夢相続コラム
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【それぞれの相続物語】(11)頼んだ税理士が相続に不慣れで失敗した?
2022/10/18
【それぞれの相続物語】(11)頼んだ税理士が相続に不慣れで失敗した?
◆相続関係者
●依頼者 上野さん(男性・50才代)
●被相続人 父(農業・不動産賃貸業・70代)
●相続人 7人(配偶者70代、長男50代、二女50代、三女50代、亡長女の子・代襲相続人3人 )
●財産の構成 自宅、賃貸アパート、駐車場、現預金、市街化農地、調整農地
◆相続状況 農家で土地が財産
上野家は農家で、父親の代からぶどうやなしを作って、地方へ出荷しています。農地は市街化の中にもあり、2カ所のぶどう畑は生産緑地に指定されています。必然と上野家の資産はほとんどが土地であり、評価は約20億円で、600坪や800坪といった大きな土地ばかりでした。生前対策としてアパートを3棟建てており、負債もありましたが、課税財産は18億円となりました。
上野さんは毎年の確定申告を依頼している税理士事務所に、相続の申告を任せることにしましたが、結果、農地の納税猶予を受けても約7億円の納税が必要となり、2カ所の畑、約1500坪を売却するしか方法はありませんでした。こちらにはこのときに相談に来られました。
◆課題 専門家の選択を間違えた
相続人の関係は円満で、長男である上野さんが農家を継承し、財産の大部分を相続することは合意ができていました。同居する母親の面倒を看てもらうためで、妹たちは70坪程度の土地を分け、代襲相続人には現金を払うことになっていました。二次相続が大変と周りから聞いているので、一度で済むならと楽だと担当の人に話はしていましたが、半分は母親へ分けるつもりでした。
ところができあがった遺産分割協議書は、母親へは現金だけで残りの大部分は上野さんの取得財産となっており、子供が払う相続税は6億8千万円。配偶者の税額軽減を受けられたのは430万円でした。配偶者の特例を使えば納税は半分で済むのに、3億5000万円を多く払うことになってしまったのです。もう期限が迫っており、そのままの申告を余儀なくされました。
財産の大部分が農業用の広い土地ですから、減額の可能性を見つけることはできるはずですが、担当した税理士は相続の実務や土地の評価に慣れておらず、節税はできていませんでした。そればかりか、農家の相続は初めてだったようで、別の税理士事務所に確認をしてもらわなければならなかったようです。そのため、節税の提案がないばかりか実務的な間違いもありました。
◆解決へのアドバイス 更正の請求が間に合った
上野さんがこちらに相談に来られたのが、申告後3ヶ月。まだ更正の請求ができる時期でしたので、土地の評価をし直すことが可能でした。既に土地の測量は終わっていましたので、面積の大きい土地を中心に鑑定評価し、当初の評価より1億円以上下げることができ、6000万円程の相続税の還付が実現したのでした。
また、農地の納税猶予のための担保が自宅についていましたので、猶予を受けた農地に切り替えるようにしました。
◆まとめ
上野さんの相続で一番悔やまれるのは、配偶者税額軽減の特例をほとんど受けていないことです。配偶者税額軽減の特例と納税猶予の特例をダブルで利用すれば納税の負担はかなり少なくでき、売却した土地の半分は残せたはずです。しかし、そのためには上野さんが相続した土地を母親が相続するべきでしたが、一度申告をしたあとでは遺産分割は変えることができず、もう方法がありませんでした。
せめて土地評価で相続税が減らせたことは幸いでした。
◆相続実務士からのアドバイス
一次相続で配偶者が相続した財産には、当然、二次相続で相続税が課税されますが、時間的猶予があるので、あらたな節税対策をする余地は見いだせます。
営農するのであれば、農地の納税猶予の特例は活用することで納税の負担は減らせます。
また、相続税の申告が終わったあとでも減額の要素があれば申告をし直すことによって相続税を減らし還付を受けることができます。
弊社では様々なプランをご用意しております。
お気軽にお問い合わせください。
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