夢相続コラム

弊社の活動内容や日々のできごと、お知らせなどをお伝えします

いらない不動産は相続放棄しても捨てられない

2022/01/17


いらない不動産は相続放棄しても捨てられない

実家も田畑、山林も妻子には迷惑!いらない不動産は相続放棄しても捨てられない!知っておきたい相続放棄の落とし穴!

空家の実家や田畑、山林は妻子に残すわけにはいかない!

40代のKさん(男性)から相談がありました。父親から地方の実家を相続したものの、実家に戻って住む選択肢は100%ないと言います。空家の実家と田畑や山林は、とにかくいらないのです。
父親が亡くなってから、Kさんが相続することになりましたので、住まない実家や利用しない田畑、山林の固定資産税を払っています。2年過ぎたこともあり、このまま固定資産税を払い続けるのも気が重いので、そろそろ売却するなどして処分したいと考えているのですが、簡単に売れそうになく、処分は難しそうです。
けれどもこのままにすると、自分でもいらない不動産なのに、将来は妻や子供達に相続させることになります。妻子にとっては、何の愛着もない不動産ですので、負担でしかないでしょう。迷惑をかけたくないのでなんとかしておきたいというのです。

両親は離婚、父親はひとり暮らしをしてきた

Kさんの父親は80代で亡くなり、地方にある実家の不動産をKさんが相続することになりました。母親は70代で健在ですが、父親とはもう20年ほど前に離婚していますので、相続人は姉とKさんの2人でした。
姉は結婚して他県に住んでいます。Kさんも大学から実家を離れていて、離婚後は父親がひとり暮らしをしてきました。その後、姉もKさんも父親の介護には当たれないため、父親は施設に移り、そちらで亡くなったのでした。

実家は調整区域で家が建てられないエリア

父親が亡くなったとき、預金が500万円ほどあり、姉と二人で等分にしました。父親は遺言書を残さなかったため、姉とふたりで話し合って決めたことです。相続税の申告は不要でしたので、ここまでは何ら問題なく、手続きができました。
問題は不動産です。父親が所有しているのは、祖父から引き継いだ実家と田畑、雑種地で15筆ほどもあります。価値のある土地ならば大歓迎となるのですが、Kさんも、姉も、歓迎できない状況でした。
というのも、Kさんの実家周辺は市街化調整区域というエリアの中にあり、基本は家が建てられないところなのです。家が建てられない地域は路線価評価ではなく、倍率評価をします。農家の家や昔から建っている家だけが特別に宅地となっていても、利用が制限されるため、一般的な流通がしにくい地域となります。

相続評価は1000万円近くもあるのに

実家の土地は200坪あり、固定資産税評価の1.1倍すると230万円、建物は母屋、物置、車庫など4棟あり、220万円。合わせて実家の土地、建物の評価は450万円となります。
そのほか、田、畑、山林、雑種地などがあり、固定資産税評価額を基本に倍率をかけて出しますと、相続評価は500万円ほどになります。実家と合わせると950万円ほどとなります。
預金の500万円よりも、相続評価は高いのですが、そもそも姉もKさんもと実家に戻って住む選択肢はありませんし、田畑や山林を利用する予定もないのです。

長男が不動産を継ぐのが当たり前

姉は不動産はいらないと最初から言っていました。Kさんの本音も不動産はいらないのですが、昔から家は長男が引き継ぐものという空気があり、Kさんが相続するのが当然と言う流れで、不動産はKさんが引き受けることにしました。
空家の実家も、田畑や山林にも固定資産税がかかります。年額43000円と大きな額ではないものの、そもそも持ち出しのマイナスです。それでも長男という立場上、不動産はKさんが引き受けることで話が落ち着きました。
しかし、まだ、名義は父親のまま。Kさんはすでに自分の家を購入して住んでいますので、実家に住むつもりもありません。できるだけ実家に費用をかけたくないという気持ちです。

母親に贈与して、相続放棄をすれば妻子に迷惑をかけない?

