事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
銀行の遺言書&弁護士の遺産分割協議が大失敗!相続は専門家に頼まないと。
■困っているので助けてもらいたい
Мさん(60代・男性)が切羽詰まった表情で相談に来られたのは15年前。「相続税は不動産で減らせ」(PHP研究所)という書籍の日経新聞の書籍広告を見て、電話をしてこられました。
Мさんにすぐに来て頂いて、状況をお聞きしましたところ、「父親が亡くなって相続手続きをしているが、どうにも進まず、困っているので助けてもらいたい」といいます。
Мさんの父親は地域の名士で11代目。跡継ぎのМさんが12代目となります。父親は土地持ちで自宅は2000坪の敷地、駐車場やアパートなどが10か所、貸宅地が20か所ほどもあり、財産評価は20億円以上にもなります。
■一流メンバーでチームを作った
M家は代々の地主さんですから、資産管理会社を運営しています。父親が代表で実務は従業員さんが担当していました、
Мさんは大学卒業後は、公務員として仕事をしていたのですが、父親の希望もあり、退職して、父親の会社を継ぐことになり、40代で代表者を承継していました。
けれども、不動産の賃貸事業の実務はベテランの従業員さんが担当してくれていたため、ほとんど任せきりにしていたと言います。そのころのМさんは商工会やロータリーなど地域の活動が多かったといいます。そのため、相続になるまでは父親の所有する不動産の内容については、あまり把握していなかったというのが実情だったのです。
■銀行の遺言書の適当さが発端に
相続人は母親と跡継ぎのMさんと嫁いだ妹の3人です。父親は都市銀行で公正証書遺言を作成していましたので、亡くなったときから、遺言執行者の都市銀行が担当しました。
ところが、この遺言書がことの発端になったといいます。なぜかというと、遺言書には全部の不動産を網羅しないといけないところが、何か所も記載漏れが見つかったのです。
夢相続でも公正証書遺言の証人業務を受けていて、公正証書遺言の作成をサポートしていますが、その際は、名寄帳や固定資産税通知をもとに、登記簿とも照合して全部の不動産をチェックし、記載するようにしますので、何か所も記載漏れがあるということはありません。
■一切の不動産を相続する場合もある
不動産を相続する人が1人の場合は一切の不動産を○○に相続させる」という書き方で、1つ1つの不動産を明記しないこともありますが、Мさんの父親の場合は、「自宅は配偶者に」「長男には不動産○○を」「長女には不動産○○を」というように3人ともに不動産を渡す内容だったため、不動産の土地、建物、地番、面積、地目、などを登記簿の記載のとおりに記載しておかなくてはなりません。
よって事前にチェックし、確認しておけば記載もれは防げるということです。
■記載漏れの不動産はどうする?
けれども、Мさんの父親の遺言書は何か所もの不動産の記載漏れがある形で出来上がっているため、相続後に修正することは不可能と言えます。
こうしたときにどうするかというと、記載がある不動産は父親の意思を生かして、遺言書で相続、名義変更の手続きをするようにします。
けれども遺言書に記載がない不動産については、遺言書とは別に、「遺産分割協議」をし、相続する人を決めて、「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。
そこで、Мさんは父親の相続手続きをするプロジェクトメンバーを選任するようにしたのです。
相続税の申告は法人の顧問税理士ではなく、あらたに相続に長けた弁護士法人に依頼。遺産分割協議は、テレビ出演もする有名な弁護士に依頼して、一流のメンバー集めをしました。
■弁護士の強引さから妹とは決裂してしまった
ところが、公正証書遺言に不備があり、遺産分割協議をすることになってから、ぎくしゃくし始めました。すでに遺言執行者の銀行はМさん家族の信頼をなくしていますので、遺言執行者からはずれてもらっていました。
よってМさんが選任した有名弁護士が遺産分割協議を主導したと言いますが、Mさんの意向を優先するあまり、妹の主張は聞き入れようとせず、強引に押し切ろうとしたといいます。妹は遺言や遺産分割の内容が、生前父親から聞いていた内容と違うと再三言ったにもかかわらず、弁護士は聞き入れなかったのです。
押しが強く、高圧的に言動もあってか、妹はMさんが依頼した弁護士は自分たちの意見を聞いてくれないと信頼をなくしました。
それだけでなく、Mさんが財産を多く取得するための策略だと勘ぐり、妹は、仕方なく、別の弁護士を立てて、自分の主張をしてもらうようになりました。
結果、弁護士を立てての争いに発展し、当事者では話ができないほど対立してしまったといいます。
夢相続に来られたのは、こうした状況に追い込まれて、心情的に切羽詰まっておられた時期でした。
■税理士も失敗している
Мさんより委託を頂き、父親の遺言書や税理士法人の書類も確認させてもらい、課題を整理し、問題解決へのプランを作成して提案しました。
土地の評価を確認すると、まだ、節税の余地があることが判明しました。自宅の土地2000坪は評価を下げることができるのに、そうした評価減をしていなかったのです。これだけで、相続税が約1億円節税できるため、相続人全員にとってはメリットになります。
次に、土地の評価が下がることから、配偶者の税額軽減が使える財産の半部の枠も余地ができたため、遺産分割協議をし直して、母親の取得割合を大きくするとさらに相続税の納税額を減らせる予想がたてられました。
さらには、母親の二次相続対策の候補地である広い自宅の土地を、Mさんが相続しており、節税対策が難しい状況になっていることも指摘しました。
■弁護士&税理士で、なぜ、失敗したか?
