事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
遺言書はあるが!順番が逆なら生かせない!
◆土地は同居する母親名義
Sさん(50代・男性)がご夫婦で相談に来られました。
Sさんは長男で、結婚してからもずっと両親と同居をしてきたといいます。家を建て替えた15年前、建物は高齢になった父親ではなく、Sさんがローンを借りて建てています。その後、父親は10年前に亡くなり、土地は父親の遺言書により母親名義となりました。
Sさん夫婦のふたりのこどももすでに独立しているので、現在は母親とSさん夫婦が暮らしています。
◆母親の財産
専業主婦だった母親の財産は1億2000万円。先に亡くなった父親から相続したもので、 自宅の土地・建物が4500万円、預金が4000万円、株式1500万円、保険が1500万円という内訳です。Sさんのきょうだいは妹が二人で、ふたりとも嫁いでいますので、母親は自宅の土地は当然、同居して面倒を看てくれる長男に相続させる予定だと言います。
嫁いだ娘二人には預金を半分ずつとし、株式はその後の祭祀を承継する長男にと決めています。保険は500万円ずつ3人が受け取れるようにしてあります。
◆遺言書も作ったが・・・
母親は父親が遺言書を作成していたことから、自分もそのようにしたいと思い、自筆で遺言書を作成しています。内容は長男にも子どもたちにも話をしてあり、分け方についてはみな納得しており、争いにはなりません。
ところが、Sさんが会社の健康診断で再検査の指摘をされて、検査を受けた結果、病気が進行していると言われたのです。
80代の母親はどこも悪いところはないほどですので、Sさんは自分のほうが早くなってしまうかもしれないと不安になりました。そうなると母親の相続のときは自分がいないかもしれないということなのです。
◆遺言書が無効になる
母親は当然、自分のほうが先に亡くなることしか想定していませんので、「自宅の土地や株式は長男に相続させる」としか書いていません。これでは、Sさんにとされた内容は実現できず無効になるのです。
そこで、万一、母親よりもSさんが先に亡くなった場合のことも想定した遺言書にしておく必要があることをアドバイスし、母親に遺言書を作り直してもらうようにしたほうがいいとアドバイスしました。
母親は自分の意思も明確なので、遺言書の作り直しはできるということです。Sさんは嫁いだ娘よりは同居して面倒を看る妻に不安なく家に住んでもらいたいといいます。
その場合、「自宅の土地や株式は長男に相続させる」の次に「長男が亡くなっている場合は、長男の配偶者に遺贈する」という内容を追加することで遺言書が生かせるようになります。
自筆よりは公正証書のほうが間違いなく、法務局に預けたりする必要もないため、公正証書遺言の作成をおススメしました。
◆母親が節税対策できるか?
母親は80代。まだ、自宅で生活ができて、元気だということですが、認知症を発症したり、体調が急変したりすることがあるかもしれません。父親の相続税の申告を同時期に母親の対策も進めることが必要です。
不動産はSさんと姉名義としたほうが登記の手間が省けます。次に、金融資産をどの程度、母親にするのか、検討して決めることもアドバイスしました。
相続実務士のアドバイス
●できる対策
母親が遺言書を作り直す
長男が亡くなっている場合はその配偶者に遺贈する内容を追加する
●注意ポイント
母親の意思確認ができるうちに公正証書遺言を作り直す必要があります。
作り直しができなかった場合、自宅と株式については妹とSさんの娘二人で遺産分割協議をすることになり、Sさんの妻の権利がありませんので、遺言書は必須と言えます。
最初のご相談は無料です。
TEL:0120-333-834
お気軽にお問い合わせください
コラム執筆