事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

自宅マンションが法人名義。メリットもあるが、デメリットも。これからどうする?

■法人を経営

Kさん(50代男性)は大学を卒業後、上場企業に就職。10年間、営業職を経験したのち、独立。30代で法人を立ち上げて、コツコツと仕事を続けてきました。

Kさんの会社の主業務は保険の乗り合い代理店で、生命保険と損害保険の両方を扱っています。顧客は主に法人で、経営者や従業員の退職金積み立ての保険などが主な商品となります。他にも自動車保険や火災保険も扱っているので一定額の固定売り上げがあり、安定しており、会社は28期を迎えています。

 

■預金が貯まってきた

独立後、しばらくは賃貸マンションを借りていましたが、近くに分譲マンションが建築中だと知り、購入することにしました。Officeにも通いやすく住み慣れた立地です。独立して10年経ち、仕事も順調でしたので、個人の預金もマンションが買えるほどの金額になっていたことも購入しようと思った理由でした。

顧問税理士に相談すると個人よりも、法人名義で購入したほうがいいというアドバイスでした。

 

■個人のお金を法人に貸付

顧問税理士は法人にはそれだけの預金がないこともわかっていましたが、個人の預金を法人に貸し付けて、それでマンションを購入すればいいというのです。Kさんは顧問税理士に勧められるまま、個人から法人に貸し付け、マンションは法人名義で購入、社宅としてKさんが住んでいます。

これで15年が経過。Kさんは60代になり、社員も増えてきたので、事業承継も考えるようになりました。Kさんは結婚して妻がいますが、会社には関わっていません。夫婦には子どもがいないため、事業承継は従業員など、他人になります。まだすぐにではないかもしれないが、いまから事業承継を視野に入れて準備しておきたいと相談に来られたのです。夢相続では、Kさんのこれからのためにオーダーメード“ほほえみ相続プラン”の説明をして、Kさんより委託を頂きました。Kさんの財産や家族関係に関して課題を整理し、対策を提案していきます。

 

 

■法人名義のマンション

Kさんは法人の創業者であり、株も100%自分が所有しています。けれども事業承継者が決まれば代表から代表権のない会長になるなど権利が移ります。株も譲渡することになり、退職金の一部として現在住んでいるマンションを受け取ることも可能ではあります。けれども、そうすると会社への貸付金が残ることになります。この貸付金を残したままでは、Kさんにとっては資産となり、相続税も課税されてしまうのです。

   

 

■貸付金は債権として課税される

貸付金は9500万円で、マンションの購入価格です。そっくり貸し付けていますので、法人は預金を減らすことも、金融機関からの借り入れをすることもなく、マンションが購入できています。貸付金を返済していくのが通常ではありますが、余裕があるときに返済しようと考えて、いままでは返済せずにずっと借入金として計上している状態でした。

仮にこのままの状態で急な相続になってしまうと貸付金は債権として相続税が課税されます。また、自宅の所有はないため、小規模宅地等の特例は使えません。

Kさんには預金、有価証券、保険など他の財産もあり、合計すると2億円を超えることがわかりました。きょうだいもいないため、基礎控除は1人分3600万円のみ。相続税は5000万円以上になるという計算になりました。

 

■マンションの評価は?

相続の場合、土地は路線価で計算、建物は固定資産税評価で計算されます。Kさんが住んでいるマンションは土地、建物で3500万円。時価の37%となっています。相続では時価ではなく、相続評価になりますので、時価の半分以下の評価になるのが一般的です。

 

■課題解決の提案1・・・貸付金を返済、マンションを買い取る

法人への貸付金は額面が債権として個人の相続財産となります。よって法人から個人へ返済し、そのお金で法人名義のマンションを個人名義に変えることを提案しました。すると債権から不動産評価に変わるため、相続税は節税できます。

法人は固定資産と貸付金がなくなりますが、購入額での売却であれば法人税はかかりません。

実際にはお金の移動はなく、契約書の作成と、所有権移転登記の手続きでよいと言えます。

 

■課題解決の提案2・・・有価証券を解約、賃貸不動産に

Kさんの財産の中には有価証券があります。以前から保有している上場株が値上がりして1億円以上の価値になっています。配当もありますが、このままでは評価が下がらず、相続税対策を考えるのであれば、株を売却して賃貸不動産を購入することで評価は半分以下になります。

 

■これからすること

Kさんはいままでは会社運営に全力で取り組んできて、全体を見直す余裕がなかったとのこと。事業承継を見据える年代になり、次世代へ渡しやすく法人の内容もシンプルにし、個人の財産も妻の負担にならないように対策をしていくとのこと。方向性が見えたので、気持ちが楽になりましたと言っておられます。

具体的な対策となる自宅マンションの名義替えは決算期を見て取り組めますし、個人の不動産購入も徐々に取り組んでいきたいとのこと。

実際に法人からリタイヤする時には30年ほど運営してきた実績により退職金が支給されることになっているため、その時には再度の見直しと対策が必要なこともお伝えしてあります。

なお、現状では、自宅も賃貸物件もないため、妻の配偶者税額軽減の特例しか使えませんが、自宅や賃貸不動産を所有すると小規模宅地等の特例が使えるようになります。そうしたこともメリットになると伝えてあります。

 

■小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合には、80%又は50%まで評価額を減額できる特例です。

例えば、被相続人の自宅の敷地の相続税評価額が1億円だったとします。この土地に小規模宅地等の特例を適用すると2,000万円の評価で相続税を計算することが出来るのです。

被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地は、相続人の生活基盤となる非常に重要な財産であり、このような財産にフルで相続税をかけてしまうと相続後の相続人の生活を脅かす可能性もあるため、このように大幅に評価減できる特例措置が設けられているわけです。

小規模宅地の特例を適用するための要件

最大で相続税評価額を8割減できるこの特例ですが、要件が非常に複雑です。
要件を満たさないと相続税額が何千万円も増加してしまう可能性があるのでしっかり確認しましょう!

 

減額される割合等

小規模宅地等については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の表に掲げる区分ごとに一定の割合を減額します。

 

相続開始の直前における宅地等の利用区分

要件

限度面積

減額される割合

被相続人等の事業の用に供されていた宅地等

貸付事業以外の事業用の宅地等

特定事業用宅地等に該当する宅地等

400

80%

貸付事業用の宅地等

一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除きます。)用の宅地等

特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等

400

80%

貸付事業用宅地等に該当する宅地等

200

50%

一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等

貸付事業用宅地等に該当する宅地等

200

50%

被相続人等の貸付事業用の宅地等

貸付事業用宅地等に該当する宅地等

200

50%

被相続人等の居住の用に供されていた宅地等

特定居住用宅地等に該当する宅地等

330

80%

 

特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて、限度面積を判定します。

 

出典 国税庁No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁 (nta.go.jp)

 

 

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