事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

妻子は無関心。賃貸業の会社をつくる意味はあるのか?

◆定年後はアパート大家に

Мさん(60代男性)は公務員を定年退職。第二の仕事人生をスタートさせています。公務員時代は副業も禁止されているため、リタイヤ後に何をするか、まったく考えていませんでした。

60歳で定年を迎え、嘱託の道もありましたが、Мさんは職場に縛られない生活をしたいと思い、アパートの大家さんになる道を選択したのです。幸い、夫婦とも公務員の共稼ぎで、まだ妻は仕事を継続中。二人の息子は独立して、それぞれ家庭を持ち、家も買って円満に生活しています。

 

◆銀行に勧められて会社設立

Мさんは賃貸業を始めるにあたり、いままでに全く経験がなく、本を読んだ程度ですので、いろんなセミナーに出て、賃貸業の勉強をしたといいます。

1棟目は、セミナー会場で知り合った先輩大家さんの紹介で、築30年の木造アパートを購入しました。退職金と預金を合わせて、現金で購入することができましたので、毎月、家賃が入ってくる形を作れています。その後も物件を買い足して、現在は5棟のアパートを所有する大家さんになったのですが、2棟目からは銀行融資を受けるようにしました。その過程で銀行に勧められて、会社も作り、会社で賃貸業を運営しています。

しかし、妻は公務員、子ども二人は会社員で、Мさんをサポートする人はなく、これでいいのだろうかと思い始め、本を読んで相談に来られたのでした。

 

◆借り入れが2億円以上

Мさんが購入しているのはいずれも1棟アパートで、築年数が25年以上のものが4棟。平成の初めの頃に建てられたワンルームで、1部屋は6畳もなく、トイレ、洗面、お風呂が一体になったコンパクトなもので家賃は2万円台~3万円台のもの。

いまのところは需要があり、ほぼ満室で稼働はしていますが、空室になるとリフォーム代の負担は少なくありません。

1棟は築10年ですが、2億円以上で購入しており、返済額が多く、不安があります。

 

◆法人の現状

Мさんは相続プランを委託されましたので、会社の決算書と個人の確定申告書をお預かりして、資産バランスなどを分析してみました。

それでわかったことは次のような項目です。

・会社の決算・累積赤字2071万円から1億7000万円まで膨らむ

年間273万円の赤字を計上しており、今後5~6年は解消のめどはたたないと言えます

累積赤字はほぼ建物の90%の減価償却分として1億7000万円程度まで膨らむことになります

 

 

・収支バランスが取れていない

建物の減価償却費を計上するだけで赤字になるのは、賃貸事業だけでは

収支のバランスが取れていないといえます

物件を売却、借入返済をして支払利息を減らす必要があると言えます

 

・法人の目的

本来は、財産を持つ人以外の親族に役員報酬を支払うことを目的

として設立するのですが、そうした目的は果たされていない状況です

法人で計上している建物の減価償却費を個人事業とすれば個人の所得税の

節税になり、法人の累積赤字は縮小できます

 

・今後の方向性

借入をして法人で賃貸事業をする目的は、賃貸事業を次世代に継承させる

ことだと言えますが、現在では次世代の役員報酬を捻出する余地がなく、

累積赤字が1億7000万円程度まで膨らみ、借入も2億円以上となる法人の

継承を歓迎してもらえる状況にはありません

よってなるべく早いうちに法人の資産を売却し、清算し、個人の賃貸事業に

集約されることが妥当だと判断されます

 

こうした状況をМさんに報告し、計画的に整理していこうとなりました。

 

 

◆相続実務士のアドバイス

●できる対策 

会社の借入を減らし、不安を解消する

会社を維持するメリットが少ないため、清算する

賃貸業は個人事業に切り替える

 

●注意ポイント

賃貸業を大きくする必要もないと判断される場合は、縮小して手堅くすることも対策です。

負債や古い物件を残さず、妻子に歓迎される資産内容へ変えていくようにしましょう。

 

 

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