事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
自宅は賃貸。今後はどうする?購入?現金で残す?
◆大企業から独立
Eさんは60代、妻と子供一人の家族構成です。いままで広告関係の大企業に勤務してきて、主要なポジョンに昇格、大きな仕事も任されてきたと言います。ある程度やり切ったと思ったことから、早期退職し独立したのです。
円満退社のうえ、かつての勤務先からも仕事の受注がもらえるようなコンサルタントとして、会社も安定しているということです。
◆自宅は賃貸派
Eさんのもとの勤務先は福利厚生が充実しており、ずっと社宅住まいを続けてきました。
その後、一定の年齢になって社宅を出てからも、借り上げ住宅として法人契約した賃貸住宅に住んでいました。その賃貸住宅は自分たちで住みたいところを探したものですから、退職後は、個人契約に切り換え、現在も住み続けていると言います。
◆病気になって考えた
Eさんが退職、独立するきっかけになったのは、検診でガンが見つかったこともあります。幸い、早期発見でしたので、2か月ほどの入院する間に手術をし、ほどなく社会復帰できました。その間の仕事は自分が戦線離脱している間も問題なく動いていることも実感したことも、また、ひとつの決断の材料だったようです。
今後のことを考えると、自分のペースで進められるほうがよいという判断でもありました。
◆いつまで賃貸?
まだ60代とはいうものの、ガンを経験したことからも、そろそろ自分の相続も考えないといけないと思い、相談に来られたのです。Eさんが一番迷っていたことは、自宅に関してでした。
今の住まいは住み慣れてはいるものの、賃貸物件ですのでこの先もずっと家賃を払うことになりますが、果たしてそれでよいのかということでした。
Eさんの財産は不動産の所有はなく、すべて現金と有価証券の金融資産で、基礎控除の4200万円をはるかに超えているため、相続税が課税されることがわかりました。
また、このままではずっと家賃を払い続けることになります。同じところにずっと住み続けるのであれば、今までの信頼関係もあり問題ないかもしれませんが、新たに借り換えする場合では、高齢になるほど借りにくくなります。
◆不動産は必要
そこで、現金があるのであれば、自宅を購入することをおススメしました。100歳までの時代、まだ、15年、20年と自宅での生活が続きます。自宅不動産を購入するだけで、評価は購入価格の半分以下に下がり、居住用の小規模宅地等の特例が使えるようになります。現金のままよりは確実に節税になるだけでなく、老後の住まいの不安も解消できます。
◆戸建てか?マンションか?
Eさんの現在の賃貸住宅は、一戸建てで、子供が小学生になるときから15年ほど住んでいます。一人息子は来年から社会人になる予定で、夫婦2人暮らしになるかもしれないといいます。
これから自宅を購入するには、今まで通りの一戸建てがいいのか、マンションがいいのか、どちらでしょう?という質問もありました。
60代の夫婦の住まいを考えると、これから庭の手入れなどはだんだん負担になり、老後は2階も使わなくなるのが一般的な状況です。となると、駅に近い分譲マンションの方が優先順位が高いと判断されます。その方が評価が下がり、節税効果が高いこともあります。
◆妻に贈与も検討
Eさんは自分で自宅を購入しようと検討されていますが、配偶者には2000万円まで住宅取得資金を贈与しても贈与税がかからない特例があります。それを活用して二人の共有名義で購入しておけば、さらに節税にもなるとアドバイスしました。
今回はEさんがひとりで相談に来られましたが、自宅について色々なアドバイスをもらえたので、妻とも相談して早めに自宅を購入したいと、方針が整理できてよかったと、ほっとしておられました。
財産が金融資産だけというのはシンプルで楽に思えますが、相続税の課税対象になり、特例も使えないことから、自宅だけでも不動産は持った方がよいと言えます。
コラム執筆