事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
贈与する土地評価300万円。3人に分けると贈与税がかからない!
◆きょうだい隣り合わせで
Aさん(50代女性)は父親の自宅の土地の一部を借りて、家を建てて住んでいます。
建物はAさんの夫とAさんが2分の1ずつという割合で、ローンを借りました。土地は父親名義ですので、使用貸借として借りています。
Aさんには弟(50代)がいて、長男ということで、両親の家に同居してきました。
家が老朽化してきたことや手狭になったことから、家を建て直す時には同居する弟もローンを借りて建てましたので、建物は父親2分の1、弟2分の1となっています。
■父親の相続で共有財産にした
もとは父親の土地が70坪あり、父親の家が建っていますが、Aさんの建物を建てるときには、土地は担保提供する条件で、分筆をしています。よって父親の家が40坪、Aさんの家の土地が30坪です。
父親が亡くなった時、父親の土地は、母親と長男とAさんの3人で相続しました。母親と長男が住む土地は、母親と長男が2分の1ずつで相続、Aさんの住む土地はAさんが相続し、現状の利用により、相続の手続きをしたといいます。
■母親が亡くなった時にしておきたい
父親の相続から3年経たないときに、母親も亡くなりました。当社へは母親の相続の手続きをお願いしたいと、きょうだいで来られましたので、依頼を受けて、相続後のコーディネートを担当しました。
母親は遺言書を残さなかったため、Aさんと弟の2人で遺産分割協議をするのですが、現状の利用に合わせて相続することは合意ができており、大きな問題はないと言えます。
けれども、気になっていることがあるといいます。それは、母親と弟が住む土地の一部は、Aさん家族が使っていて、暗黙の了解となっていることです。10cm程度のことですが、その部分まで植木をおいて使っているのです
■この機会に分筆、母親名義は相続で渡せる
弟もこのことは了解しており、Aさんのきちんとしておきたいという言葉にうなづいていましたので、当社で方法を提案しました。
まずは、母親と弟名義の敷地を測量し、間口10cm分の土地を分筆しました。母親と弟名義の土地のままで、20㎡の土地ができました。この土地をAさん名義にする方法を検討しました。
まずは母親名義の部分は相続で手続きができますので、自宅の土地は弟に、あらたに分筆した土地の2分の1はAさんにという遺産分割協議をして、名義替えしました。
分筆した土地の路線価は㎡あたり30万円なので、20㎡で600万円となります。うち半分の300万円は相続しますので、母親の財産は他と合わせても基礎控除の4200万円以下ですので、相続税はかかりません。
けれども残る弟名義の土地も評価が300万円ですので、どのような方法でAさん名義にするかにより、税金も変わります。
◆弟名義の土地をAさん名義にするにはどうする?3つの方法がある 1.遺贈
分筆した土地は母親と弟が2分の1ずつで所有しています。そのうちの母親名義は相続で、Aさんに名義替えしても、弟の名義2分の1はそのままとなっています。
その弟名義の2分の1をAさん名義にするには3つの方法があります。
1つは「遺贈」です。弟の相続のときにAさんに贈与するため、遺言書を作成し、相続人ではないAさんに渡す方法です。弟には配偶者、子どもがあるため、姉のAさんには弟の相続人にはなれないのですが、遺言書を作成しておけば相続のときに渡せます。相続税がかかるのであれば負担することになりますが、不動産取得税はかかりません。
名義替えの費用が一番少なくて済むのですが、いつ弟が亡くなるか、わからずうんと先になると言えることや弟の他の財産も合わせると相続税の課税対象となるため、得策ではない結論となりました。
■弟名義の土地をAさん名義にするにはどうする?3つの方法がある 2.売買
つぎの方法は弟からAさんが買い取る「売買」です。親族であれば安い価格で売買したくなるところですが、路線価評価で売買するのが無難だという判断になります。
よってAさんが弟に300万円を払って買い取り、弟は譲渡税を負担することになります。
この案ではAさんが300万円用意しなくてはならず、負担が大きいため、お勧めできないという結論になりました。
また、Aさんには名義替えの費用と不動産取得税もかかります。
■弟名義の土地をAさん名義にするにはどうする?3つの方法がある 3.贈与
つぎの方法は弟がAさんに無償であげる「贈与」です。Aさんの費用負担はなく、無償で弟がAさんに渡すことになりますが、弟もこれでよいとなりました。ただし、贈与税の非課税枠は年間110万円しかないため、Aさんひとりが1度に贈与を受けると贈与税は10%19万円かかります。また、売買と同様に名義替え費用の他に、不動産取得税も課税されます。
そこで当社が提案したのは、弟から、AさんとAさんの夫とAさんの長男の3人に3分の1ずつ贈与するという方法です。1人分では100万円の評価の土地を贈与受けることになりますが、非課税枠110万円以内なので、贈与税がかからないのです。
この方法で進めようと、弟もAさん家族も合意ができましたので、
このように、贈与は現金だけでなく、土地でもできます。さらに贈与税がかからない割合で贈与することにより、負担も減らせることになります。
Aさんも弟も提案してもらって課題が解決できてよかったと安堵されていました。
■「贈与税」について
贈与税とは、両親や親族からお金や不動産などの財産をもらう際、受け取る方に対して課せられる税金です。
課税方式は一般的に1月1日から12月31日までに贈与を受けた金額を合計し、1年分をまとめて申告して納税する「暦年課税(れきねんかぜい)」が採用されています。
暦年課税の計算方法
暦年課税は年間110万円の基礎控除があるため、下記の数式で算出することができます。
暦年課税による贈与税 = (課税額-110万円) × 税率
こちらの数式より、贈与を受けた金額が110万円以下の場合、贈与税の申告は不要です。
下記、基礎控除後の課税価格別に課せられる税金です。
一般贈与(一般税率)
兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。
基礎控除後の課税価格 |
200万円 |
300万円 |
400万円 |
600万円 |
1,000万円 |
1,500万円 |
3,000万円 |
3,000万円 |
税 率 |
10% |
15% |
20% |
30% |
40% |
45% |
50% |
55% |
控除額 |
‐ |
10万円 |
25万円 |
65万円 |
125万円 |
175万円 |
250万円 |
400万円 |
■土地を取得したときの税金
不動産取得税とは、土地や建物といった不動産を購入、譲渡などの方法で取得した際に支払う税金です。
受け取る側が支払う税金で、下記の数式で算出することができます。
不動産取得税 = (固定資産税評価額 × 1/2) × 3%
登録免許税
登録免許税は住宅を所有した際、法務局に土地の所有権を記録・公示するために必要な手続き時に支払う税金です。
税の負担者は贈与を受け取った方で、登録免許税の算出式は下記の通りです。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 2%
なお、土地を相続する際は不動産取得税が非課税となり、登録免許税は固定資産税評価額 × 0.4%となります。
そのため、贈与の方が相続よりも課せられる税金が多くなるということが言えます。
最初のご相談は無料です。
TEL:0120-333-834
お気軽にお問い合わせください
コラム執筆