そこでKさんは知恵を絞って、ひとつの方法を考えました。それは、「Kさんが相続した実家の不動産を実母に贈与して、将来の母親の相続の時に相続放棄をする方法」です。そうすれば、妻子に迷惑かけずに、いらない実家の不動産を棄てられると考えたのです。
母親はKさんの家とは比較的近いところに住んでいて、実父と離婚したとはいうものの行き来をしており、事情を話して費用を負担すれば理解、協力してくれるといいます。
しかし、実務的にそうしたことができるか?というのが、相談の内容でした。また、費用(贈与税、手数料等)はどのくらいになるのか?、固定資産税は自分の方で払い続けることは、出来る?母親が亡くなった場合、相続放棄をすれば、実家の不動産は固定資産税等を含めて、全く関わらなくなるのか?も知っておきたいということでした。

贈与にも税金と費用がかかる

Kさんの実家の土地、建物の評価は460万円ですので、贈与税の基礎控除110万円を超えた分に贈与税が課税されます。税率は20%で贈与税は45万円。(計算式 460万円-110万円×0.2-25万円=45万円) さらに名義変更の費用と不動産取得税がかかります。
母親の名義になると固定資産税の請求は母親に行きますが、母親の代わりに払うことは問題はありません。
よって贈与はできるが、贈与税と名義替えの費用や不動産取得税、などで数十万円の出費が必要になると言えます。

相続放棄しても自動的に国の名義にはならない

Kさんのストーリーどおりに母親の相続時に法定相続人のこどもや母親のきょうだいまで相続放棄の手続きをすることは可能でしょう。すると相続人がいないとなり、母親の財産は国のものになるはずです。
しかし、母親名義の不動産が、自動的に国の名義になるわけではありません。
国の名義にするには、相続人代表が家庭裁判所に「財産管理人」の選任申し立てをして、弁護士などに費用を払い、財産管理をしてもらいながら国に帰属する手続きをするようになります。
しかし、売却ができない地方の不動産は、国も受け取りません。空き家などの建物が残っている場合も同様で、原則更地にしないと受け取りません。
そのため、ずっと弁護士に管理費用を払うことになりかねません。申し立て費用は100万円以上かかります。
負債だけ残った場合の相続放棄は裁判所への手続きで完了する場合と違い、不動産がある方が放棄するのは現実的ではないと言えるのです。

いらない不動産はどうする?地域の協力が必要

母親に贈与して相続放棄しても、売れない不動産や空き家の残る土地を国が引き取ってくれる可能性はほぼありません。そうなると、固定資産税の負担はし続けることになります。よってできるだけ早い時期に、処分したほうがいいというのがアドバイスです。
かつては実家として祖父母、両親、子供たちが生活していた不動産ですが、今では、空家となり、役割を終えたということでしょう。 売れるならばできるだけ早く売ってしまうことがおススメですので、地元の不動産会社に依頼するなどアクションを起こすこともおススメしました。
あるいは、地元の親族や近隣の方に売却する、贈与する、空家バンクなどで活用してもらうなどの方法も合わせて検討して、早めに処分、活用していくことが所有者の役割になることもお伝えしたところ、Kさんも地元の親戚に相談するなど動いてみますという返事でした。
いくらかにでも売れてKさんの負担が少ないことが理想ではありますが、できるだけ地域に情報を出していくことで解決の糸口を見つけていくしかないように思います。自分でかかえていても解決しないため、行動して、地域の協力を得ながら、必要としている人に不動産を渡していくことが出口です。引き続きアドバイス、お手伝いしていきたいと思うところです。

弊社では様々なプランをご用意しております。
お気軽にお問い合わせください。

 

 

コラム執筆

まずはお気軽にご相談ください

相続は100人いれば100通り。お客様にとって最も好ましいオーダーメード相続。

代表・曽根恵子とスタッフが、相続に関するご相談を約1時間の面談でしっかりお伺いします

noimage

受付時間:月〜金(祝日のぞく)10:00〜17:00