夢相続コラム
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【相続相談の達人コラム】遺言書が最後の贈り物。余命半年の妻から、夫へ。
2019/04/05
肺がんで余命半年と告知された
ある月曜日の朝一、Kさん(60代・女性)のご主人から突然の電話がありました。
先月まで普通に生活していたKさんですが、疲れが取れないとマッサージに通っていましたが、それでも背中の痛みが取れないため、薦められて病院で診てもらったところ、肺がんと診断され、余命半年の宣告を受けたのだと言います。
すぐに入院して治療がはじまったのですが、Kさんは自分の遺言書を作りたいので、段取りをしてほしいと、ご主人がKさんの代わりに来られました。
両親の老後を看るつもりはないと言い切った姉
Kさんは、ご両親に公正証書遺言を作ってもらいたいと相談に来られて、証人業務を担当して遺言書作りをサポートさせていただきました。
最初にお会いしたのは10年以上も前のことです。
Kさんには姉がいますが、両親と姉は波長が合いません。姉は結婚して家を離れてしまい、両親と顔を合わすたびに、権利の主張をするといいます。
両親の面倒を看るつもりはないとも明言して、両親をがっかりさせたばかりか、長女なので、自宅は自分がもらいたいと主張するなど、自分中心なため、姉には財産は渡したくないというのが両親の本音でした。
両親の財産を相続した
次女のKさんは結婚したものの実家のすぐ近くに住み、普段から親のために尽くしてきました。
両親が高齢になり、父親が実家で生活することが大変になったときも、老人ホームを探し、1人暮しになった母親のサポートをし、すべてを引き受けてきました。
両親はそうした状況を踏まえて、勝手なことばかり言う長女ではなく、次女に老後を託し、財産も相続させたいという気持ちで、公正証書遺言を作られたのでした。
財産は両親の共有名義となっている自宅と預金で、それぞれ基礎控除の範囲内でしたので、遺言書によって手続きができました。
そののち、先に父親が亡くなり、その後に母親が亡くなりましたが、普段のKさんの貢献度は明らかで、姉も文句は言えなかったようです。
不安に思っていた遺留分請求もなく、安堵したということでした。
ご両親の遺言書や相続の手続きもあり、この間、Kさんには何度もお会いしてきました。
とても元気な方で、ご主人からお聞きした病気、余命幾ばくもないというのがすぐにはイメージできずに驚きました。
夫婦には子供がいない すべてを夫に
Kさんが遺言書を作ろうと思われた理由はすぐに理解できました。
なぜなら、Kさん夫婦には子どもがいませんので、Kさんが亡くなると相続人としてKさんの姉にも権利が発生します。
一番の気がかりは、両親から相続した実家よりも、ご主人と共有名義で購入し、現在も住んでいる家のこと。
このままでは、姉の権利も発生しますので、財産すべてをご主人に託したいというのがKさんの意思でした。
公正証書遺言ができあがった
すぐに印鑑証明書と戸籍謄本を用意してもらい、公証役場にも連絡して、公正証書遺言の作成準備に取り掛かりました。
通常は早くても1週間後くらいかかるところ、公証人の先生に無理をお願いし、その日の夕方、Kさんの病室に出向いて、公正証書遺言ができあがりました。
なんとなく、急がなくてはという胸騒ぎがしたので、すべて当日に段取りしたのです。
Kさんは、思いの外お元気で、起き上がって署名され、遺言書は完成しました。
「お願いしてよかった!」と、とても嬉しそうな笑顔になられました。「また来ますね」と握手して、病室をあとにしました。
二日後に亡くなった
その翌々日。検査結果では早くて2週間という説明のところ、告知の二日後に亡くなったとご主人から知らせが届きました。
公正証書遺言は、普通であればそんなに急いで作らないのですが、話をする事によりKさんの気持ちがわかり、なにか急がなきゃという思いになりました。
間に合ってよかった。Kさんも本当にほっとされた表情をされていました。
遺産相続評論家・相続実務士のアドバイス
Kさんからご主人への最後の贈り物です。
自分の命が尽きる前に自分の意思を残されたKさん。
忘れられない出来事になりました。
コラム執筆
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