事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
築70年の実家に独り住まいのおひとり様。売却、住みかえの決断時。
■ずっと実家住まいのおひとり様
60代(女性)のSさんが相談に来られました。相続した実家はSさんが生まれる前の昭和20年代に建築されていて、もう築70年。建て増ししたり、改築したりしていままで住んできたのですが、いよいよお風呂が使えなくなり、ガス屋さんに見てもらうと取り換えが必要だが、風呂釜だけでなく、浴室全体の工事をしないとユニットバスが入らないため、工事費は200万円ほどかかると言われたのです。
お風呂を直しても、次はキッチンや洗面所もリフォームが必要になることは目に見えています。
■とりあえずのアパート生活
決断がつかないまま、日々のお風呂が使えない不便さを解消するため、たまたま空室があった隣のアパートに仮住まいをするようにしたと言います。
日々の生活はそれで続けているものの、自宅をどうしようかと思い、アドバイスをしてもらいたいと、兄(70代)と一緒に相談に来られました。
Aさんは二人兄妹。兄は長男ですが、20代で結婚して家を離れていますので、その後、実家には祖父母と両親、孫のAさんで暮らしてきました。
土地は祖父の代からの借地で、ずっと地代を払ってきましたが、地主さんが相続税を支払うために買ってくれないかという申し出があり、父親が亡くなった後、母親が底地を買い取った経緯があります。
昨年、母親が亡くなったため、ずっと同居してきたAさんが相続しました。
■相続税はかからなかった
自宅の土地は55坪で路線価は38万円、6900万円の評価でした。建物や預金を合わせて、母親の財産は7500万円。基礎控除は相続人2人なので、4200万円です。兄は自宅を所有しているので、実家は同居してきたAさんが相続することで合意をしてくれました。
相続税の申告は必要でしたが、同居するAさんが相続することで小規模宅地等の特例が使えるため、自宅の土地評価が5520万円減額されることで、基礎控除以内と財産となり、相続税はかからなかったのです。
兄とも遺産分割協議も円満に済み、不動産の名義も相続登記も終わり、ひと段落したところだと言います。
■空き家になった自宅、これから、どうする
ようやく1周忌もでき、相続税の申告や名義替えができたことで、Aさんはあらためて相続した実家をどうにかしなくてはということが目前の課題となったといえます。
選択肢はいくつかありますが、主には次の3つになります。
1.建築費を借入して自宅を建て替える
2.半分売って売れたお金を建築費にして、建て替える
3.売却して売れたお金で住替える
それぞれのメリット、デメリットがありますので、それぞれを整理すると次のようになります。Sさんが相続されたご実家は都内なので、参考価格は周辺の事例より提要しています。
1.建築費を借入して自宅を建て替える・・・土地を残したい場合
メリット
55坪の土地には110坪の建物が建てられます。おひとりさまが住む家には広すぎるため、20坪を自宅として90坪を賃貸する賃貸併用住宅を建てることを想定します。
坪単価が100万円の木造建物を建てると1億円の建築費がかかります。建築費は総額を借り入れで調達すると、期間35年として月306184円を返済する必要がありますが、家賃収入から返済できる事業計画は立てられます。
家賃収入想定 700000円 100000円×7室
返 済 306184円
差し引き 393816円
デメリット
借り入れが必要 借り入れのための連帯保証人が必要だがおひとりさまの場合は相続人の姉か甥姪が候補となる
自宅に賃貸住宅が併設されているため、賃借人との関りも必要になる
2.半分売って売れたお金を建築費にして、建て替える・・・土地を残し、借り入れなしにする場合
メリット
土地半分を売却してそのお金を建築費に充てられるため、借入が不要となる
27.5坪の売却代金の想定 坪150万円で売却したとすると売買代金は4125万円となる。55坪の建物が建てられるとなると、半分を賃貸すると2戸を賃貸し、20万円程度の家賃が得られる。
デメリット
自宅の土地が半分になる 賃貸住宅が併用されているため、賃借人との関りも必要になる
3.売却して売れたお金で住替える・・・土地は残せないが、借入のない住み替えができる
メリット
自宅土地を坪150万円で売却すると8250万円を受け取れる。そのお金を原資として自宅と賃貸物件を購入することができる。老後を考えて自宅はワンフロア―、バリアフリーのマンションが候補となる。賃貸物件は中古の区分マンションのオーナーチェンジ物件だとすると4000万円、利回り4%であれば毎月13万円の家賃が得られる。自宅と賃貸を分けることで煩わしさはない。
デメリット
住み慣れた自宅がなくなる。
■おひとりさまは身軽な方が楽
Sさんは兄が嫁いだ後もずっと両親と同居してきました。仕事も続けてこられたので同居のメリットは大きいと言えます。父親の介護は母親がしてくれていましたので、それほどSさんに負担がかかることはなかったのですが、母親も80代半ばをすぎると認知気味になり、60歳で定年になったSさんが介護をする役割となり、やはり大変だったといいます。
自宅は昔ながらの作りでバリアフリーにリフォームもされていません。母親の日常生活からサポートをする必要があり、定年後だからこそできたとSさんは話しておられました。
■母親が亡くなって次のステージへ
昨年、母親は93歳で亡くなりました。平均寿命を超えての大往生ですので、兄もSさんも思い残すことはないということです。
1周忌も終えて気持ちの区切りがついたということで、そうなると一人暮らしの実家が広すぎ、昔の造りで寒く、そのうえ、お風呂が使えなくなって、この機会に自分のこととして考えたいということです。姉は夫婦共有の家もあり、子どももいるので、実家はSさんが好きなようにしていいと言ってくれています。
100歳までの時代でいえばSさんにとってまだこれから30年超もあると言えますので、いよいよ自分のために決めて、次のステージに進むときです。
おひとりさまという状況であれば、これから35年ローンを抱えていくよりは、売却、資産組替がお勧めで、金銭的にも、精神的にも、負担のない形にされることをお勧めしました。Sさんもそうした方向で考えたいと前向きに進めていく予定です。
最初のご相談は無料です。
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