有名弁護士が担当して、遺産分割協議が決裂し、大手税理士法人が担当して節税の余地が残る結果になってしまったのか?Мさんにお聞きしましたところ、
弁護士と税理士は、Мさんの父親のような大地主の相続の経験値が乏しく、相続の専門家とは言えないレベルでありながら、コミュニケーションも不足しており、節税や二次相続対策の節税まで踏まえた内容を導き出せなかったのだろうと言われました。税理士は、チームを主導する弁護士に遠慮して意見を挟まなかったようです。
■評価減は進めて、他は断念した
税理士と打ち合わせ、土地の評価をし直してもらい、相続税を下げることはできました。Мさんと妹の相続税が下がります。妹にも相続税が下がる理由を資料にして、理解をえるようにしましたので、喜んでもらえました。
次の課題の母親とМさんの相続する不動産を変更するなどしてさらに相続税の納税を減らし、二次相続対策をしやすくする案については、断念することになりました。
妹が自分の弁護士を遺体したのは、Мさんが有利になるように画策したのではと誤解しかねないほど、以前の弁護士の進め方によって決裂してしまっていました。ようやく弁護士同士の話し合いで、遺産分割協議を終えたばかりでしたので、その後のMさん側の提案は何か裏があるのではと勘ぐられるに違いないとなり、母親の取得割合などを変えることは断念しました。
■家族がばらばらになり最悪の事態に
こうして節税の機会を逃したばかりか、家族の亀裂は決定的なものとなり、なんとか父親の相続税の申告は終えられたのですが、妹との関係は最悪の
殻を閉ざしてしまいました。母親も、Mさんも体調を崩し、うつ状態となり、まだ、体調は完全には戻らず、薬が手放せない日常で、修復は望めず、悔いが残る結果となってしまいました。
相続の手続きが始まってから、1年未満の間、いままでとても仲のよい兄妹だったのに、Mさんにとってはこの展開は予想だにせず、都市銀行の遺言書の失敗からスタートし、有名弁護士、大手税理士法人の失敗が重なり、最悪の事態に。
数ヶ月で、母も妹たちもMさんも体調を崩し、鬱病を発症してしまい、病院に通い、薬で症状を抑えながらの日々を過ごしていたといいます。
その後は、体調は回復し、落ちついてはきたものの、本当に大変だったと話して下さいました。
■二次相続対策は土地を交換して効果を捻出
二次相続対策となる母親の賃貸事業の土地については、Мさんが相続した不動産と等価交換することを提案しました。そのようにすることで母親の相続税は節税でき、その後に公正証書遺言を作成してもらいました。
相続税が節税できたことは妹にとってもいいことなのですが、なにごともМさんが自分が有利になることという受け止め方が払拭できずに、弁護士の遺産分割協議の進め方が致命傷になったと嘆いておられました。
円満だった家族なのに、争いを誘発し、ばらばらになってしまった相続になり、失ったものの代償は大きいと言えます。自分の健康も、家族の信頼も代え難いものだけに、いくら有名で優秀な専門家を揃えたとしても逆効果になりかねません。専門家選びを慎重にしなければならないことも必要で、争いを引き起こさないことが大事です。
■この事例の教訓
・相続人と専門家、専門家と専門家のコミュニケーションが取れていなかった
→相続人全員と専門家チームが常に情報共有しながら進めるようにすることが大事
・弁護士が高圧的で相続人の意見を聞いてくれなかった
→一部の意見を押し通そうとするのではなく、全員の意見を聞いくことが大事
■頼むなら、こんな専門家を探したい
・自分の意見を押しつけるのではなく、全員の話を聞いてくれる人
・各人の意見を聞いて、オープンで公平な手続きをしてくれる人
・一部の相続人の暴走を止めてくれる人
・専門家間の適切なコミュニケーションを取るようにコーディネートできる人
最初のご相談は無料です。
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