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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

親が子どもの家を買えば節税対策になる!現金より不動産で残す!

 

◆父親が亡くなって相続 

Мさん(40代・女性)の父親(70代)が亡くなって、相続の手続きをしないといけないと母親(70代)と姉(40代)の3人で相談に来られました。これから必要になる手続きについて、アドバイスをもらいたいということです。

父親は一部上場企業のサラリーマンで、定年後も再雇用され、70歳まで仕事をしていました。企業の総務や法務関係の仕事をしてきたといいます。

ようやく長年の仕事から解放されたので、ゴルフや旅行を楽しみながら、のんびり暮らしたいと言っていました。いままでに大きな病気をしたこともなく、健康には不安もありませんでした。

ところが、ある朝、呼吸が苦しくて違和感があると言い出し、救急車で病院に搬送されて、治療を受けたものの、その夜に急性肺炎で亡くなったのでした。

本人も、家族も、死に至るとは想像もしておらず、呆然としたといいます。


◆父親の財産はマンションと預貯金、株式

父親の財産は1戸建ての自宅 7000万円と姉の住むマンション2000万円とМさんの住むマンションの2分の1が2500万円の3つの不動産と預金、株式が4000万円、合計1億5500万円です。

相続税の申告が必要だとわかりました。また、遺言書がないので、これから3人で話し合って分け方を決めて遺産分割協議書を作らなければなりません。

不動産は3つあり、それぞれ住まいとして利用していますので、そのまま相続するのが望ましいところです。母親の配偶者の特例を生かすこともできるので、当社で比較案を提案することになりました。

父親はМさんが小学生のころ、いまの家を買って家族4人で住んでいましたが、姉もМさんも結婚を機に実家を離れました。

最初はふたりとも賃貸のアパート暮らしでしたが、それぞれ子どもが生まれて学校のことを考えると自分たちが育った環境がいいとなり、実家まで近いところで家を購入することにしました。

最初は姉家族、姉と夫と息子の3人が住むマンションを買うとなり、現金の余裕がある父親がお金をだしてもいいと言ってくれました。

その後にМさん家族、Мさんと夫、娘2人の住むマンションにもお金を出してくれたのです。

子どもが住む家のために親がお金を出す場合、住宅資金贈与や相続時精算課税制度で贈与という方法があります。

 

◆住宅資金贈与とは?

住宅取得資金贈与の特例とは、自分が住む家の購入や新築・増築のために祖父母や両親から贈与を受けた場合、省エネ住宅であれば最高で1,000万円、その他の住宅なら最高で500万円までの贈与が非課税になる制度です。
この制度は期限があり、令和5年12月31日までの間に適用できます。贈与税の基礎控除110万円と併用できるので、1回で1,110万円を贈与しても贈与税はかかりません。

ただし、適用するには次のような要件を満たす必要があります。

(1) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。
(注) 配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
(2) 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
(3) 贈与を受けた年の年分の所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)であること。
(4) 平成21年分から令和3年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと(一定の場合を除きます。)
(5) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、またはこれらの方との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと。
(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
(7) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が外国人贈与者または非居住贈与者である場合を除きます。)
なお、贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。
(8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することまたは同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。


◆相続時精算課税制度とは?

「相続時精算課税制度」は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。贈与時には贈与財産に対する軽減された贈与税を支払い、その後相続時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税額を精算します。

相続時精算課税制度を選択すれば最大2,500万円の特別控除を適用することができ、2,500万円を超過した贈与財産については贈与税の税率が一律20%となります(贈与財産の種類に制限はありません)。

ただし、相続時精算課税制度を選択して特別控除を適用した最大2,500万円の贈与財産については、贈与者の相続発生時(死亡時)の相続財産に持ち戻して、相続税額の計算を行います。

このように、贈与の際に最大2,500万円までは贈与税の対象から控除するものの、贈与者の相続発生時に贈与財産を相続財産に持ち戻した総額に対して相続税を課税するため、「相続時精算課税制度」と呼ばれているのです。

 

◆相続時精算課税制度の改正 110万円の基礎控除を創設

暦年贈与における生前贈与の相続財産への加算期間が3年から、7年に延長されました。また、あらたに相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が創設されました。

暦年贈与は、受贈者1人あたりにつき、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額が110万円(贈与税の基礎控除)以下であれば、贈与税がかからない贈与制度のことです。現行では、被相続人の相続開始前3年以内に行った贈与財産は、相続財産に加算した上で相続税の課税対象となります。

しかし令和5年度税制改正により、相続財産への加算期間が「7年間」に延長され、贈与財産が相続税の課税対象となる期間が拡大されました。

相続時精算課税とは、原則60歳以上の父母や祖父母などから、18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫に対して贈与者ごとに累積2,500万円までの贈与財産については贈与税がかからないものの、贈与者の相続発生時に相続財産に加算して相続税を課税することとなります。

さらに令和5年度税制改正により「基礎控除」が創設され、年間110万円までの相続時精算課税贈与は、相続財産に加算されないこととなりました。

◆子どもにそれぞれ家を買っていた節税効果は?

住宅資金贈与や相続時精算課税制度を確認しましたが、枠が少ないこと、相続税に加算することなどを考えると、父親名義で購入したほうが節税になるとわかり、そのようにしたといいます。

姉家族の住むマンションは購入価格が5600万円でしたが、相続評価は2000万円。共同住宅でので、土地は全体の一部を所有している形で700万円。建物は固定資産税評価で1300万円。よって現金の贈与を受けるよりは3600万円の評価減になりました。

Мさん家族が住むマンションは新築で最寄駅に直結のところで、9800万円でした。よって姉の夫がローンを組み、父親と2分の1ずつで購入しました。土地評価は900万円、建物は1500万円で、2350万円の評価減となっています。

このように父親が子どもたちの家を購入したお陰で、現金を1億円以上も残すよりは不動産評価にすることでかなりの評価減となっていて、相続税が1455万円も安くなっています。

母親が対策に取り組めるのであれば、今回は母親が全部相続し、納税をなしにします。その後、二次相続までに一戸建ての自宅を売却し、評価が少なくなるコンパクトなマンションに住み替え、余りのお金で家賃が入る賃貸不動産を購入することが理想的だとアドバイスし、検討してもらうようにしました。

 

◆親名義の家に住んでいるとき、家賃は払う?

親名義の家に住む場合、家賃を払った方がいいのか?というご質問が多く寄せられます。家賃を払わないと家賃分が生前贈与にあたるのか?贈与税が発生するのだろうか?という不安も出てきます。

しかし、親名義の家に住んでも生前贈与にはあたらないし、贈与税もかかりません。親子間や夫婦間などの少額の贈与は贈与税の課税対象から外れると法律で決められていますし、扶養親族間での生活費や教育費の贈与には贈与税がかからないこともあるからです。

使用貸借の場合は、相続税評価額を下げる効果はなく、貸家評価はできませんが、現金から不動産に変えるだけで減額評価ができているので十分な節税効果となっていると言えます。

 

◆相続実務士のアドバイス

できる対策

子どもの家を親名義で購入すると評価が下がる分、節税になる
家賃は払わず、使用貸借とする


注意ポイント

現金贈与や相続時精算課税制度では、評価が下がらず、枠が決まっています。 
そこで親がお金を出す分、不動産の名義も取得し、相続で渡すようにします。
家賃を払わない使用貸借として、贈与税ではなく相続税の対象としたほうが基礎控除が大きいので得策です。

 

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