夢相続コラム
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【それぞれの相続物語】(13)田も宅地評価!更正はやぶ蛇になると脅かされた
2022/10/20
【それぞれの相続物語】(13)田も宅地評価!更正はやぶ蛇になると脅かされた
◆相続関係者
●依頼者 土屋さん(男性・40才代)
●相続人 相続人2人(長男・土屋さん、長女)
●財産の内容 自宅不動産、貸し地、農地、預貯金
◆相続状況 相続税が高くて農家は継げない
土屋さんは農家の長男ですが、大学から東京に出てきており、そのまま都内で就職、もう東京の生活の方が長くなっていました。実家は群馬県の郡部にあります。母親は既に亡くなり、妹も嫁いでいるので、父親は、晩年一人暮らしをしていました。相続人は土屋さんと妹の二人です。財産は自宅と数カ所の農地と預金程度。市街化調整区域の土地ばかりなので、相続税はかからないと思っていました。父親の弟が地元の税理士を紹介してくれたので、実家に近い方がいいと思い、頼んだのです。
ところが相続税はかからないものと思っていたのに、税理士の計算では土地の評価だけで1億2500万円になるとのこと。財産の総額は2億2000万円、相続税は3050万円と予想しなかった額となったのです。住んでもなく、農家を継ぐわけでもないのに、実家の農地を相続するのにそんなお金がかかるとは信じられないというのが本音でした。実家を離れて都心でサラリーマン生活をしている人は、親の相続でそんなに大金を払わなくてはならないのか、それなら農地や実家の土地は相続しなくてもいいという思いでした。
◆課題 農地の評価が高い
農地評価のもとになる固定資産税評価ですが、高くなったことにはいきさつがあったようです。父親は生前、農地の一部を貸すことになり、農地転用届けを出していました。パチンコ店が借りたいとのことで隣接する2人の土地所有者も一緒に土地を貸す契約書をしたのです。農地は雑種地として転用許可が下り、パチンコ店のための準備は整いました。ところが、当の借り主は資金繰りが悪化し、計画は頓挫したのです。すでに書類上は農地から雑種地に転用して手続きは完了しています。借り主も時期がよくなれば状況も変わり、実現させたいので、契約はそのまま継続させたいとのこと。地代は半年分もらい、あとの支払いはないままですが、固定資産評価は農地ではなく、事業用地とされたまま数年が経過し、今回の相続となったのです。
農地を相続したのは土屋さんでした。長男が跡継ぎという発想では、農地を相続するのは土屋さんとなるかも知れませんが、都内に住居があり、仕事をしているので、現実には農地を耕作することは無理です。けれども妹は実家と同じ市内に住んでいるので、農業を継続することは可能な立場にあります。現実的には妹が農業後継者となることが自然だったと思えますが、そうしたアドバイスはなかったようです。また、変更するにも、不動産の登記は8月に早々と済ませていました。農地を相続した場合に納税猶予を受ける特例を利用することができますが、相続したのが地元に住んでいない土屋さんであったため、税理士には納税猶予の発想もなかったようです。
更正請求の準備中に実家の法要があり、たまたま税理士と会ったことから、断りのつもりで更正請求をするつもりだと土屋さんが話したところ、税務署は簡単には認めないばかりか、もとの申告が覆されたりしてやぶ蛇になるのでやめた方がいいと脅かされたのです。相続人の利益よりも税理士の立場を優先、保身したいという態度であきれたと話しておられました。
◆解決へのアドバイス 申告が終わってすぐに更正請求
本を読んで相談の電話を頂いたのがきっかけですが、そのとき既に申告まで1ヶ月あまりという時期で、手を打つにも間に合いません。そこで、とりあえずそのまま申告をし、終わったら来てもらうように約束しました。土屋さんが相談に来られたのは、申告が済んでから1週間後でした。
税理士は土屋さんの訴えがあっても為すすべがなく、相続税は結局3050万円のまま申告をされていましたので、仕方なく職場から借りて納税を済ませたということでした。農地は無くなってもよかったのですが、物納することもできずにあきらめたのでした。
農地の評価を再検討したところ、やはり高すぎると判断できました。そこで、現在も農地であることを前提として評価をし直し、相続税を下げるために更正請求をしました。
減額のポイントは雑種地となっている農地です。書類上は雑種地であっても現況は調整区域の農地(田)で、相続時点も耕作をしていましたし、家も建てられるところではありません。こうした現況とリスクを計算し減額することにしました。結果は申告どおりに認められ、2200万円の減額、還付が実現したのでした。
◆まとめ
土屋さんは、この農地の評価が高いために相続税も高くなっていることがずっと気になっていました。税理士にも何度も打診しましたが、減額する知恵はなく、結果、農家にすれば相当高い相続税となってしまいました。土屋さんは会社から融資を受けて納税したとのこと。
しかし、土屋さんは「どうも納得できない」という気持ちで行動されたことで節税の道が開けたのです。しかも早めに決断されたことも幸いでした。私どもでも土屋さんと同様に、「評価が高いのはおかしい」「何か方法はないか」という気持ちで取り組むことで節税のアイデァや方法が見えてきます。
あきらめずに納得できるまで自分の力になってくれる確かな専門家を探して行動することで出会いがあり、節税が実現します。
◆相続実務士からのアドバイス
特別に事情のある土地は、理由付けをすれば減額の可能性があります。納得できない場合は、あきらめずに専門家に相談することが大切です。また、申告期限以前は分割協議を変更することもあり、慌てて登記はしないほうがよい場合があります。そうした判断も相続の専門家に依頼した方がいいでしょう。
弊社では様々なプランをご用意しております。
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