが、細長い土地で大きな建物は建てられません。それでも路線価地域内にありますので、相続評価は1500万円程しており、活用の余地はあると言えます。
金融資産がどれほど残っているのかが不明ですが、マイナスではないと想定されるため、相続放棄をするのではなく、相続することをお勧めしました。相続した後、利用しない土地であれば売却することもお勧めしました。
■金融資産がわからない
Yさんが相続する土地以外は姉が相続するという公正証書遺言ですので、預金や株などの金融資産の残高がまったくわからないといいます。それは姉から開示してもらえばいいのですが、いままでの姉の態度からは、期待できないことでもあります。
いちどは姉に請求し、協力を得られない場合は、金融資産の残高や取引明細は相続後であれば、相続人の証明をすることによってYさんでも入手することができます。そのようにすることもアドバイスしました。
■相続税の申告はしなくてはならない
父親の財産は2億円以上で、相続税の申告をしています。母親は半分を相続していますので、よほど財産が減ることがなければ、3人の相続人の基礎控除4800万円は超える財産があると想定されます。
母親も相続税の申告が必要だと思われますが、姉の手紙にはそのことは何も触れられておらず、どうするのか不明です。
しかし、仮に無申告だとすると相続人全員の連帯責任となりますので、Yさん夫婦も納税の必要が生じ、無申告加算税などのペナルティが課されることもあります。
■相続税の申告は姉とは別にできるか?
相続税の申告は、相続人全員でするのが一般的ですが、別々に申告をすることもできます。たとえば、Yさんと妻が一緒に申告し、姉とは別の申告書を出す形になります。
税務署には1人の被相続人の相続税の申告書が2種類提出されていることになります。
それぞれが同じ情報であれば問題はないのですが、情報共有ができず、意思疎通もできないとなると内容もぴったりではないことになります。
こうした場合は、税務調査により、内容をすり合わせて1つにしていくことになります。
今回のように母親の金融資産の残高も、明細もわからない場合は、敢えて別々に申告をして税務調査により内容を明らかにしてもらうほうがよいと言えます。いままでわからなかった預金の流れがあきらかになると思えば、むしろ、税務調査に期待したいところ。こうすることによって長年のもやもやは少しはすっきりするはずです。Yさんご夫婦にもそのように説明してご理解を頂いています。
■相続税は連帯納付責任がある
相続税は「相続人は相互間で連帯納付の義務」があります。他の相続人が相続税を収めていない場合は、たとえ自分が納めていたとしても、他の納めていない相続人の代わりに相続税を収める可能性があるということです。
Yさんの場合は、不動産より金融資産の方が多いと思われますので、姉が自分の相続税だけ払ったとしても、全財産に見合った相続税がYさんにも課税されて納税する必要が出てきます。また、金融資産が基礎控除以内に減っていたとしても特別受益や財産の持ち戻しにより、相続財産となれば、相続税の納税義務が発生することもあります。
いずれにしても相続税は相続人全員の連帯責任となりますので、相続財産の確定が必須といえます。
意思の疎通が図れるごきょうだいでも、相続税の申告や相続手続きは大変な思いをしながらとなるのですが、Yさんご夫婦にとっては意思疎通を図ろうとしない姉との関係があり、さらに複雑な思いをかかえておられる状況です。それでも義務となる申告や納税はしないといけないため、夢相続でサポートしながら進めて頂くようにします。
最初のご相談は無料です。
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