夢相続コラム

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【相続実例コラム】遺産分割・売却:納得しないで印は押せない岡さん

2020/06/11


【相続実例コラム】遺産分割・売却:納得しないで印は押せない岡さん

●相続関係者

被相続人 父(配偶者既に故人)
相続人 子4人(長男、長女、次女・相談者、三女・相談者)

●相続事情

岡さん姉妹はともに独身の50代、40代の女性です。母親を25年前に亡くしたため、家事を切り盛りする必要もあり、婚期を逃したとのこと。父親は、もともとは農家ですが、若い頃より知人と鉄工所の共同経営を始めたことがきっかけとなり、4つの会社を経営するようになりました。全部、自分の畑に工場を建てて運営しており、それぞれが軌道に乗っていることから、父親の商才や人望があったということでしょう。
岡さん兄妹の4人のうち、一番会社経営に向いていたのが長女で、父親がいる頃から全部の会社を仕切っていました。長男も役員として名を連ねていますが、父親が体調を崩して入院する頃からは長女がほとんどを仕切る形で運営されてきました。しかし、会社には勤めず、家のことや入院する父親の世話をする岡さん姉妹にとっては姉が何ら説明をしてくれないため、いつも不安や不満がありました。姉は2人を寄せ付けない高圧的な態度であり、姉妹ながら溝ができている状態で、頼りの兄はおとなしいタイプですから、そうした姉の態度を咎められず、常に姉のペースで進んできたと言えます。

●相談者にこられたきっかけ

父親が亡くなったときも、当然の如く、相続の手続きを仕切ったのは姉です。詳しい説明がないので、ますます不信感がふくらんでいきました。姉妹は父親の財産の内容がわからないのが実情でしたので、まずは内容の説明を求めたのですが、今までの調子で高圧的で 不都合なことは何も説明をしないようなことで、どうも信用できません。どうやら実家を継ぐ姉が、家を出ている岡さん姉妹にはわずかの金銭で済まそうとし、不都合なことは何も説明をしないのではないかと疑心暗鬼になり、姉妹の溝は決定的となってしまいました。
相続税を払うために土地を売るからと言って用意された書類に印鑑を押しましたが、その後が予定通りに進みません。土地の仲介に親戚が入っていることも姉が自分に有利に進めるのではないかと思えました。土地の契約が進んでいるのか、相続税が払えるのか、申告は間に合うのか、いろいろと不安になることばかりで、書店で私の本を見つけて購入し、電話相談をしてこられたことがきっかけでした。

●運命の分岐点・ここがポイント

☆売却地の登記を戻す
売却する土地は、法定割合を主張した分を調整したため、兄24%姉12%姉妹32%ずつ割合となりましたが、売却を急いだため、遺産分割協議前に姉の指示により、すでに法定割合で登記をされていました。仲介に入った親戚や税理士は、納税でお金は残らないから分割協議書の割合と違っても差し支えないという説明でしたが、これから分割協議をするわけですから、錯誤で真の割合に戻して登記をし直しました。

☆土地売却代金
仲介する親戚の話では、相続税を払ったら残らないという認識ですが、姉妹は納税後も手許に残る計算になります。そこで、きちんと各自の明細を作成してもらい、こちらが立ち会った上で、各自の口座に振り込み、そこから納税するようにしました。

☆遺産分割の実行確認
他の財産分与の預金は、全てを姉が管理をしているため、日時を決めて、明細を送付してもらいました。こちらが間に入り、いろいろな交換条件をつけて交渉をしないと現実の財産分与が行われない不安もあるためです。こちらが入ることで、預金の分割や他の土地の登記も実行されたことの確認ができたことで、遺産分割は完了しました。

●相続実務士の視点

岡さんのお父さんは地主さんであり、経営者であり、土地の名士ですが、家庭的には妻を早く亡くされたことから、4人の子供をそばに置くことで家庭を大事にして来られたと考えたいところですが、現実の相続は、姉妹でも他人のほうがましと思えるくらい、壮絶なものでした。実の兄妹でも財産が多いと不協和音はつきものですが、こちらがコーディネートに入った段階でもすでに直接の会話ができない状態でした。
姉妹には、こちらがコーディネートに入ったこともあり、ほぼ法定割合の財産分与で分割協議を終えることができ、今後の生活の不安も無くなったことで大変喜んで頂きました。父親の相続手続きは終わり、納税も済ませることができました。財産を相続することで得るものもありますが、兄妹の絆はなくなり、失うものも大きいと思える出来ごとでした。

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