事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
15年前に遺産分割協議が終わっているが未登記。いまから登記できる?
■相続税の申告はしたのに…
Мさん(70代女性)の父親が亡くなったのは15年前。母親はすでになく、長女のМさんを主とし、弟2人、妹1人の4人で相続税の申告手続きをしました。父親が亡くなってほどなく、Мさんが相談に来られましたので、夢相続で相続税申告のコーディネートをしています。
父親の財産は自宅と預金のみのシンプルな内容でしたが、思いのほか、預金が多く、相続税の基礎控除を超えていました。
自宅には長男が同居していますので、自宅は長男が相続するとし、金融資産を4等分することで全員の合意が得られて、遺産分割協場もまとまり、全員が署名し、実印を押印しています。
そうした内容で相続税の申告も作成してもらい、申告、納税も済ませました。
■弟が自分で登記をしたいと言い出した
自宅は弟がいままでどおりに同居していますので、相続登記は自分でチャレンジしてみるということで、夢相続の業務はひと段落しました。相続登記は法務局に登記申請をするのですが、司法書士でなくても自分で登記申請をすることはできます。
よって滞りなく登記ができているものと思っていました。
ところが、今年になり、Мさんが相談に来られて、内容を聞いてみると、登記をすると言っていた弟が手続きを怠っていて、まだ亡くなった父親名義のままだと言います。
その間、固定資産税の請求は通常通りにきて、弟が納税をしてきましたので、名義が亡くなった父親のままでも大きな問題がなかったと言えます。
■登記法が変わって3年以内の登記が義務
ところが登記法が変わり、いままで特に期限が設けられていなかった不動産の名義替えは、亡くなってから3年以内に登記することが義務付けられ、違反者には罰金も課されることになり、いよいよ2024年から施行されると知り、この機に登記をしておかないとと思い、手続きをお願いしたいとのことです。
弟が登記をしなかったのも特にペナルティがなく、不自由なこともなかったことが要因となっていましたが、Мさんが説明することでようやく納得できたようだと言います。
■手続きには亡くなった人と相続人の書類が必要
相続登記の手続き自体は変わっておらず、亡くなった人の戸籍謄本、住民票、相続人は戸籍謄本、住民票、印鑑証明書が必要で、遺産分割協議書に署名の上、実印を押印して完成させます。
父親が亡くなった当時、すべての書類は整えてありますので、いつでも相続登記ができる状況となってしました。
<相続登記に必要に書類>
【1】亡くなった人の出生から死亡までの戸籍
【2】亡くなったことの住民票除票
【3】相続人全員の戸籍謄本、住民票
【4】相続人全員の印鑑証明書
【5】遺産分割協議書
【6】固定資産税評価証明書
【7】登記委任状
■当時の書類が使えるのか?
Мさんの弟さんの手元には、当時の書類がそっくり残っていますので、そのまま使えるのか、あらためて戸籍関係、相続人の印鑑証明書などからあらためて取り直すのか、司法書士の先生に確認しました。
結果、撮り直しが必要なものは【6】固定資産税評価証明書のみということです。【7】の登記委任状も現在の日で作り直す必要がありますが、【1】~【5】の書類についてはそのまま使えるということが確認できました。
金融機関などは印鑑証明書の期限が3か月以内を条件とされますが、法務局の相続登記には3か月以内という指定はなく、遺産分割協議をしたときの証明として、相続人の本人確認となる戸籍謄本、住民票と印鑑証明書を添付するということです。
戸籍謄本関係をあらためて取り直すとなるとまたかなりの手間がかかりますので、それかが当時のものが、そっくり使えると伝えるとМさんはほっとしておられました。
■それでも登記するひとの意思確認は必要
書類がほぼ揃っていることで登記のハードルはかなり下がりましたが、つぎは、司法書士により、自宅を相続する弟の意思確認が必要になります。弟も70代となり、脳梗塞を発症して入退院を繰り返していますので、Мさんはそれが心配だと言われます。
ちょうど、すこし前に入院したばかりということで、司法書士による本人の意思確認ができるだろうかということでした。
司法書士による意思確認については、司法書士が当人にお会いし、お名前、生年月日、住所、登記の意思などを確認するものです。ご本人に来て頂いてということでなく、司法書士がご自宅や病院など指定の場所に出向いて頂けるとのこと。
これから双方の都合のよい日程を決めて行うことができるので、問題はないといえます。
■70代 次は自分たちの相続準備が必要
このようにほぼ段取りができたことでМさんは少し肩の荷が下りたようです。
父親の相続当時の書類がファイルに整理して保存されていたことが幸いしましたので、この機会に相続登記が終えられそうです。
Мさんはそれが終われば、ようやく父親の相続が終了するので、次に70代になった自分たちの相続準備を考えたいと話しておられます。
Мさんも弟も、独身。弟、妹がいるとはいうものの、生活圏が離れているため、さあとなっても頼れないといいます。
この相続登記が終わった後、ようやく気持ちに余裕ができるようですので、弟、妹の負担にならず、自分たちの不安も解消できるような対策を提案していきたいと思っています。
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