【相続実例コラム】遺産分割・配偶者・売却：特例を活用してぎりぎりまで節税を目指した川口さん

2020/06/10

【相続実例コラム】遺産分割・配偶者・売却：特例を活用してぎりぎりまで節税を目指した川口さん

●相続関係者

被相続人　夫
相続人　５人（配偶者・相談者、長女、長男、次男、三男）

●相続事情

川口さんは戦後まもなく、夫と２人で内科医院を開業。４人の子供、全員を医者に育て上げ、まさに医者一家を守ってこられました。内科医の夫を助けて医院の切り盛りをしてきてきたのは川口さんで、穏やかな人柄からは想像できないような苦労もしてこられたように聞いています。
川口さんの夫は北海道の出身ながら、大学時代に東京に出てきたことがきっかけで、そのまま近県に移り住み、土地を購入して、開業されたということですが、なかなか簡単な道のりではなかったようです。自宅のすぐ前が医院ですが、自宅も医院の土地も少しずつ買い増していったとのこと。ともに３階建ての建物が建っています。
川口さんの夫は医者ながら、自分では病院嫌い、検査嫌いで、最後まで現役を通した上、体調が悪くなったときには手遅れで手の施しようがないようなことでしたが、入院をいやがり、黙って自宅に帰ってしまうような人だったと懐かしそうに話して下さいました。
小児科と内科の医院ですから、地元で信頼されているので、医者としては満足な日々をおくられていたのではないかと思えます。

●相談者にこられたきっかけ

川口さん夫婦で開業した医院は、夫が発病後、長女夫婦が跡継ぎとなり、運営は平常通りに行われています。長女が内科医、娘婿が小児科医ですので、後継者にはこれ以上の人選はなく、医院の継承は大成功だと言えるでしょう。
自宅の目の前が医院で、娘夫婦が住んでいますから、何でも相談すればいいようなことですが、夫が亡くなったとき、川口さんが相談したのは、他県で開業する長男でした。ご長男は、私の本を読んで相談をしてみればいいのでは、と推薦をしてくれたということです。
親子、姉弟の仲は良く、特に大きな問題もありませんが、相続税をどうして払おうかということが不安材料でした。

●運命の分岐点・ここがポイント

☆二次相続を想定した遺産分割
節税のために配偶者が無税となる財産の半分を川口さんにすることは第一ですが、子供たちにはそれぞれ開業している病院の土地は夫名義であり、その土地を子供が相続するとした場合、川口さんの相続割合が半分にならないことになり、子供の納税が増えてしまいます。そこで、それぞれが使用している土地については、使用する子供と川口さんの共有とし、二次相続で遺産分割の布石とするとともに、無税になる半分ぎりぎりまで調整しました。

☆納税用地は姉弟で共有
相続税に足りる現金はないので、以前看護婦さんの寮にしていた空き家の不動産を納税用の候補地としました。川口さんは納税の必要がないので、子供４人が共有するとしました。納税は相続する不動産の評価により多少の違いがありますが、川口さんとの持ち分割合でほぼ同程度の評価にしましたので、納税用の土地の持ち分も各自４分の１としました。

☆納税資金
２５坪程度の土地ですが、住宅用には適しています。物納も視野にいれて、売却が間に合わなければ物納というつもりでしたが、申告までに売却が決まり、納税は売却代金で済ませることができたのです。納税が間に合わないのではないかと、川口さんは心配をしておられましたが、申告の３ヶ月程前から大まかな評価や納税は把握できており、方針を決めて売却活動に入れましたので、早めに売却をすませることができたのでした。

●相続実務士の視点

川口さんはとても上品な方で、いつもにこやかに話をして下さいます。典型的なお医者様一家で、４人の子供さん全員をお医者様に育て上げることは、金銭的にも精神的にも容易なことではないと想像しますが、そんなことは苦労ではなかったと言っておられました。
現在は、娘夫婦の住む医院の道路を挟んだ向かいの３階建ての広い家に１人暮らしをしておられますので、なにかあれば娘夫婦を頼りにすればいいのでは、と思いますが、どうも娘婿さんとは波長が合わない様子。自分の相続のときに、今回ご主人より相続した半分の財産につき、自宅の土地だけはまだ決めかねているとのこと。
すぐ目の前に住む長女に、と簡単に決まらないところにはっきりとは言えない問題があると感じます。ご主人亡き後、毎日を穏やかに過ごして頂ければ、と思います。気持の整理ができれば、次は遺言書をとお話してあるので、いいタイミングが訪れ、作成することができれば、ようやく安心されるのでは、とも考えます。

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