事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
駐車料金の4.3ヶ月分が固定資産税でなくなる!いつまで空地を維持する?
■父親から220坪の土地を相続した
Мさん(50代女性)の父親が亡くなったのは20年前。父親の財産は10億円を超えていましたが、ほとんどが土地。アパートを建てたり、店舗を建てたりして賃貸事業をしていました。
長女のМさんは嫁いで実家を離れていましたが、父親が守ってきた土地は、弟に任せるだけでなく、自分でも相続して守っていきたいという想いで、220坪の土地を希望して相続しました。
■駐車場の固定資産税は年間160万円。駐車料金の4.3ヶ月分
それから20年。隣接する店舗を運営する法人に駐車場として一括貸しています。
駐車場の月額利用料は37万円入るのですが、固定資産税は年間160万円。実に駐車料金の4.3ヶ月分は固定資産税の支払いでなくなるのです。
さらに今年3年毎の固定資産税更改の年にあたり、年額2.7万円も増額されてきましたので、どうしたものかと相談がありました。
固定資産税の増額分については、駐車料金を改定し、借主の法人に負担してもらうようにするようアドバイスしました。
■父親の相続のときのいきさつは?
◇相続事情
Мさんの父親は代々地主さんで、貸家や貸店舗を所有する不動産賃貸業をしておられました。Мさんの生みの母親は若くして亡くなったので、その後、現在の母が後妻として来られましたが、2人の子供が幼い頃だったので、実の
母親に育てられたので、感謝しているとのこと。
父親は一家を仕切ってきましたが、晩年は高齢になったことから、賃貸業を弟に任せるようになりました。弟は、それまで会社務めをしてきたのですが、父親の後を継ぐ名目で会社を辞め、父の跡継ぎとして不動産賃貸業の会社に入社、現在は社長となっています。そうして親が亡くなったのですが、遺言書がないので、遺産分割協議をするときになり、不協和音が噴出してきました。
Мさんはすでに嫁いだ立場で、相続人は実家に住む母親と弟の3人です。母親は一緒に住む弟夫婦に気兼ねがあるのか、相続の手続きを仕切ったのは弟でした。
◇課題
父の代から賃貸業の申告のために頼んでいる税理士さんがあり、実家にいる弟
が全面的に信頼していることから、相続税の申告もその先生に依頼するとのこと。古川さんにすれば、嫁いでから実家の様子はわからないので、弟が仕切るのは仕方がないとしても、全体像がわかりません。しかも弟が依頼した税理士はどうも相続には慣れていないようで不安があるます。
そこで、私の本を読んで、こちらに相談に来られたのでした。自分が納得する相続をしたい、できるだけ節税して、父の財産を残したいという気持ちです。弟にもこちらを推薦したので、申告もこちらに依頼をしたいという意向でしたが、それは弟が譲りません。しかし、申告する税理士は遺産分割協議には入ろうとせず、決まれば計算するという態度です。Мさんの依頼で当社がコーディネートをすることになりました。
◇解決へのアドバイス・・・配偶者の割合を高めて節税する
弟は自分が大部分を相続したいようで、母親へは3割程度の財産を相続させるという案を出してきました。Мさんは苦労をかけた継母には多く相続してもらいたいので、納得できないとのことです。それに無税の特例の枠も残っており、納税の負担を減らすために、配偶者の特例を生かせるように弟の相続を母親へ変更することを条件に出しました。これで、納税額を約1億円減らすことができました。
Мさんへは全財産の5%程度の現金ではどうかと提案してきました。納税分も用意するので手取りで数千万円という提示です。しかし、Мさんの希望は、父親が苦労して維持してきた土地は残したいのとのこと。会社を辞めて家の財産でのうのうとしている弟に対しては信頼できないところがあるというのです。そこで、こちらは法定割合相当を現金と土地で要望することにしました。
Мさんは実家を離れて久しく、父親の土地の所在の全部はわからないとのこと。先方の税理士に送ってもらうよう依頼しても送られてこないため、名寄せ帳をもとにこちらで調査し、貸し駐車場になっている角地の土地を選択、交渉したところ、かなり難色を示されましたが、最終的には承諾を得られました。現金を合わせて法定割合とすることも承諾をもらえたので、その現金で納税もできました。
遺産分割協議が申告期限に間に合わないと未分割の法定割合となることから、期日が迫っており、税理士からも法定相続分で申告を勧められたようです。しかし、弟も長引いても得策ではないと判断したようで、申告期限の前日に調印、当日に申告、納税ができたのでした。
□相続実務士より
Мさんは書店で30冊以上の本の中からこちらを選んで来られました。実の姉弟なのに双方とも相手を信頼できず、遺産分割は難航しました。しかし、時間がないことが幸いとなり、これ以上、争わない決断をされたことは幸いと思えます。
Мさんの実印は父親が作ってくれたもので、納得いかない書類に押すわけにはいかないと決意しておられたようです。また、父親の事業を継いだ弟に対しては、誰のおかげで今の自分があるか、しっかり自覚してもらいたいとも言っておられました。ともに両親や家を思う気持ちは変わらないのに、本人達の溝は深いものがあると感じました。
実の姉弟ですから、この先、わだかまりがなくなることを祈るのみです。
そうして、これから20年が過ぎたわけですが、後妻さんは90代でまだご健在。二次相続はこれからになります。
次の相続のことも気にはなりますが、それよりも更地で維持して来られた土地については、更地のまま維持することはメリットが少ないと言えます。
■土地は建物を建てると固定資産税は6分の1になる
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対し、各自治体の固定資産課税台帳に登録されている人に課税されるもので、所有している限り納税の義務があります。
土地の固定資産税額は、評価額の1.4%として計算されますが、建物が建っている土地の場合、200㎡までの土地に対しては住宅用の特例として6分の1に軽減されます。200㎡以上の土地は3分の1に軽減されます。
よってМさんの土地の固定資産税は建物を建てることにより、160万円から45万円程度に減額されることになります。
建物の固定資産税は当然増えることにはなりますが、家賃が入る賃貸住宅を建てるとその家賃収入から固定資産税を負担すればよいため、持ち出しにはなりません。
■いままでの固定資産税は3000万円以上。いつまで維持する?
Мさんが20年で負担した固定資産税は実に3000万円以上とまとまった金額になります。それを上回る駐車場収入があるから維持はできているのですが、それ以上のプラスにはなりません。
土地は建物を建てて住んだり、貸したりしてこそ、本来の価値がでると言えます。父親の土地を相続して維持する目的は達成できているとはいえ、そろそろ自分の財産として土地の価値を活かせるような活用が必要な時期になっているといえます。
方法とすれば、①賃貸住宅を建てる、②資産組替として売却し、別の立地に買い替える、半分を売却して売買代金で賃貸住宅を建てるなどいくつもの方法が考えられます。これからМさんにご提案して負担のない財産にして頂ければと思います。
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