夢相続コラム
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【価値ある相続を実現する】争いになっても解決できた実例1
2021/08/18
【価値ある相続を実現する】争いになっても解決できた実例1
調停を取り下げて遺産分割ができた松下さん
松下家のプロフィール・・・亡くなった母親が一家の実権を握っていた
被相続人 母(不動産賃貸業・貸家、アパート所有)
相続人3人 父(定年後、アパート収入で生活)
長女(結婚して他家へ嫁いでいる)
長男(未婚・無職、父と実家に同居)
母親が一家の実権を握っていた
松下家は母親のきょうだいは、女姉妹だけだったことから、必然的に長女である母親が跡取りということになりました。父親は婿養子となることを条件にして迎えられたのですが、戸籍だけは母親のところにはいったものの祖父と養子縁組はしてもらえませんでした。
そんなこともあって、普段からなんでも母親が主導権を握っていました。祖父が亡くなったときの相続では、当然父親の相続権はなく、ほとんどの財産は母親名義となったのです。家や貸家などが母親名義ですから、どうしても母親の立場が強く、普段から父親の影は薄いのが松下家の特徴でした。
父親と子供の信頼関係がない
父親は落ち着ける家ではなく、普段から夫婦仲は悪く、自分の給料は家に入れるどころか全部使ってしまうという有様で、ほとんど家にも帰ってこない状態でした。二人の子供は母親の味方で、普段から母親の愚痴を聞いてきましたので、父親への信頼はありません。母親は60代半ばにして病に倒れ、半年の闘病の末、あっけなく亡くなってしまったのです。財産評価をすると約1億8000万円。相続税の申告は避けられない額です。
長女が家庭裁判所の調停申し立てをした
長女は他家へ嫁いで10年近く経ちますが、父親への不信感は変わらず、母が亡くなったことを幸いに父親が好き勝手に母の財産を使うのではないかという不安が先に立ちました。葬儀のときから、すでに父親とはギクシャクし始めたので、実家で通帳や現金の確認をしてみましたが、普段は離れているので、わからないことばかりです。父と話をしてものらりくらりで先に進みそうにありません。弟はといえば無関心で協力的ではありません。仕方なく長女は家庭裁判所に遺産分割協議の調停を申し立てました。 調停は二度行われましたが、父親の言い分は自分の権利は確保したいが、子供の申し立てに協力するつもりもないとのこと。とても話し合いにならず、調停員もさじを投げた様子。困った長女は本を読んで相談に来られたのでした。
◆なぜもめたか、検証する!
・二人の子供は、父親に対する信頼関係がない
・親子、姉弟の話し合いが持てないほど人間関係は希薄
・父親は以前より家を空けることが多く、妻の死後はほとんど家に戻っていない
・父親は妻の籍に入ったが養子縁組をしておらず、今回がはじめて財産をもらえるチャンスであり、自分の権利は確保したいという認識
・母親の生前、父親は自由にお金を使える境遇ではなかったので、今度こそ自由にしたいという気持ちである
・長女は父親には松下家の財産を分けたくないのが本音
・父親は相続の手続きをするのに中心になる気持ちはなく、長女が先に動き出したことに立腹している
◆解決はこうした
・父親の実弟に協力を依頼
父親の真意を確認することからはじめないといけないのですが、肝心の父親と連絡が取れません。家にも用があるときにしか帰ってこない状況が続いていました。そこで、父親が信頼をしている実弟から連絡を取ってもらうように協力を依頼し、ようやく何日目かに連絡がついたのです。
・未分割の不利益を理解してもうら
父親は家庭裁判所に申し立てをした長女に腹を立てており、最初は「相続はどうなってもいいので協力するつもりはない」という口調でした。実際、二度の調停で父親は、長女が分割案を出したことに対して歩み寄りはできないことだけを主張していました。
しかし期限までに遺産分割が決まらないと、とりあえずは未分割で申告することになり、その後、分割が決まったときに修正申告をしなければなりません。二度手間で費用も余分にかかり、特例も使えません。また、預金の解約もできないため、いつまでも手元に現金が入らないのです。こうした未分割の不利益を説明すると、それは困ると、理解を得ることができ、協力するという気持ちになってもらえました。
・各自の希望を確認して分割案をつくる
父親の希望は自分の法定割合分は確保したいとのこと。ところが子供達は父親に好き勝手にされたくないのが本音です。しかし、相続税で現金が減ることには不安がありました。
そこで、まずは二人の子供が最終的に相続する不動産を決め、それを配偶者の特例を最大限に利用できる割合で父親と共有にしました。長男は自宅と貸家、長女はアパートという具合で地元に残る長男を多くという長女の配慮でした。
今回は配偶者の特例があり、全部を父親にすれば相続税はかかりませんが、それでは父親だけの権利になり、不本意だということです。父親も法定割合分が確保できればいいと考えていたので、節税しながら、子供と共有することで全員の合意が得られました。
その後、父親には公正証書遺言を作成してもらい、共有者に相続させる旨を明記してあります。
・家庭裁判所の申し立ては取り下げる
こうして父と子の双方を説得し、互いに歩み寄れる部分を引き出したことから、遺産分割協議ができるめどが立ちました。長女には家庭裁判所の調停申し立てを取り下げてもらい、申告期限の間際に遺産分割協議を完成させることができ、相続税を節税しながら、申告を済ませることができました。子供の相続税はかかりましたが、相続財産の預金の一部で払え、十分に現金も残すことができました。
◆価値はココ!
○相続人が信頼している人の協力を得る
話し合いができる状況を作る入り口には相続人が相手の話を受け入れてくれる人を捜すことが大切
○相続に慣れた第三者が調整に入る
相互に説得できる専門家が必要
○未分割申告の不利益を説明
遺産分割協議がまとまらずに申告期限が来た場合、申告を二度しなくてはならないことを説明、余分な費用がかかることを説得材料とする
○家庭裁判所の申し立ては取り下げる
家庭裁判所に申し立てしても結局は相続人の話し合いでしか解決できないので、必要はなくなった
○申告期限までに遺産分割協議をする
遺産分割協議がまとまらずに身内で裁判をしても失うものは大きいので、申告までにまとめるという期限を切る
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