事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

許せないまま15年!病気になり、子供に迷惑かけないようにしておきたい!

◆父親の相続から15年。なにも進んでいない

Sさん(70代・男性)は15年前に父親を亡くしました。
両親とSさん家族が同居しており、妹は嫁いで家を離れています。地方都市ということもあり、昔ながらの家督相続の流れが残る地域でしたので、長男が親と同居して、老後の面倒も看て、家やお墓を継ぐのも長男の役目というのが当たり前の感覚でした。
そうした背景があり、母親もSさんも、父親の財産は母親の分もSさんが引き受けることでよいという考えでした。当然、妹もそうした内容で理解があると思ってきましたので、深く考えることもなく、葬儀のあとに切り出したところ、思いがけず、協力できないと言う返事だったのです。
まったく想定外のことで、何が気に入らないのか判断できず、その後、妹は話し合いに応じなくなってしまったのです。

 

◆自宅は法定割合で登記、保全した

Sさんと母親は妹の態度に激怒し、それでもなんとか説得しようと試みましたが、なしのつぶて。仕方なく、自宅の土地・建物は法定割合で登記をしたのです。これは遺産分割が決まったからではなく、緊急措置として、保全しておくためのものでした。
父親の財産は自宅の他に預金が数千万円ありましたが、それは母親が生前に引き出していて、自分の口座で管理をしていましたので、生活費の支払いには困ることはありませんでした。
しかし、自宅が共有名義のままでは、個々の財産にできずに、価値が半減します。話し合いのつかない妹の名義があることで何もできないまま15年が過ぎてしまったのです。

 

◆妹が病気に。自分の子供を巻き込みたくない。

今年の春、思いがけず妹から手紙が来たとSさんが相談に来られました。「自分が病気になり、母親よりも早く逝くかもしれない。ついては父親の遺産分割について子供に迷惑をかけないように済ませてしまいたい」という趣旨のことが書かれていました。
これは解決するチャンスなので、この機に遺産分割協議をして、父親の財産を分けて手続きを済ませるようアドバイスしました。しかし、Sさんは感情的なしこりがあるため、直に話をするとケンカになるので、夢相続にすべて任せたいと言うことで、委託を受けて手続きをすることになりました。

 

◆妹の本音。お金の問題ではない。

Sさんの妹さんに話を聞いてみると、「自分は実家から離れて、夫名義の家に住んでいるので、実家の不動産はいらない。兄が相続してくれたらよいと思っていたが、葬儀のときになんの説明もなしにいきなり“放棄の書類にハンコを押せ”と言われて、その横柄な態度が許せなくなった」と言われたのです。
妹は実家からは離れた他市に住んでいるので、母親の介護などもできないと思っていて、その分兄が多めに相続することも反対するつもりはなかったのに、最初の態度から当たり前のように物事を進めるので、余計に許せなくなったとも

 

◆正式な遺産分割協議で名義をはずせる

不動産が法定割合で登記をされていても、妹が納得した登記でないため、今回、正式に遺産分割協議書を作って登記をし直すことで、相続手続きをすることができます。そうすることで親族間の売買ではなく、相続登記ができ、代償金を払うことも贈与税の対象からは外れます。
妹の希望はいままで不本意な思いをした分を現金でもらえたら、遺産分割協議に応じるという本音を聞き出すことができましたので、母親が預かっていた父親の預金から支払うようにし、自宅はSさん名義とします。二次相続を考えて、母親が受け取る財産はないとする遺産分割としました。

 

◆母親の相続前に手続きができた

母親は90代。父親の相続手続きができていないことをずっと悔やんでいましたので、ようやくほっとできたようです。母親の財産はわずかな預金だけですので、この機会に妹へ生前贈与し、残りはすべてSさんに相続させるという内容の遺言書も作成しました。妹は生前贈与を受けたことで、母親の財産については遺留分を請求しない旨の覚書にもサインしましたので、次の不安もありません。

 

相続実務士より

最初のアプローチを間違うと取り返しがつかない

妹からは「15年も意地を張ってきたが、間に入ってもらって、解決できてよかった。これで子供に迷惑をかけずに済むので、本当に良かった」と言っておられました。本来は悪い人ではないのでしょうが、最初のアプローチの仕方を間違ったことで、双方ともに大きなストレスをかかえる日常だったかと思います。

これで関係が戻るかというと、まだ、壁はあり、直に会って謝りたいとか、話をしたいというところまでならないのは残念ではあります。こじれる前にご相談頂いて、もめない進め方をして頂くことが大切だと痛感した次第です。


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