事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
長女の使い込み?母親の預金は引き出されてゼロに!
◆母親が亡くなった
50代男性のKさんから相談がありました。80代の母親が亡くなり、60代の姉と50代の弟の3人で相続手続きをすることになりました。
母親は自宅で美容院を経営していて、5年ほど前までは仕事をしていたくらいでずっと働いてきました。亡くなった父親は公務員で収入は安定しており、2人でお金を出し合って自宅を購入し、他にも2か所の土地を買って、駐車場経営をしてきました。
父親も遺言書を残していたこともあり、同様に母親も公正証書遺言を残しており、姉が執行者となっていました。
◆土地はひとつずつ、預金は3分の1ずつ
母親の遺言書は5年前のもので、ちょうど仕事を辞めた頃に作られています。自宅は同居する姉に、駐車場はKさんと弟に1つずつとなっており、預金は3分の1ずつとされています。母親は生前にこの遺言書を作ったことや内容を3人の子どもたちに言っていましたし、3人とも合意をしていましたので、準備は万端、何の問題もないと思っていました。ところが、そうではないことがあり、相談したいとなったのです。
◆母親の預金はゼロ!
Kさんと弟は仕事を機に家を離れて、結婚を機に自分で家を購入、妻子と住んでいますので、実家に戻って住むことはありません。
姉は一度結婚したものの、離婚して実家に戻り、その後はずっと両親と暮らしてきました。母親の介護もしてもらったこともあるので、姉が実家を相続し、そのまま住み続けることに異論はありません。
問題は預金です。母親はずっとお店を経営してきて、繁盛店となり、成功していると思えますし、自分の収入がありましたので、それなりの預金が残っているはずです。ところが姉が言うには介護費用もかかり、とにかくゼロだというのです。
Kさんがそんなことはないはずだというと、姉は母親からもらったという始末です。
◆通帳も捨てた!
それでも介護してくれてるから母がおろす様に指示していたのかも知れないと思い何も言わなかったのですが税理士さんから贈与に引っ掛かるかもしれないお金が多いと指摘を受けました。
母親の預金は同居する姉が管理をしていて、離れているKさんと弟は任せてきたのですが、姉は前の貯金通帳は捨てたと言いますし、母から下ろしてと言われたておろした後は母親が何に使ったかは知らないと言います。
母親はお店をやめてからは病気が見つかり、この5年間位は入退院を繰り返していて、病院と介護施設を出たり入ったりで、他にお金を使うことは考えられません。
◆贈与は相続財産になる
姉は母親の2つの預金口座から少しずつ引き出して2000万円あった口座はゼロになっています。この他にも満期になった定期預金1000万円も自分のものにしています。いずれも母親からもらったと姉はいうのですが、申告を担当する税理士から、相続財産として加算しないといけないと指摘されました。
本来ならば預金は3分の1とする遺言書により3人で分けるべきところですが、姉は自分がもらったというばかり。
Kさんと弟はお金が欲しいわけではなくて、姉に本当の事を言ってもらいたいという気持ちですが、どのようにすればいいか、迷っているというのがKさんの本音だと言います。
◆他人なら犯罪でも身内には通用しない
亡くなる3年前の贈与は相続財産として加算しますから、まずは相続財産として申告、納税することが必須です。3人で分けることを姉に提案してみるべきですが、姉は母親からもらったので弟たちに分けるなんてとんでもないということでしょう。
まして母親の了解なしに自分のものにしたとすれば他人なら犯罪ですが、身内の場合は判断が難しいため、家族の話し合いで解決することになります。姉が認めなければもらいきりで、一人勝ちという結果となります。
◆調停してもいいことはない
解決する手段として調停に持ち込み、事実を明らかにしていく方法もありますが、母親の依頼で下ろして渡したのであとは知らないと姉が言い張れば、それで済んでしまうこともあり、結果は変わらない可能性が高いと言えます。
理不尽なことですが、姉と同じレベルで争わずとしてしまうことが得策ではないかとアドバイスしました。姉に法律や理屈を突きつけても逆切れされて関係は悪化することは想像に難くありません。
きょうだいよりもお金に頼るのは残念ですが、姉の選択で致し方ないと受け止めて切り替えていったほうが賢明だと言えます。
Kさんは、言わない方が賢明だと思えるので、よい修行だと思って弟とも相談してみます。少し気持ちが軽くなりました。と帰られました。
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